アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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ULTIMATE X-MEN vol1 THE TOMORROW PEOPLE

よりリアリティのある世界を目指して生まれたアルティメットユニバース。当ブログでは何度かアルティメッツを記事にしてきましたが、当然アルティメッツ以外にも多くの超人やヒーローが存在しています。正史世界でも莫大な人気を誇るX-Menもその1つ。アルティメットユニバースでの新たな姿はどのように描かれるのでしょうか?
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〈あらすじ〉

空を舞うセンチネル。悲鳴を上げるミュータント。今朝のニュースも退屈なものだ。激増するミュータントへ厳格な差別制度を運用するアメリカ。そこで人類とミュータントとの平和的共存を目指すエグゼビア教授は、将来有望な若者達を集め新たなヒーローチームを結成する。その名は、X-Men

 

〈新人類〉

ホモ・スーペリアという学名を与えられ、個体それぞれに固有の超能力を持つ人類の突然変異種、それがミュータントです。超能力には人を殺傷し得るものも含まれており、人類はミュータントに恐れを抱いていました。さらにミュータントの中でも過激派テロリストとして知られるマグニートーは、人類を殲滅し新人類として地位を確立しようと画策。アメリカ政府はセンチネルを大量に投入し、見つけ次第殺害する極端な政策を実行していました。ミュータントというだけで銃を向けられ、街中を歩くことさえ許されない。こんな不条理極まった世界を少しでも変えるため、自身もミュータントであるチャールズ・エグゼビア教授は立ち上がります。学園を作り、未来ある若者を呼び寄せたのです。こうして生まれたヒーローチームがX-Menでした。人類とミュータントの平和的共存。エグゼビア教授の悲願を託された若者は、アイスマンウルヴァリンを加え活躍していくこととなります。
f:id:ELEKINGPIT:20230420185124j:image新たなるヒーローチーム、X-Men。隣人と同じ権利を得るため戦うことを誓った。

 

X-Menが結成されてからしばらく後、全米をX震え上がらせるニュースが駆け巡ります。なんとマグニートーが大統領の子どもを誘拐したのです。センチネルでのミュータント虐殺を即刻停止するよう要求するためでした。エグゼビアはこれを逆にチャンスだと捉えます。ここでX-Menが大統領の子どもを救出してしまえば、ミュータントへの市民感情も少しは向上するはず。ミュータント虐殺を止めることだって十分有り得ます。X-Menは今まで以上に士気を高め出動しました。マグニートーの配下ブラザーフッドの隠れ家を特定し、早速子どもの救出に成功。あとは逃げるだけです。順調すぎて怖いほど進む作戦。しかしその時でした。ブラザーフッドの逆襲が始まります。同じミュータント同士、実力で勝るブラザーフッドはたちまちX-Menを圧倒。子どもはどうにかX-Men専用飛行機ブラックバードに乗せますが、その過程でビーストが瀕死の重傷を負ってしまいます。絶体絶命のX-Men。助けに現れたのは、なんとマグニートー本人でした。マグニートーはミュータントによる地球支配が目的であり、ミュータント同士で戦うのは最も避けたい事態。そのため例え敵であってもミュータントならば慈悲の手を差し伸べるのです。マグニートーは今回の作戦の失敗を認め、ブラザーフッドをあっさりと撤退させます。
f:id:ELEKINGPIT:20230420212048j:image瀕死のビーストを助けるマグニートー。ミュータントのための世界を築くのに、ミュータント同士で傷つけあう必要は無い。

 

この功績が認められ、エグゼビアの要求通りセンチネルによる虐殺は停止されました。敵の失敗に便乗した形ですが、暴力ではなく対話による問題解決を果たしたのです。しかしこれに不満を持つ者がいました。X-Menの事実上のリーダー、サイクロップスです。サイクロップスは命懸けで戦ったリターンがこれだけかとエグゼビアに不平を漏らします。ただ店で買い物がしたい、ただ街を何となく歩きたい、そんな権利さえないからこそ命を懸けて戦っているというのに。確かにセンチネルの虐殺はなくなった。しかしそれは、サイクロップスにとって最低限のラインにすら達していません。自分たちを戦地に送った老人と、自分たちを助けてくれた活動家。どちらの方がよりミュータントの未来を考えているのか? サイクロップスX-Menを裏切る決意を固めます。ブラザーフッドととして、マグニートーの理想に協力しようと決めたのです。一方エグゼビアはアメリカ政府からとある報告を受けていました。マグニートーの拠点を発見したのです。マグニートーは忘れられたジャングル、サベッジランドを根城にしていました。国際テロリストの拠点ならば放置するわけにはいかない。アメリカ政府は、大量のセンチネルを送り一気に壊滅させようと考えているようです。エグゼビアの反対の声をよそに、センチネルの大軍は一斉にサベッジランドへ発射されました。
f:id:ELEKINGPIT:20230421012815j:imageサベッジランドを目指す大量のセンチネル。テロリスト撃滅のため、戦力は惜しまない。

 

マグニートーが襲撃に気づいた時には、既にサベッジランドの住民にまで被害が出ていました。沸き上がる怒りが磁力となって島中を駆け巡ります。今夜、アメリカの命日が決まった。侮っていたのはアメリカ政府の方でしょう。どれほどのセンチネルを投入しようと、相手は磁界の王マグニートー。金属を含む敵に負ける道理があろうか? マグニートーは磁力操作を応用してセンチネルのプログラムを書き換え、新たな命令を与えました。ワシントンの襲撃です。一方、怒れる磁界王の姿を見たサイクロップスは唖然とします。人間を殺すことに痛みは感じていると言っていたにも関わらず、自ら進んで人間を虐殺しようとしている。ブラザーフッド加入当初からマグニートーの姿勢に違和感を持ちつつあったサイクロップスは、今度こそ真にミュータントの未来を変えるであろうチームにつく覚悟を決めアメリカへ向かいます。マグニートーを止めるために。数刻後、ワシントンは地獄と化していました。空を舞うセンチネル、悲鳴を上げる人間、砲火が降り注ぐワシントン。X-Menは空軍と協力してセンチネルと戦いますが、焼け石に水とはこのことでしょう。被害が瞬く間に広がり続け、とても手が足りません。そんな中マグニートーは勝利宣言の様子を全世界へ報道させます。傍らで地に伏しているのは、無防備な大統領です。世界で最も影響料のある人間を一瞬で制圧した。いずれは世界中の国でそうなるであろう。その第1歩として、アメリカ大統領を殺そうとしていたのでした。
f:id:ELEKINGPIT:20230421022448j:image全世界へ発信される大統領の哀れな姿とマグニートー。燃え盛るホワイトハウスを背中に、アメリカの終焉さえ予感させるものだった。

 

〈ただ生きるため〉

ミュータントへの過剰な差別政策を運用し続けるアメリカ政府。その光景は未来ある若者達にさえ明日がどうなるか、絶望さえ感じさせる程でした。しかしこの異様なシーンにはどこか見覚えがあるように感じてしまいました。実際のアメリカ政府も、太平洋戦争時は日系人強制収容所に閉じ込めるなどの差別政策を次々と実行していました。ある共通点を見つけ、それを整理しカテゴライズする。人々が恐れの感情を抱いた時はだいたいそのようなプロセスが共通して起こっているこもでしょう。恐怖の最も大きな種は未知です。知らないことが恐怖を生み、やがて差別へと繋がるのです。ミュータントはそんな未知に溢れた人種と言えるでしょう。個々によって全く違う能力を得るミュータント。しかも最初はコントロールさえままならないのですから、より未知の部分が大きくなってしまいます。典型的な差別の発端から過激な差別そのものへと突入する光景は、日系人だけの話に留まりません。X-Menはそんな社会へ警告を発すると同時に、私たちが胸に手を当てる機会を与えてくれたように思います。ミュータントを激しく嫌悪する感情の大元は、私たちにも沸き上がるものなのですから。