アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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ULTIMATES 3 WHO KILLED SCARLETT WITCH ?

リベレイターズとの戦いを経て、SHIELDからの自立を決意したアルティメッツ。しかしその後の道筋は決して平坦なものではありませんでした。今作は醜くも美しく、決して清廉潔白でないからこそ輝きを放つアルティメッツの、ある意味で等身大な姿を描き出したと言えるでしょう。後の大きな物語に繋がる要素もあり、見逃せない1作となっています。

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〈あらすじ〉

スカーレット・ウィッチが殺された。誰が? なんのために? その真相は予想外のものだった。怒りに震える磁界王の登場が意味するものとは?

 

〈目覚める磁界王〉

新聞もテレビも、今はトニー・スタークの話題でもちきりでした。かつてパートナーとして親交のあったナターシャとトニーのベッドシーンが何者かによって流出したのです。おかげでトニー本人は以前よりも酒の量が増え、部屋にこもりきりの始末。ところがワスプは、問題は映像の内容以上に、撮影方法だと指摘します。カメラの画角からセキュリティカメラでないことは明らかで、その上編集したと思われる要素がいくつもあるのです。これは何者かによってセキュリティが破られた証拠にほかなりません。トニーの為にも、すぐに犯人を見つける必要があるでしょう。その瞬間でした。壁を突き破りヴェノムが現れます。ヴェノムは何者かを探しているようで、何度も唸り声を上げながらアルティメッツ本部を荒らし回ります。新たにアルティメッツへ加入したヴァルキリーらの活躍でどうにか撃退に成功しますが、今度はヴェノムが液状化。ヴェノムが探していた人物も含め謎ばかりの襲撃でした。しかし事態はこれだけに留まりません。翌日、クイックシルバーとスカーレット・ウィッチが通りを歩いていた時のことです。突如鳴り響く銃声、銃弾を追いかけながら助けを求めるクイックシルバー、その手を貫きスカーレット・ウィッチの胸へ突き刺さる銃弾。一瞬の出来事でした。この一瞬でかけがえのないヒーローの命が失われたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20230701163540j:imageピエトロの手の中で冷たくなっていくワンダ。この悲劇が後の災厄へ繋がる最初の引き金となった。

 

ブラザーフッドから恩赦を求めてアルティメッツへと加入した2人。しかしワンダの亡骸を見てピエトロは1人呟きます。もしアルティメッツに参加しなければこんな悲劇は起こらなかったのでは? 単に頭をよぎった考えではないようです。ピエトロは密かにブラザーフッドを手引し、アルティメッツの本部を襲撃させていたのです。不意の襲撃に驚く暇さえないアルティメッツは、それでもチームワークを発揮してなんと迎撃します。一方ピエトロは、ワンダの痛いの前でマグニートーに出会っていました。過去虐待を受けていたため、親であるマグニートーを激しく憎んでいたピエトロ。しかし今ばかりはマグニートーの言葉が深く深く響き渡ってしまいます。ワンダの死の問題を解決できるのは、アルティメッツか、それともブラザーフッドか。ピエトロはブラザーフッドを選びました。空虚ばかり感じられる心には、憎くとも親類やかつての仲間達の方が隙間を埋められると感じたのでしょうか。ピエトロはアルティメッツへ声をかけることも無く去っていきました。
f:id:ELEKINGPIT:20230701165927j:imageピエトロの心を揺さぶるマグニートー。その瞳の奥には怒りと愛が入り交じっていた。

ピエトロがいない。ワンダの亡骸も。ブラザーフッドに攫われた? ワスプは事態を整理し、アルティメッツを2つのチームに分けました。1つはアルティメッツ本部を守るチーム。ワスプ、アイアンマン、キャップの3人で守りを固めます。そして残りのメンバーは全員でマグニートーの本拠地サベッジランドへ向かいます。ウルヴァリンも加えアルティメッツはすぐさまサベッジランドへと飛行機を飛ばしました。一方ワスプはアイアンマンへワンダを殺した銃弾の分析を依頼。判明したのは、弾丸がスターク社製だということです。ところがその瞬間、アイアンマンが首をはねられキャップには電撃が浴びせられます。背後から現れたピム博士曰く、なんと2人の正体はウルトロンだったのです。アルティメッツから外されたピム博士は、それでも世界平和に貢献しようとウルトロンを独自に開発していました。実際ウルトロンはリベレイターズとの戦いで避難誘導などに使われ、現在はアルティメッツの事実上使用人のような存在となっていました。ところがウルトロンに不穏な動きがあると勘づいたピム博士は密かにその行動を追っていたのです。アルティメッツ本部の地下施設。ピム博士はワスプへ驚くべき光景を見せます。なんとウルトロンはアルティメッツのコピーを生み出していたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20230701171223j:imageワスプ達が目撃した、ウルトロンの暴走。機械の体で編み出した陰謀とは?

 

ウルトロンが告白した真実。スカーレット・ウィッチを殺したのはウルトロンでした。元は平和維持とヒーロー活動を目的に作られたウルトロン。しかしウルトロンが真に活躍する日は待てども来ることは無く、植え付けられた人工知能はやがてワンダへ恋心を抱くようになっていました。会話するチャンスだけでも密かに探すウルトロン。しかし分かったことは、ピエトロとワンダが兄妹以上の関係にあったということです。ウルトロンの心は憎悪に満たされていきます。ウルトロンの計画は至極単純でした。トニーのベッドシーンを流出させ酒に溺れさせると、スターク社の技術を使いワンダのDNAを正確に射抜く弾丸を作り出します。そしてそれを指に込め打ち出したのです。また当初はヴェノムのコピー体でアルティメッツを襲撃させ、ワンダを誘拐するか殺害しようとしていました。ウルトロンの真実にワスプもピム博士も言葉を失うばかりでした。一方サベッジランドでは激しい戦闘が行われていました。マグニートーブラザーフッドの攻撃はアルティメッツのそれを凌ぐほどで、ソーの猛攻もマグニートーは磁力で難なく相手にします。またムジョルニアを磁力で重くし、また奪い取って見せるほど。このままアルティメッツは負けてしまうのでしょうか? 戦局を覆すのは予想外の混沌と盤外の乱入者の存在です。サベッジランドに現れたのはウルトロンが生み出したアルティメッツのコピー軍団です。執拗にアルティメッツを攻撃するコピー軍団。リーダーのイエロージャケットを倒せば全てが消滅するとピム博士は言います。ウルトロンを撃退したアルティメッツ。真犯人も暴かれ、事件は解決したかと思われたその矢先でした。ホークアイマグニートーへ弾丸を放ちます。しかし血に染ったのはクイックシルバー。ピエトロが咄嗟にマグニートーを庇ったのです。
f:id:ELEKINGPIT:20230701175214j:image許しの言葉を述べ、親に代わり胸を貫かれるピエトロ。マグニートーは人間が原因で2人の子を失うこととなった。

 

〈悲劇の世界で〉

今作のアルティメッツは、全体的に精神が不安定なように感じました。リベレイターズを打ち破った時程の強さを感じられないのです。今回はその理由を考えたいと思います。リベレイターズとの戦いで、アルティメッツは多くを失いました。ホークアイは家族を、アイアンマンは恋人を、決別という形ですがSHIELDも簡単には頼れません。導き手を失ったヒーローチームの自立は私たちが想像するよりも困難なのでしょう。実際チームリーダーのワスプはホークアイをコントロールすることが出来ず、結果ピエトロの死に繋がっています。そんなホークアイも家族を失ったことから過激化、コスチュームと装備を一新し、悪人を裁くエージェントのようになっていました。ヒーローは悲劇の連続です。時に親しい者が殺され、時に守るべき人々から憎まれ、進むべき道が見えなくなる時もあるでしょう。アルティメッツの場合、リベレイターズとの戦いでの傷が癒えないうちに急速に独立してしまい、不安定な状態でチームメイトが殺害されるという悲劇が立て続けに起こってしまいました。共通の倒すべき敵があらわれたからこそ力強く動いたアルティメッツ。しかし悲劇の世界を生きるヒーローだからこそ常に前を向き続けろと求めるのは酷なのかもしれません。リアリティを目指したアルティメットユニバースだからこそ描かれたヒーローの姿なのかもしれません。