アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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ULTIMATUM X-MEN REQUIEM

600万人を超える死者を出したアルティメイタム。アルティメットユニバースを激変させた大イベントは、ヒーローにも多くの被害が出てしまいました。今作はそんなアルティメイタム直後のX-Menを描いたワンショットです。ウルヴァリンサイクロプスといった主要メンバーさえ失ったX-Men。残ったメンバーの悲しき決意を見届けたいと思います。
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Ultimatum (English Edition)

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〈あらすじ〉

多くが死んだ。天変地異を超える最悪の大事件に、X-Menの多くが失われた。残されたミュータントに出来ることは多くない。安らかな眠りを祈り、墓標へ生きた証を刻むのみ。

 

〈家族だった〉

SHIELDの基地へ侵入したキティは、ウルヴァリンの片腕を探していました。マグニートーを追い詰めたあの時、細胞レベルで散り散りに消し去られたウルヴァリン。しかし骨のみになった片腕だけは残っていたのです。骨に付着した細胞は欠片もなく、クローンを作られる心配はありません。ウルヴァリンは完全にこの世から消えて無くなりました。それでも残った腕だけでも弔いたい。キティは導かれるようにウルヴァリンの腕を発見。その足で学園まで向かいます。待っていたのはジーンたちと、横たわり静かに眠る死者達でした。サイクロプスウルヴァリン、エグゼビア教授……主要メンバーのほとんどを失い、残されたX-Menは学園の解体とチーム解散を決意します。家族を失ったジーンらにとって学園はもう家ではなかったのです。家族を埋めるために静かに土を掘っていると、元ブラザーフッドのメンバーが現れました。弔問をしにやってきたようです。
f:id:ELEKINGPIT:20230724081354j:image墓を掘るジーンらの前に現れた元ブラザーフッド。同じミュータントを弔いに来たと言うが……

 

ジーンにはそれが許せませんでした。その多くを奪い死んだマグニートー。その仲間だったブラザーフッドには止めるチャンスなんていくらでもあったはずです。マグニートーを止めることさえ出来ればあれほどの犠牲者は出なかったはず。責任の一旦はブラザーフッドにもある。その上、元ブラザーフッドのメンバーはX-Menブラザーフッドでチームアップし、新たなアルティメッツのようなチームを作ろうと持ちかけたではありませんか。マグニートーの天変地異に加担したあのブラザーフッドとヒーローチームを組むだなんて。ジーンの怒りは収まりません。元X-Menと元ブラザーフッドは、仲間たちが静かに眠る墓の前で最後の戦いを始めます。その首をせめてもの慰めに捧げるために。アルティメッツが生まれるより以前から争いあった両チームの戦いは洗練さえされていました。手の内も弱点も知る相手に極められた動きの数々。しかしそれに決着をつけたのは意外な人物でした。キャプテン・アメリカです。キャップは歴戦の勇士達へ敬意を表するためにジーンらを訪ねていたのでした。葬式が終わるとX-Menは正式に解散しました。残されたメンバーは全員違う道へと歩き始めます。1人残ったジーンは最後に墓標へ文字を刻み始めました。傾きつつある日を背に、墓標はその下で眠るX-Menをじっと見つめていました。ミュータントと人類の平和的共存を夢見て駆け抜けた高潔なヒーローチームへ、ジーンの刻んだ言葉を語りかけるように。
f:id:ELEKINGPIT:20230724182917j:image石に言葉を残し立ち去るジーン。こうしてX-Menは解散した。

 

〈人類を超えて〉

アルティメットユニバースというレーベルを初期から支え続けたX-Menは、アルティメイタムで最大の被害を受け、今作で解散という道を選びました。ミュータントというアイデンティティも拠り所も失ったX-Menには当然の結果だったかもしれません。解散したX-Menですが、最後にゴールとして目指していたミュータントと人類の平和的共存について考えたいと思います。ミュータントと超人は起源をたどればほとんど同じで、極端な言い方をしてしまえばどちらも改造人間に該当するでしょう。しかしそんな真実はミュータントも人類もほとんど知らず、差別という現実と共存という理想を築き上げていました。恐らく真実が公表されたとしても差別そのものは無くならないでしょう。突き詰めてしまえば差別に理由などないのです。ならばミュータントと人類の平和的共存は永久に敵わない願いなのでしょうか? 注目したいのは、最後に現れたキャップです。当初こそミュータントへ差別的な言動を発していたキャップですが、今作では純粋な敬意を表するために現れていました。キャップはミュータントへの差別的感情が消え、敬い弔うようにさえなったのです。確かにミュータントと人類の平和的共存は達成されないままX-Menは解散してしまいました。しかしキャップの敬意がそれを表していたように、社会への理解は少しづつ進んでいたことでしょう。キャップがX-Menへ敬意を表したのは、X-Menのことを知ることが出来たから。ミュータントに限らず、私たちは多くの差別が存在する世界に住んでいます。差別心が芽ばえる理由の一因に、人を1つのアイデンティティでしか捉えていないことが挙げられます。キャップのようにその人を個人として向き合うことで、それらは少しでも解消されるでしょう。