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MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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IRON MAN(1998)#11〜#13【2023年1月の私的ベストアメコミ】

連戦に次ぐ連戦で、どうにかマンダリンに辛勝したアイアンマン。カート・ビュシーク氏の筆致もあり迫力溢れるシリーズとなりました。一方その時に負った怪我はトニー自身が想像する以上に深刻なものとなってしまいます。同氏が描くアベンジャーズシリーズで一時休養していたトニー。その間一体何があったのでしょうか? また道中でアベンジャーズ脱退を受け入れるキャロルの姿もあり、アベンジャーズシリーズとあわせて読みたい一冊となっています。
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〈あらすじ〉

マンダリンとの激戦を経てひとまずの平穏を手に入れたトニー。しかしその体は既に立ち上がれないほど満身創痍になってしまった。それでも世界の危機は待ってくれない。ボロボロになりながらも鎧を纏うヒーローへ、驚愕の事実が告げられた。

 

〈No More Iron man〉

車椅子が手放せないほどの大怪我を負ったトニーは、ジェーン・フォスターの協力で静養のために西海岸へ向かっていました。ところが当時はスタークソリューションズ社が立ち上がったばかりだし、何よりトニーはじっとしていられる性分ではありません。できる限り仕事を減らす、という条件で仕事を続けることにします。ローディから緊急連絡を受けたのはそんな時でした。何やらかなり焦っている様子。話を聞いてみると、なんと空港でウォーマシンが暴れていると言うではありませんか。ウォーマシンはトニーがローディのために送った第2のアイアンマン。それが何者かの手で操られているのですから、今すぐに対処しなければなりません。満身創痍のトニーが戦うのは、当然ジェーンによりドクターストップがかかっています。しかし何人たりとも使命感と正義感に燃えるヒーローを止めることは出来ません。ペッパーの警告を無視してトニーはアーマーを纏いました。
f:id:ELEKINGPIT:20230117123758j:imageジェーンが指摘するトニーの負傷箇所。戦うべきでないのは誰の目にも明らかだった。

 

アイアンマンが空港に到着した頃には、辺りは爆煙に塗れていました。その中心にいたのがウォーマシンです。謎の人物が纏うウォーマシンは、既に重傷を負ったアイアンマンよりも実力は上。一撃一撃に悶え、必死にしがみつくアイアンマンへ情け容赦ない攻撃が浴びせられます。このままアイアンマンは負けてしまうのか? その時です。空から閃光のようにかけてくる新たなヒーローの姿がありました。ウォーバード、キャロル・ダンバースです。アルコール中毒による暴走を問題視され、アベンジャーズを脱退させられたキャロルは、トニーと同じく静養のため西海岸で暮らしていました。そしてヒーロー名もウォーバードと変え心機一転、活動を再開していたのです。しかしキャロルはアベンジャーズ除名を提案したトニーへの嫌悪を剥き出しにしていました。これではチームワークどころではありません。力尽き倒れ伏すアイアンマンを脇目に、ウォーバードは敵へ突進します。敵の実力はウォーバードの予想を更に上回りまっていました。自慢のフォトンブラストは堅牢な装甲に防がれ、エネルギー吸収の能力も実弾兵器が主なウォーマシンへは活かす機会すらありません。一方ウォーマシンも、2対1は不利と感じたのか撤退しようと試みます。敵の正体は分からなかったものの、この場は凌げたと安堵するウォーバード。しかしアイアンマンは違いました。瀕死の体を引きずりなけなしの力を振り絞り、猟犬のようにギラついた目で敵を捉えて離しません。その執念にウォーマシンは恐怖し、ウォーバードすら畏怖の念を抱くほど。先程まで嫌悪を顕にしてきたキャロルは、気を失ったトニーを助けることにしました。
f:id:ELEKINGPIT:20230118124544j:image土砂降りの中トニーの別荘へ運ばれたアイアンマン。力無く倒れた英雄へ、キャロルは最大限の敬意を示す。

 

再びベッドへ担ぎ込まれたトニーへ、ジェーンが姿を現します。そもそもトニーをこれほど苦しめる怪我の原因は、歴戦の怪我の蓄積だけなのでしょうか? 傷の治りが遅いことを訝しんだジェーンは、ピム博士へ調査を依頼していました。その結果を伝えに来たのです。トニーもうっすらと予想していたでした。ピム博士曰く、トニーがこれ以上アイアンマンを続ければ死に至るのは確実。今すぐにでも引退すべきというのです。原因はアーマーにありました。超高性能のアーマーですが、実は使えば使うほど内部の温度が上昇するという弱点を抱えています。つまり、装着者はアーマーを纏う間低音で焼かれ続けているも同然なのです。トニー自身も自覚していた弱点ですが、多忙を理由に後回しにしていました。そのツケが今になって襲ってきたのでしょう。周囲の説得の末、トニーはようやく仕事も休むことにします。しかし世界からアイアンマンが失われればどれほどの損失と犠牲が生まれることでしょう。トニーはアーマーを遠隔操作できるように改造、静養とテストを兼ねて人の少ないリゾート地へ出かけました。なんとそこには藤川ルミ子の姿が。ルミ子はトニー来訪の報せを受けて東京から急いでやってきたのです。高名な医者とパートナーの存在は心細かったトニーを落ち着けたのか、みるみるうちに傷が回復していきます。
f:id:ELEKINGPIT:20230118202239j:imageトニーの元へ駆け寄る藤川ルミ子。天真爛漫なその姿にトニーは安心感を覚えていた。

 

怪我の回復と共にアーマーの遠隔操作もより高い精度にするため、試行回数は日に日に増えていきました。しかしそれはヴィランの神経を逆撫でする行為に他なりません。トニーのストレスチェックを行っていたバーゼル博士は、日夜頭上を飛び回るアイアンマンの姿に苛立ちを覚えていました。コントローラーと呼ばれ恐れられたその人物は、自身をメンタル治療の専門家と偽りトニーを診察。洗脳光線を浴びせ利用しようと考えていたのです。しかし空を駆けるアイアンマンを恐れ、計画を実行出来ずにいました。ここでコントローラーは、既に洗脳を終えたトニーへ「アイアンマンを解雇せよ」と命令を送ることに。なるほどトニーのボディーガードであるアイアンマンをクビにしてしまえば、もう二度と姿を現すことも無いでしょう。ところが何度命令してもアイアンマンが現れるではありませんか。自分の洗脳では破れないほど硬い関係が両者にはあるのか? ならば周りからそう促せばいい。コントローラーの魔の手は、トニーのパートナーである藤川ルミ子へと及びます。夜中。ふと目が覚めたトニーは、何故かドアの鍵が空いていることに気付きます。静まり返った暗闇の中、言葉にできないほど小さな違和感を頼りに部屋を出ました。するとある部屋から小さな光が漏れていることに気付きます。皆が寝静まるはずの時間に何が? 不審に思ったトニーがドアの隙間からそっと覗くと、そこには恋人のルミ子が囚われているではありませんか。ルミ子は何故かアイアンマンを退職させて欲しくてたまらなくなった自分へ違和感を抱き、トニーに仕掛けられた洗脳装置に気付いたのです。これに激怒したコントローラーが、ルミ子の命で償わせようとしていた真っ最中、ギリギリのタイミングでトニーが現れたのでした。コントローラーはかつてアイアンマンや初代キャプテン・マーベルを苦しめた凶悪なヴィラン。テスト中の遠隔操作アーマーで倒せるほど生易しい相手ではありません。着用すれば再び体を傷付けることになるでしょう。それでもトニーは迷いなくアーマーを手に取りました。これが最後の戦いであろうと、決意と覚悟を胸に鋼鉄の信念がトニーを動かしていたのでした。
f:id:ELEKINGPIT:20230119164623j:image大切な人を守るため、再びアイアンマンへなろうとするトニー。その身が犠牲になろうとも決して屈することは無い。

 

〈鋼鉄の信念〉

本作で幾度となく描かれたトニーの信念。例えその身が滅びようとも絶対に曲げない意思で立ち上がり続けていました。その泥臭い戦い方は良くも悪くも王道ストーリーのど真ん中を真っ向から描いたと言えるでしょう。自己犠牲のヒーローを尊ぶ文化が色濃く残る時代の物語とも捉えることが出来ますが、そうまでしてトニーが守りたかった信念とはなんでしょうか?

頑強な信念の持ち主といえばキャプテン・アメリカを真っ先に思い浮かべる方が多いでしょう。アメリカンドリームという理想と自由を実現するため戦う姿は、多くのヒーローが手本とする程です。しかし絶対に屈しない信念の硬さならトニーも劣ってはいません。インセン教授の贖罪から始まった戦いはやがて正義のための戦いへと変わり、現在に至ります。本作ではアイアンマンになるなと厳重に注意されたほどの重傷を負いながら戦おうとする姿が描かれました。そこには弱々しい体と圧倒的に強い眼光が。トニーは他のスーパーパワーを持ったヒーローよりも弱者を知っているのです。もし腕っぷしに自信があったとしてもヴィランに勝てる人はかなり少ないでしょう。通常なら返り討ちになってもおかしくはないはず。実際生身のトニーは前回、ヴィランの傭兵に手も足も出ず倒さています。それをアーマーの力を借り最前線でも戦える戦闘力を身につけました。トニーは一般人がヴィランと対峙する恐怖をどのヒーローよりも知っていると言えるでしょう。ならば自ずとトニーの信念が何か明らかになったはずです。何度倒れてもトニーが立ち上がる理由は、非力な人々の盾となり守り続けるため。鎧がなければ最弱と言っていいほどのトニーだからこそ立ち上がり続けたのです。