アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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ULTIMATE NIGHTMARE

リアリティのある世界観を目指して構築されたアルティメットユニバース。そんな世界へ激震を起こしたのが、後にギャラクタス3部作と呼ばれる作品群です。正史世界でもギャラクタスの初襲来は古典的名作の1つに数えられており、ギャラクタス3部作の期待値は嫌でも高くなってしまうというもの。今回はその第1作、ULTIMATE NIGHTMAREを読み進めたいと思います。アルティメッツとX-Menの顔ぶれが並ぶ本作。アルティメットユニバースだからこそできる展開の連続に驚きが隠せません。
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〈あらすじ〉

啓示の如く届いたのは死のメッセージだった。この星は滅びる。小さな生命に残された運命は死あるのみ。絶望を告げるメッセージに世界は混乱するばかりだ。このメッセージの意味を理解するため、アルティメッツとX-Menが立ち上がる。

 

〈過去からの警告〉

「逃げ場などない……それが来る……」世界中の電波を乗っ取って流された映像は、破壊と恐怖ばかりが映っていました。死屍累々のエイリアンと破壊される惑星。どこか突拍子のなささえ感じてしまいますが、世界中の人々を震え上がらせるほど真に迫った死のビジョンであることは間違いないでしょう。突然送られた世界への謎のメッセージに、世界は瞬く間に恐怖と混乱へ陥ってしまいました。SHIELDのフューリー長官は、このメッセージの発信源がロシアにあることを突き止めます。ロシアが3度目の世界大戦を引き起こそうとしているのか? あるいは新たな陰謀を? フューリー長官の推理の正否を問わず、直ちにメッセージの精査と分析、原因の調査を行わなければならないでしょう。アルティメッツだけでは人手が足りないと判断したフューリー長官は、科学者でもあり特別なバックパックで飛行するエージェント、サム・ウィルソンを任務へ同行させます。本国での解析はトニーに任せ、キャップ、ブラック・ウィドウ、フューリー長官、サムの4人で発信源まで調査することにしました。一方エグゼビア教授やジーンはこのメッセージを能力で強く感じとっていました。脳内へ直接訴えかける恐怖と絶望、新たなミュータントの可能性も有り得るでしょう。エグゼビア教授はセレブロで発信源を特定し、ウルヴァリン、コロッサス、ジーンの3人をX-Menとして派遣します。
f:id:ELEKINGPIT:20230605153725j:image世界を駆け巡った死のメッセージ。誰もが災厄の襲来を予感した。

 

そこは厳重にセキュリティを施された、地下墓地のような場所でした。ウィドウの調べでは設立年は1920年代。辺りに倒れている死体は人の手で改造が行われた形跡があり、この施設でロシアが何かを企んでいたことは確かでしょう。アルティメッツが出会ったのは、頭に生えた角から稲妻を発する奇妙な人間でした。動きは弱々しく今にも倒れそうですが、角の電撃の威力は強力。衰弱してなお高い戦闘能力に、尋問を諦めたフューリー長官は直ちに射殺しました。どうやらここは改造人間を作っていた研究所の跡地のようです。キャップらは、その成果を最奥部にて発見します。一方X-Menは巨体の改造人間が収容されていたエリアへたどり着きます。X-Menの登場に混乱した改造人間達は、話に耳を傾けることなく襲い掛かりました。改造人間の戦闘能力は常人相手なら恐ろしいものですが、戦闘訓練も死線も乗り越えてきたX-Men相手には通用しません。改造人間全員を倒した後、更に奥へ進んだX-Menは驚くべきものを発見しました。
f:id:ELEKINGPIT:20230605155733j:image改造人間を収容していたエリア。薄明かりの中で、巨体の改造人間が何人も暮らしていたようだ。

 

アルティメッツが見つけたのは、キャップのようなコスチュームを身にまとった人物でした。謎の人物はキャップを見るなりニヤリと笑みを浮かべます。不気味に微笑むこの人物は、かつて研究所が目指した言わば最終目標でした。大戦時代、超人として華々しく戦場を戦うキャップの存在はソ連にとっても驚くべきものでした。そこでソ連は極秘に独自の超人研究をスタートさせます。それがこの研究所でした。ソ連の目指した超人は、身体へ機械的な改造を施した改造人間です。しかし大戦中に完成することは無く、また以降も投入する機会を失い、超人研究はソ連によって「無かったこと」にされてしまいます。この研究所は言わばソ連超人計画の末路なのです。研究所内の死屍累々やかろうじて生き残った改造人間は、超人計画の成れの果てと言えるでしょう。そしてキャップをじっと見据えるこの人物は、そんな超人計画の完成系、レッド・ガーディアンです。ソ連の技術の粋を極めたレッド・ガーディアンは、大戦時代からキャップと戦うことのみを目標に今まで生きてきました。目の前にキャップが現れたことは願ってもない大チャンスなのです。アルティメッツはキャップの決着を待たず最深部まで歩を進めます。最深部にいたのは、薄闇の中でぽつんと真ん中に居座る奇妙な人間でした。いいえ、そもそも人間と呼んでいいのでしょうか。上半身しか残されていないそれは、上半身も多く損傷しており骨が剥き出しになった箇所も多くあります。普通の人間ならば間違いなく死亡するほどのダメージ。何より、この人物は骨が鋼鉄製で眼孔はランプのように赤く光ります。人間というよりロボットと言った方が正しいでしょう。ほぼ同時期に最深部へ到着したX-Menも驚いた表情を見せます。どうやらミュータントと推測していたものの正体は、この壊れかけたロボットのようです。アルティメッツを見つけるなり多少の諍いは起こりますが、ミュータントでないとわかった以上長居する意味もありません。残されたアルティメッツは、謎のロボットとコミュニケーションを取ろうとします。かろうじて自己修復を続けていたロボットは、全人類へ送った警告と共に自らの言葉で語り始めました。それは100年前、全人類へ警告のメッセージを送るために現れました。地表へ激突した衝撃で体のほとんどが損傷、更に自己修復した部分もソ連軍に回収されてしまい、回復に時間がかかってしまいました。そのためこうしてメッセージを送信することもほんのつい最近まで不可能でした。「それ」は地球で最も自分の名に近い言葉を自らの名として、「ヴィジョン」と名乗ります。そして改めて警告を発しました。奴が来る。死と破壊の象徴、ガー・ラク・タスが。
f:id:ELEKINGPIT:20230606023600j:imageヴィジョンが命懸けで何度も繰り返し警告したガー・ラク・タスの襲来。人類はこのメッセージをどのように活用するのか?

 

〈終わりの始まり〉

ガー・ラク・タスの襲来を告げるヴィジョンの登場という、衝撃的なストーリーを展開した本作。当然正史世界では描けない物語には何度も驚かされました。X-Menとアルティメッツの2つの視点から描かれた本作は、両チームのヴィジョンに対する姿勢が明確に別れていました。ヴィジョンがミュータントでないと判明した瞬間です。X-Menにとって、ミュータントだあれば保護の対象ですがそうでなければ関わる必要のないものとして切り捨てられていました。もちろん助けが必要ならば手を差し伸べるでしょうし、ミュータントではないからと言って見向きもしないわけではありません。しかしヴィジョンがミュータントでないとわかった以上、アルティメッツもいるならば関わる必要がないと判断したのです。一方アルティメッツは、ヴィジョンを米国へ持ち帰り修復と分析を進めようとしていました。X-Menにとってミュータントこそが最優先で守るべき対象であることが、アルティメッツはSHIELDの機関としてあわよくばソ連の研究を解析したいという意図が見えました。両チーム共に全人類を守ろうと純粋で固い意思を持っているわけではないのです。当然危機が訪れた時は全力で対処するでしょう。しかしそれ以外の政治的なしがらみに囚われているとも言えるでしょう。しがらみを残した状態で本当の危機が訪れた時団結できるのか? 少々不安が残る1作でもありました。