アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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MS.MARVEL(2006) vol1 BEST OF THE BEST

今やキャプテン・マーベルとして勇ましく戦うキャロル。マーベルヒーローの代表格の1人になりつつあり、より高く、より遠く、より速く飛躍し続けているヒーローでしょう。今シリーズはそんなキャロルがキャプテン・マーベルになる直前、Ms.マーベルと名乗っていた最後のオンゴーイング(連載)シリーズとなります。それまではアルコール依存症などやや不安定な感も否めなかったキャロル。シビルウォーやダークレインなどユニバースさえ揺るがした大事件に揉まれながら、大きく躍進します。
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〈あらすじ〉

ハウスオブMで見た自身の理想の姿。栄光のキャプテン・マーベルを名乗り、人々から尊敬の喝采を集める理想を見たキャロルは、夢の実現に向け動き出す。ベストを尽くすだけじゃ足りない。自分ならもっとできるはず。

 

〈上を目指して〉

暴走したスカーレット・ウィッチが見せた「もう1つの世界」は、キャロルに計り知れないほど大きな影響を与えました。そこではキャロルはキャプテン・マーベルの称号を受け継ぎ、偉大なヒーローとして活躍し続けていたのです。これまでのキャロルはバイナリーやウォーバードなど何度もヒーロー名を変え続けて来ました。またアルコール依存症などの不安定な面もあり、キャロル自身今の自分は「理想のヒーロー」から程遠い存在だと感じていました。これまでベストを尽くしてきたつもりだけど、「理想」を目指すならこのままではいられない。もっとできることがあるはず。キャロルはヒーロー活動に専念するため仕事を辞め、広報担当を雇います。広報担当のサラ・デイはそれまでキャプテン・アメリカファンタスティック・フォーX-Menの広報を経験した第一人者です。どのように宣伝し注目を集めるかはキャロル次第。準備や手続きを進めるうちに、早速事件の知らせが舞い込んできました。空を舞う流星の中に宇宙人の軍団が潜んでいるというのです。自身のミスから流星を1人で追跡することになったキャロル。流星へ追いつく頃には街へ激突していました。街のど真ん中に空いた大きなクレーター。這い出るように現れたのは、ブルードです。ブルードは巨大な昆虫のような姿をしており、非常に攻撃的かつ獰猛な宇宙人として知られています。這い出たブルードは当然のように人間を襲い始め、街から聞こえる声は阿鼻叫喚ばかり。ヒーローの出番です。
f:id:ELEKINGPIT:20230726183133j:image街を襲うブルードの大軍。危険な相手にキャロルは1人で立ち向かわねばならなかった。

 

多勢に無勢の状況では流石のキャロルも苦戦を強いられました。中でも青色の体色で体格の大きな固体は無類の強さを誇ります。他の個体を吹き飛ばしたかと思うとキャロルに一騎打ちを挑んだのです。圧倒的な強さに的確な攻撃。それまでのダメージもありキャロルはノックアウトされてしまいます。このまま負けっぱなしでいいわけがありません。既に青いブルードはどこかへ行ったようで、キャロルは他の個体へ尋問を始めます。ブルードの目的はアメリカ陸軍の保管するカーボライトクリスタルを求めて地球へやってきたようです。カーボライトクリスタルは非常に強力なエネルギーを発し、兵器に転用すれば凄まじい威力となることが明らかになっています。そして青いブルードの名はクルー。クルーを倒さねばカーボライトクリスタルはブルードの手に渡ってしまうでしょう。キャロルはカーボライトクリスタルのあるアメリカ軍基地へ急行します。しかしあと一歩遅かったようです。クルーは既にカーボライトクリスタルを手に入れた後でした。クリスタルの発する莫大なエネルギーが反応、大爆発が起きてしまいます。それでもキャロルの執念は折れません。ボロボロのはずの体を引きずり、宇宙までクルーを追います。カーボライトクリスタルを予め用意した兵器にセットしたクルーは、その一撃をキャロルへ叩き込みました。キャロルのエネルギー吸収能力でさえオーバーロードする威力。それでもキャロルは渾身のフォトンブラストで応戦します。命懸けの戦いは、キャロルの辛勝で幕を閉じました。吸収したエネルギー全てをフォトンブラストに込めたのでしょう。戦闘を終えたキャロルは眠るように意識を失ってしまいました。
f:id:ELEKINGPIT:20230726190840j:image地球外で繰り広げられる死闘。文字通り全身全霊の力全てを使い、難敵を退けた。

死闘を乗り越えたキャロルですが、世間の反応は冷たいものでした。戦闘の影響で街に大きな被害が出てしまい、批判の声が殺到したのです。自宅まで問い詰める記者団。しかしその瞬間、キャロルの第7感が危険を予知します。直後、ヴィランが襲撃してきたではありませんか。敵はトラベラーを名乗る魔術師です。トラベラーは伝説の魔術師ワトゥームの左目を自身の目に移植しており、ドクターストレンジさえ驚くような魔力を発していました。しかしそれ以上に問題なのが、トラベラーはハウスオブMの世界の人物であるということです。確かにあの世界ではキャロルの宿敵として何度も戦ってきました。しかしトラベラーはあくまでその世界の住人だったはず。またトラベラーは戦いに来たのではなく、キャロルへ助けを求めてきたというではありませんか。ひとまずドクターストレンジの自宅へ連れていくと、驚くべき事実が発覚します。なんとトラベラーはハウスオブMの影響でこの世界に迷い込んでいるというではありませんか。ひとまずドクターストレンジの元で拘束、解決方法を探すことになりました。その日の夜。キャロルはドクターストレンジの精神が憑依した猫に知らされ、ストレンジ本人の元へ向かっていました。なんとトラベラーが拘束を解きストレンジを倒してしまったのです。ワトゥームの左目に加え杖も手に入れたトラベラー。強大な力を手に入れたトラベラーに、キャロルはドクターストレンジと共に戦うことになりました。
f:id:ELEKINGPIT:20230727065947j:image身の丈に合わないほどの力を手に入れたトラベラー。最高の魔術師とキャロルがそれを阻む。

 

〈目指すべきゴール〉

ベストを尽くしたその先をゴールに見据えたキャロル。「キャプテン・マーベル」を名乗る理想の姿を目指し、自身に厳しい道を課して本シリーズはスタートしました。迷走気味だったキャロルにとって、一見良い傾向のように思えるでしょう。しかし私はキャロル自身が危険な罠に陥っているように見えて仕方がありません。当時結束されたニューアベンジャーズに加えられず、まるで偉大なヒーローにコンプレックスさえ抱いてイルカのようなキャロル。自身が設定したゴールは、そんな自分を否定することで達成されるものではないでしょうか。キャロルは「理想のヒーロー、キャプテン・マーベル」になろうとしているのです。そ礎は「今の自分ではいけない」「今の自分を変えなければならない」という自己否定を起点としており、また「今の自分では無い姿」が最終地点となってしまっています。果たしてそれが本当に理想といえるのでしょうか? 実は本作では既にキャロルの目指すべきゴールが示されていました。親友のジェシカ・ドリューはキャロルの相談を受け、こう答えていたのです。もうあなたは既に最高なんだから、それを証明するといい。キャロルとは起点の違うアドバイスでしょう。まずは自己を肯定すること。上を目指すのはそのあとで良いのです。「キャプテン・マーベル」という称号は理想の姿ではありません。自身を肯定し、ベストを尽くせばあとからついてくるものなのです。