アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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ULTIMATE EXTINCTION【2023年6月私的ベストアメコミ】

ギャラクタス3部作も今作でいよいよ最終章となりました。具体的な姿が見えぬまま宇宙に恐怖をばら撒く存在として語られ続けたガー・ラク・タス。これまで何度も人類の敗北は必至であることが伝えられてきました。しかしアルティメットユニバースには、人をの枠を超えたヒーローが何人も存在します。圧倒的な天才も多くいます。まだ希望は存在するのです。既に死んだも同然とさえ言われた人類に、勝利のチャンスはあるのか? 地球の全生命をかけた戦いが始まります。
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〈あらすじ〉

迫り来る絶滅へのカウントダウン。木星圏に現れた生命体はガー・ラク・タスなのか? 地球圏へ現れた、空の波に乗る銀色の異星人が意味するものとは? 敗北必至の戦いへ光明を見出したのは、偶然発見されたカルト教団だった。

 

〈悪あがきの戦争〉

修復が完了しつつあるヴィジョンや前回かろうじて入手したクリーのデータを元に、ファンタスティック・フォーのリードはガー・ラク・タスの全容を遂に解明しました。何より肝心の攻撃方法は、フューリー長官らが想像していたよりも恐ろしいものだと判明します。ガー・ラク・タスは、目標の惑星に到着する1週間前に知的生命体を確認すると、まずは怪思念波を浴びせます。この思念波で惑星の住民を自殺に追いやるのです。その後は食人ウイルスを送り込み、生き残った住民を食い殺させます。最後は生命体のいなくなった星のエネルギーを吸い尽くし、2度と生命の誕生しない死の惑星へと変化させるのです。更に民間の人工衛星が、ガー・ラク・タスの姿を捉えたとの報告が。どうやらガー・ラク・タスは既に木星圏まで到着しており、このままだと1週間前後で地球圏まで辿り着くことでしょう。怪思念波も既に届いているのか、自殺者が増えている様は嫌でもわかります。どうやらガー・ラク・タスは個体ではなく集合知性、1つの群れで1つの知性を持つ生物のようです。木星にリングを作るほど膨大な数で群れを成している様子。1つ1つの大きさは大赤斑(木星に存在する巨大な大気の渦)との比較から推測して、月と地球の距離の半分近くはあるとの事。それほど巨大な生物が群れを成して襲撃するというだけでも絶望的でしょう。その上ガー・ラク・タスの食人ウイルスは最速で3時間、どれほど遅くとも21時間以内に地球全土を覆い尽くすとされています。つまり食人ウイルスを放たれた瞬間人類の敗北、そして絶滅が確定してしまうのです。五里霧中に光明を見出すような無理難題に、リードは頭脳をフル回転させて対策を考え始めます。
f:id:ELEKINGPIT:20230607203448j:image人工衛星「セントリー」が捉えたガー・ラク・タスの姿。数千年間星を食い荒らしてきた生命体が、地球へ刻一刻と近づいているのだ。

 

私立探偵のミスティ・ナイトは、浮気調査の依頼を受けていました。パートナーが夜な夜な行方不明になり、浮気を疑った依頼人がミスティへ調査と証拠の写真を依頼したのです。尾行の結果、確かに依頼人の言う通りパートナーは怪しげな雑居ビルへと姿を消しました。あとは決定的な瞬間の写真を撮るのみ。ところがミスティが目撃したのは、全くの予想外のものでした。依頼人のパートナーが訪れたのは奇妙な集会か何かの様子。中央に経つ黄色のコートを着た人物に皆が跪いている様子から、恐らく新興宗教の類でしょう。驚くべきは、黄色のコートを着た人物が全身銀色に覆われ、翼を生やしていたのです。観察し撮影しようとした瞬間、ミスティら何者かの襲撃を受けます。この事件には何か超自然的な裏があるのでは? 襲撃犯は、調査の結果人相やタトゥーからヘザー・ダグラスと呼ばれる人物だと特定されます。ところがヘザーは20年以上前に交通事故で死亡しているではありませんか。更に調査の帰り、事務所で銀色の人物からも襲撃を受けます。市民からの通報もあり、駆けつけたキャップとファルコンは、銀色の人物を捕り逃すもののミスティから話を聞くことに。さらに先日ミスティを襲撃したヘザーも捕まえ、捜査はSHIELD主導で行われます。ヘザーはDNA配列からクローンであることが判明しました。誰が何故このようなことを? ヘザーの口から語られたのは、ガー・ラク・タスでした。ヘザーは20年以上前、ガー・ラク・タスの襲撃を偶然予見した天文学者によって生み出されました。滅亡をもたらす宇宙からの死者。死の天使に天文学者はたちまち魅了され、カルト教団を設立、ガー・ラク・タスの襲来と共に死ぬことのみが天国へ行く方法だと説いて回りました。恐らく天文学者は既に自死していることでしょう。現在、クローンは大量に製造されているようです。
f:id:ELEKINGPIT:20230607211836j:imageキャップ、フューリー長官らの尋問を受けるヘザー。ガー・ラク・タスを信仰するカルト教団も終末を予期して現れた。

 

同刻、エグゼビア教授とリードはガー・ラク・タスを打ち破る唯一の策を考案していました。エグゼビア教授はガー・ラク・タスとの交信に失敗していましたが、思念を送ることが可能だとその身を持って証明しました。またリードも自らが発見した新次元、Nゾーンを用いれば莫大な火力を生み出すことも可能でしょう。2人はそれぞれのチームから協力者を引き入れ、攻撃の最終準備に移ります。ところがその瞬間、襲撃を知らせる通信が入ってきます。なんとSHIELD本部のトライスケリオンをヘザーのクローン軍が攻めてきたのです。目的は当然ガー・ラク・タスへの攻撃阻止。アルティメッツやFF、更にはX-Menが加勢してようやく互角なほどの人数。それでもガー・ラク・タスへの攻撃を延期する訳にはいきません。人類滅亡まで残る時間はほぼ1日、これ以上の猶予は残されていないのです。エグゼビア教授は修復を終えたヴィジョンにも協力を求め、巨大なセレブロを使用。全人類の思考を結集させてガー・ラク・タスへ放ちました。思念を送ることが可能ならば、莫大な思念でオーバーフローさせることも可能だという算段でした。結果は目論見通り、地球軌道に侵入しつつあったガー・ラク・タスの動きを止めることに成功します。次はリードの出番です。リードは新型宇宙核ミサイル、ネバダガンを開発していました。ネバダガンは、産まれたばかりの別宇宙へのゲートを強引に開けるミサイルです。ゲートをこじ開けられた別宇宙はビッグバンを引き起こし、その爆発と衝撃をガー・ラク・タスへ伝えるのです。生まれたばかりとはいえ別宇宙を破壊する行為にリードは最後まで悩んでいましたが、他に手段がないことから使用を決意していました。地球外で閃光が瞬く間に広がります。攻撃は成功です。監視衛生によると、ガー・ラク・タスの群れは全体の20%を消失。更にエグゼビア教授から送られた思念が深刻なダメージを与えたようで、ガー・ラク・タスは撤退を余儀なくされました。敗北必至の戦いへ悪あがきのような戦いを挑んだ結果、人類は勝ったのです。
f:id:ELEKINGPIT:20230608001948j:imageガー・ラク・タスの群れへ直撃するネバダガン。宇宙に広がる閃光は、人類が勝利した最高の証明となった。

 

〈神のいない世界で〉

人を超えた超人が多く存在するアルティメットユニバース。しかし下敷きはあくまでリアリティとの両立でした。時にそれは露悪的な描写にも繋がってしまい、現在も賛否を産む結果となります。一方で正史世界のような上位存在や概念を司る神々は姿を見せておらず、頼れるのは超人のみという状況が今作でした。今作ではキャップがガー・ラク・タスの侵攻に恐れを抱いていた描写がありました。超人である前に一介の軍人でしかない自分に、地球消滅という大きすぎる任務を遂行できるのか? もしこの世界に神がいるならば、何故こんなにも理不尽な出来事が起きるのか? この世界で神に相当するキャラクターは登場していません。ガー・ラク・タスも生命の一部であり、神ではありません。祈ったところで叶うはずもなく、また何者かに届く訳では無い。この世界に神はいません。しかし超人はいます。祈ることは出来なくとも戦うことは出来るのです。もう1つのマーベルユニバースとして拡大し続けるアルティメットユニバース。神のいない世界で、超人達は恐怖しながらも戦い続けることで活路を見出しました。ガー・ラク・タスに勝利した要因はなんなのか? それは最後まで神に頼らず仲間を頼り、戦い抜いた闘志でしょう。