アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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ULTIMATES 2 vol2 GRAND THEFT AMERICA

スクラルの侵略を退けてなお、仲間同士での争いに終始するアルティメッツ。前回はソーを捕らえ、ハルクを死刑に処すなど波乱の展開が続きました。さらにアルティメッツに裏切り者の存在が示唆され、更なる混沌さえ予想されます。正史世界と比べ未熟な一面が顕著に現れてしまいましたが、果たしてアルティメッツは真にヒーローチームへと成長出来るのでしょうか?
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〈あらすじ〉

近頃SHIELD内外で不穏な動きがあった。やがてそれは、第三次世界大戦まで繋がる壮大な作戦の一部だと判明する。止まらない悲劇の連鎖。アメリカ崩壊の危機にアルティメッツは立ち向かうことが出来るのか?

 

〈神のいたずら〉

ある夜。クリント一家はいつも通り平和な時を過ごしていました。クリントは結婚し子どもも授かっており、幸せな家庭を築いていました。しかし築き上げた幸福は脆くも崩れ去ります。突如現れた集団により、クリント以外の家族全員が皆殺しにされたのです。クリント自身も重傷を負い、何者かに拉致されてしまいます。SHIELDのフューリー長官はこの事件をアルティメッツには隠蔽することにしました。無用なパニックを防ぐためです。そんなフューリー長官は監視カメラから驚くべき襲撃犯の正体を暴きます。キャプテン・アメリカです。すぐさまキャップ逮捕へ向かうSHIELD。大量の麻酔銃を用いてようやく捕縛に成功。しかしキャップをヘリキャリアの独房へ投獄した途端、事態は大きく動き始めます。なんとSHIELDのヘリキャリア同士が衝突、大量に墜落したではありませんか。更に謎の超人軍団やコスチュームチームまで登場、アルティメッツが揃うまもなくアメリカ全体が征服されつつありました。爆煙と悲鳴の中、謎のコスチュームチームだけが勝どきを上げます。リベレイターズ。それがチームの名前です。
f:id:ELEKINGPIT:20230525023852j:image勝どきを上げるリベレイターズ。その姿はまるでアルティメッツのよう。

 

リベレイターズの進撃は想定以上の戦果を上げていました。主要都市の同時攻撃と相まってSHIELDは防戦一方ですし、あのアルティメッツも主戦力を欠いた現在ではリベレイターズの脅威ではありません。このままの調子で侵略が進めば、1ヶ月以内にアメリカを征服できるという試算が出るほど。これらを指揮していたのは、SHIELDに潜伏していた奸智の神ロキでした。ロキは中国、ロシアなどの国々から戦力を集めアメリカを侵略、そして征服を企んでいました。第三次世界大戦開戦という人類への最大の「イタズラ」を行うための足がかりなのです。ハルク、ソーが不在の隙を作り、キャップへホークアイ一家惨殺事件の罪を被せ、最高のタイミングで侵略してみせたのでした。同刻、トニー・スタークは心が靄がかったまま戦場へと向かっていました。トニーと婚約までしていたナターシャ。しかし侵略が始まった途端、態度を豹変させます。トニーへ拳銃を突きつけたのです。アルティメッツには裏切り者がいる。まことしやかに囁かれていたその正体は、ブラック・ウィドウだったのです。トニーは隙を作りナターシャを酒瓶で殴打、無力化に成功します。しかしナターシャの裏切りは心に大きな傷を与えたのでした。また同じ頃、ヘリキャリアに拘束されていたキャップをワスプが解放します。リベレイターズの1人を圧倒したキャップはすぐさま戦場へ向かいます。キャップとトニー、アルティメッツの2大ヒーローがこの戦いへ立ち向かったのです。
f:id:ELEKINGPIT:20230525025902j:image解放されたキャップ。硬い握り拳が反撃ののろしをあげる。

ホワイトハウスへと向かったキャップを待っていたのは、残るアルティメッツのメンバーでした。既に戦った痕跡もあり、キャップの合流もあり反撃には絶好の機会です。そこへ襲いかかる超人軍団とリベレイターズ。キャップはリベレイターズのリーダー、アブドゥルと直接対決を挑みます。アブドゥルばキャップの血液から作成された現代の超人血清の適合者です。身体能力は互角以上。一進一退の攻防が続きます。一方市街地を襲撃する超人軍団に対抗するため、アイアンマンは切り札であるアイアンマン6を起動します。衛星から現れたそれは、空をも覆い隠すほど巨大な兵器でした。装着よりもむしろ操縦と言った方が近いでしょう。風を切り裂くように放たれたレーザーの数々が的確にターゲットへヒット、戦場と化した市街地はたちまち沈静化していきます。捕らわれていたX-Menファンタスティック・フォースパイダーマンも続々と参戦、形成は完全にこちら側へと逆転しました。一方リベレイターズもメンバーを失いながらもアブドゥルを中心に勢いは衰えません。そんなアブドゥルも、ついにキャップに敗北、この侵略戦争の勝負は完全に決まったように思われました。
f:id:ELEKINGPIT:20230525031237j:image全てのヒーローが入り乱れる戦場。敵にどれほど超人がいようとも、我らがヒーローが負けるはずがない。

 

スパイダーマンが、ファンタスティック・フォーが、X-Menが、アルティメッツが、空を舞い風を裂き次々と敵を倒していきます。こうなっては面白くないのがロキです。人類への最大のイタズラを仕掛けたというのに完全に阻止されてしまったのですから。奸智のイタズラに応えないというのならば、ロキは自ら姿を現します。神の力はアルティメッツでさえ驚くほど突飛なものでした。異次元から大蛇を呼び、ゴブリンを呼び、まるでファンタジーのような軍勢がアメリカへ大挙したのです。戦列に参加していたホークアイはフッと笑みをこぼします。精神異常者として投獄されたソーの言っていたことは何もかも本当だったじゃないか。規格外の能力に足を竦める者もいたでしょう。しかし誰一人として後退しようとした者はいません。勇気と不屈の闘志で誰もが立ち向かおうとしていました。超人達の不退転の覚悟は神にまで届きます。突然空が曇り、嵐が巻き起こり、雷が落ちたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20230525101431j:image星条旗を燃やし実力行使に出ようとしたロキ。しかしその瞬間、稲光が空を照らす。

 

〈ヒーローの産声〉

これまで、アルティメッツは決して完璧なヒーローではないチームという姿が何度も何度も描かれてきました。力を制御できず、身内同士の争いも多く、結束できないまま超人としてのアイデンティティを買われたような印象さえ受けるほど。しかし今作では、敵も味方も数多くの超人部隊を行使していました。超人という観点だけならば、アルティメッツはアイデンティティを失ったも同然なのです。またリベレイターズの登場も、同じようにアルティメッツのアイデンティティを揺るがしました。私たちが今まで見てきたアルティメッツというチームは、アイデンティティを喪失したと言っていいでしょう。しかしだからこそアルティメッツは真のヒーローチームとして産声を上げることが出来たのです。従来のアルティメッツは、SHIELDの一機関という側面が強く、ヒーローチームよりも特殊部隊といってもいいかもしれません。それでは他の超人部隊やアルティメッツを模倣したリベレイターズと大差ありません。しかし今作で、アルティメッツはSHIELDから独立することを決意。虐げられた者に代わり「アベンジ」するチームへと舵を切ったのです。今まで多くの苦難を超えてきたアルティメッツは、ついに自立という道を選んだのです。SHIELDの一部でしかなかったアルティメッツ。独立の道を歩むことで、真にヒーローチームとして活躍することを期待したいです。