アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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AVENGERS(1998)#12

キャロルの脱退、ワンダーマンの復活と大きな山場を超えたアベンジャーズ。そして今回では、ヒーローズ・リターンを経たチームがぶつからなければならない壁と遂に対峙します。サンダーボルツです。オンスロートとの戦いでアベンジャーズが全滅したかと思われた間、代わりに活動していたのがサンダーボルツでした。なんとそのメンバーは何度もアベンジャーズと戦っていたヴィラン。改心したスーパーヴィランが贖罪の意味を込めてヒーロー活動をしていたのですが、リーダーのバロン・ジモはその状況すら利用して悪事を企んでいたのです。事実上解散していたと思われていたサンダーボルツが、何故今アベンジャーズと戦わなければならないのか? まさに帰ってきたアベンジャーズがぶつからなければならない壁と言えるでしょう。
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〈あらすじ〉

ホークアイが攫われた? 行方知らずだったホークアイが、元ヴィランと共に写っている画像が世界中に公開された。行方を捜索していたアベンジャーズはすぐさま目撃情報を元に急行する。しかしそれが、世界滅亡の危機に繋がる事件になろうとは考えもしなかった……

 

〈新たなるアベンジャーズ?〉

世界中を駆け巡る1枚の写真。解散したはずのサンダーボルツと共に映るホークアイの姿に世界中が震撼したことでしょう。サンダーボルツはかつてバロン・ジモの陰謀に呑まれたヴィランチーム。アベンジャー誘拐という最悪の事態を想像してしまうのも無理はありません。それはキャップも同様でした。数日間姿を消していたホークアイヴィランと共に行動しているのは、何かの陰謀に巻き込まれたに違いない。すぐさまアベンジャーズを招集したキャップは、目撃情報を元にサンダーボルツの居場所を特定、急行します。サンダーボルツはかつて世界を破壊しようとした巨大メカ、ドミネックスの残骸付近にいました。ドミネックスを用いて何かよからぬ事を企んでいるのでは? 不意をつくようにアベンジャーズはサンダーボルツを強襲します。
f:id:ELEKINGPIT:20220823004532j:imageキャップの指揮でサンダーボルツへ襲いかかるアベンジャーズ。世界の破滅を企もうなら、仲間の命の危機ならば、問答無用で止めるまで。

 

驚くべきはサンダーボルツのチーム力です。アベンジャーズの急襲にすぐさまメンバーを招集すると、連携プレーで互角以上の戦いを繰り広げます。短期間に再編を繰り返していたとはいえ、アベンジャーズ以上の団結力と統率力があるのはキャップすら認めるところ。訓練された淀みない動きは、歴戦の勇士が編み出したであろう隙のない戦略に違いありません。かなり優秀なリーダーがいなければ出来ない芸当でしょう。一方ワンダはサンダーボルツの脳波を解析、もし洗脳されているならば何時でも解けるよう準備します。ところがその脳波からは洗脳どころか悪意すら感知できません。ヴィランどころかまるでヒーローのよう……そう考えた途端、ワンダの顔先を矢が掠めます。ホークアイです。ホークアイアベンジャーズを攻撃した? サンダーボルツへの疑惑は増えるばかり。もし洗脳を施したなら許されがたい所業です。ところがホークアイの脳波もサンダーボルツ同様、洗脳も悪意も感知できません。話を聞いてみると、なんと現在のサンダーボルツは本当に改心したスーパーヴィランで結成されたヒーローチームだというのです。そして自らもかつてヴィランからヒーローになった経験を生かし、ホークアイが指揮を執っていました。アベンジャーズとサンダーボルツが戦う理由はないのです。
f:id:ELEKINGPIT:20220824003324j:imageリーダー同士の話し合いの末にとけた誤解。無用な争いは最悪の1歩手前で止められた。

 

次の瞬間、激しい地鳴りが響いたかと思えば足元の地面が動き始めたではありませんか。なんと先程の戦闘で眠っていたはずの破壊ロボ、ドミネックスが復活したのです。覚醒と同時に放たれた催眠波はアベンジャーズとサンダーボルツを一時戦闘不能にさせ、ドミネックスは止める者がいないまま世界滅亡のために機動します。先に催眠波から目覚めたのはサンダーボルツでした。咄嗟に張ったバリアのおかげで催眠波の影響を最小限に抑えたのです。海をズンズンと進むドミネックスの進路を予想したサンダーボルツは、想定される中で最も恐ろしい事態を弾き出します。海底に沈む断層を攻撃し、地球全体へ超大規模の地震を引き起こそうとしているのです。断層到達前にドミネックスを阻止せねばなりません。しかしサンダーボルツの総攻撃でも装甲1つ破れません。それどころかドミネックスの罠にハマり、内部に閉じ込められたではありませんか。内部はドミネックスの自己補完プログラムで、攻撃してもすぐに再生されてしまいます。最早打つ手なしの絶望的な状況です。そんな時に現れたのが、催眠波から目覚めたアベンジャーズです。アベンジャーズは本部で待機中のピム博士と怪我で療養中のトニーに分析を依頼。その間できる限り攻撃をあびせ、少しでも断層到達までの時間を稼ぎます。
f:id:ELEKINGPIT:20220824010102j:image病室からドミネックスを解析するトニー。発見した弱点の鍵を握るのはサンダーボルツだが……?

 

〈世界を守るために〉

アベンジャーズが復活して以来メタ的にもお役御免となっていたサンダーボルツ。しかしシリーズ自体は続いており、ライターはアベンジャーズシリーズ同様カート・ビュシーク氏が手がけていました。ホークアイがリーダーをとなりアベンジャーズとクロスオーバーした本作。同じライターが手がけるシリーズとはいえ、繋がりを感じさせる2作が遂に交わった形となります。サンダーボルツ結成理由からいつかは交差したであろう2つのシリーズですが、何故アベンジャーズのシリーズでこれを行う必要があったのでしょうか? サンダーボルツのシリーズでも事足りたのでは? と考える自分もいました。今回はそんな疑問を考えたいと思います。

今作最大の特徴として、アベンジャーズもサンダーボルツもまるで同列のチームであるかのように描かれていたことです。当然ヒーローチームにそれぞれ序列やランクがあるわけではありません。しかしヒーローチームの金字塔であるアベンジャーズと同列とは、元ヴィランで構成されるチームには異様のようにも感じられます。アベンジャーズファンでありながらチームに加わったジャスティスや、元アベンジャーズでドミネックス撃破に協力したファイヤーバードの口からアベンジャーズの偉大さが語られており、その異様さが強調されていました。私は、アベンジャーズとの共闘でサンダーボルツが新時代のアベンジャーズであるという狼煙上げをしたのではないかと考えています。キャップにアベンジャーズ以上の連携が取れていると認めさせるチーム力、かつてのウエスト・コーストアベンジャーズのように指揮を執るホークアイ。その名は冠せずとも第2のアベンジャーズのような立ち位置になれる素質はあるのです。また、今作のラストでホークアイは「いつかアベンジャーズをも超える」という意気込みまで残しています。新たなる第2のアベンジャーズとして名乗りあげる、狼煙上げのような役割が今作だったのかもしれません。