アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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ULTIMATES 2 vol1 GOD & MONSTERS

リアルな世界観を目指して構築されたアルティメット・ユニバース。中でもULTIMATESシリーズは現在まで話題を呼ぶ人気シリーズの1つとなり、瞬く間に続編たる今シリーズが刊行されました。決して理想的なヒーローとは言えない超人が集まったアルティメッツ。各々に問題を抱えたチームだからこそ、異星人の侵略を退けた活躍は誰よりも輝いて見えました。そんなチームが織り成す新たな物語は、より期待度が高くなってしまいます。
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日本語版コミック

 

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〈あらすじ〉

チタウリの侵略から1年。人々は自らが想像するヒーロー像と、政府の描くヒーロー像のズレが顕著になりつつあった。そんな中暴露されたハルクの正体。超人の誕生を機に動き出した歯車は、もう止まらない。

 

〈夜明けのその先〉

アルティメッツの誕生から1年と半年。市民はアルティメッツが自分たちの思い描く理想のヒーロー像とのギャップに気づき始めます。アルティメッツは、国際紛争に介入し米国民を救出することなどをメインに活動しており、マンハッタンを飛び交うヒーロー達の姿は夢のまた夢でした。また火災現場から人々を救ったとして、それらは消防隊員や災害救助隊で事足りたこと。多額の税金をかけた意味を問う声が大きくなりつつありました。そんな中、あるニュースが全米を駆け巡ります。1年半前、ニューヨークを襲ったハルクの正体が何者かによって暴露されたのです。バナー博士がハルクであることはSHIELDが極秘情報扱いしていたはず。誰が? どうやって? 事態は急速に進み、そんな疑問に答える暇さえありません。バナー博士は不完全な超人血清を過剰摂取し、800人以上を殺した大量殺人犯として世間から大バッシングを受けます。また、そんな殺人犯を隠蔽していたSHIELD、そしてアメリカ政府にまで大きな非難が。ここで大統領は正式にバナー博士を裁判にかけると発表しました。
f:id:ELEKINGPIT:20230416224035j:imageバナー博士の罪を問う裁判。暴走の危険を考慮し、本人はリモートでの出廷となった。

 

粛々と進む裁判。しかし誰もがバナー博士の死刑を確信していました。暴露された証拠は強固なもので、最早弁護士がどんな論を立てたとしても陪審員の心を動かすことさえないでしょう。ワイドショーはバナー博士を電気椅子に縛るのか薬を投与するのか、死刑の方法に盛り上がる始末。アルティメッツさえ死刑は免れないことを確信していました。バナー博士の友人ベティは、自身がハルク暴走の一因であるとして涙を流しながらバナー博士へ愛を囁きます。やがて訪れた死刑当日。執行人は、SHIELDとアルティメッツが務めることとなりました。万が一暴走しないよう、強力な睡眠薬で眠らせた上で拘束、船の甲板に縛り付けて海上まで運搬します。そしてメガトン級の爆弾を直撃させることで、跡形もなく吹き飛ばす方法を採用。こうしてバナー博士は潮風に乗る塵となりました。葬式はアルティメッツとSHIELDのメンバーばかりが出席し、空席の目立つ協会で虚しいばかりの弔辞が読まれました。
f:id:ELEKINGPIT:20230416231720j:image死刑が執行される直前のバナー博士。国家のために献身し尽くしたにも関わらず、最期に涙を流すものはごく僅かだった。

 

それから数日後、アルティメッツにある任務が下されます。雷神の捕縛です。チタウリの侵略以来アルティメッツを辞任していたソーは、その後各地を放浪する生活を送っていました。そんな中イタリアでのデモを発見、警官隊へ攻撃を加えたことが大きな問題となったのです。とはいえソーはハルクと互角以上の力を持つ指折りの戦士。地球最強といっても過言ではない程です。そこでアルティメッツはキャプテン・ブリテンらヨーロッパの超人と協力し、作戦を立てます。そもそもソーは本来、超人血清の秘密を解明出来なかった北欧が作り出したキャプテン・アメリカに代わる超人です。様々な科学の粋を極めた結果、天候さえ操る武器と電撃を発生させるアーマーの開発に成功。ソーは自らをアスガルドから来た雷神と思い込んでいるだけで、実際な全て科学が生み出した代物だったのです。当然人工の力ですから弱点も存在します。パワーソースとなっているベルトです。これを奪取すればたちまちソーは無力化すると科学者は説明します。最強を目指した故に圧倒的な実力を持つ戦士になったソーですが、ベルトさえ奪い取れば確実に勝てるのです。
f:id:ELEKINGPIT:20230416232925j:imageソーを取り囲むアルティメッツ達。人を超えたヒーローは、遂に神にさえ拳を振るう。

 

キャプテン・アメリカらの火炎放射、アイアンマンのハイパーソニック、ブラック・ウィドウの騙し討ち、総力でぶつかりますがどの攻撃も決定打にはなりません。ソーは戸惑いながらも、これが奸智の神ロキによる謀略だと確信、必死に正気に戻るよう呼びかけます。しかしアルティメッツも、ソーが精神的な病を抱えていると信じ聞く耳を持ちません。拘束しようとする仲間を振りほどき、桁違いのパワーで吹き飛ばすソー。アルティメッツは連携攻撃を多用して互角以上の戦いに持ち込みます。全力を尽くすアルティメッツと比べ手加減していたソーですが、不屈の闘志で苛烈に攻撃を続ける元チームメイトの姿に遂に激怒。全力の一撃を放とうと嵐を召喚しました。この瞬間、クイックシルバーがソーの不意をつきベルトの強奪に成功。先程まで誰も勝てないほどの力でねじ伏せていたソーですが、瞬く間に力が抜けたように座り込んでしまいます。この隙にアルティメッツが拘束。ソーはかつてハルクが収監されていた特殊な檻に入れられます。
f:id:ELEKINGPIT:20230416234733j:imageベルトを取られ力尽きるソー。神の如き力を持つ者は、神の真似事をしていた超人に過ぎなかったのか?

 

〈人を超えても〉

アルティメッツが抱える問題が露呈した本作。まるで時限式の爆弾が大爆発したようです。今回メインとなったハルクとソーは、アルティメッツの中でもとりわけ高い実力を誇る者でした。そんな2人が大きな問題を起こしてしまったのです。どれだけ人の力を超えても、人は人を超えることが出来ないとは、今シリーズが何度もテーマにしていたことのように思えます。中でも最も印象的だったのが、トニーのあるセリフでした。バナー博士の死刑執行を直前に控えたトニーは、その手元に十字架を置いて仕事に取り掛かります。その時トニーは「何故私が酒を飲むのか、みんな不思議がるよ」とセリフを置いてその場を離れました。トニーは酒を飲んでいないとヒーローなぞやってられないと解釈していいでしょう。1度の失敗で大きな事件に発展し、バナー博士のように死刑になる者いる。人を超えてもこのプレッシャーに打ち勝つ方法はないのです。人が人を超える方法などあるのでしょうか? 今作を読むとより考えてしまいます。超人だから正気を保てないのか、正気を保てないから超人なのか? 内面の成長と力の振る舞いを改めることが超人への第1歩とは以前述べましたが、今回はそれがどれほど難しいのかをアルティメッツ全員が実感したことでしょう。