アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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AVENGERS(1998)#26〜#30

世界の危機に何度も立ち向かうアベンジャーズ。だからこそ多くの人々はアベンジャーズへ理想のヒーロー像を重ねるのでしょう。地球最強のヒーローチームとして、地球代表としてアベンジャーズはある問題に直面していました。
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前回はこちらelekingpit.hatenablog.comelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

アベンジャーズの人種問題は、ソーの暴走によりトップニュースにまで躍り出た。メンバーそれぞれの状況も鑑み、アベンジャーズはチームの再編を決意する。そんな新チーム最初の任務は、火山の女神を救うことだった。

 

〈新たなアベンジャーズ

アベンジャーズマンションの前で行われるデモ行進は、日に日に勢いを増していました。新興宗教「三位一体の解釈」が主導するデモ行進は、黒人のアベンジャーズ加入とミュータントの排斥を同時に唱え、人種差別と差別反対を同時に主張するもの。当初アベンジャーズは取り合おうとさえしませんでした。しかしメディアの注目を集めるほど増大したデモ行進に、無視を貫き続けるのは無理があるでしょう。また執拗なメディアの質問攻めにとうとうソーは我慢の限界へ。ムジョルニアでテレビカメラを破壊する事件を起こしてしまいました。こうなってはアベンジャーズ批判は烈火のごとく吹き上がります。事実、今のアベンジャーズに黒人が居ないことを問題無しとは言えません。メンバーそれぞれの状況が変わってきたことも鑑み、アベンジャーズは新体制へ再編することが決まりました。ソー、キャップ、ジャスティス、ファイアスター、ワンダーマンが脱退し、代わりにワスプ、ゴライアス(ピム博士)、シーハルク、トライアスロン、そしてアルコール依存症の治療を終えたウォーバード(キャロル・ダンバース)をメンバーに加えます。ワスプをリーダーに定め、新体制のアベンジャーズが始動しました。
f:id:ELEKINGPIT:20230604170529j:image記者会見で新体制へと移行したことを伝えるアベンジャーズ。不安な要素を残しつつも、多くがベテランで固められた堅実な人選だろう。

 

そんな新体制のアベンジャーズ初任務は、シルバークロウからの依頼でした。故郷カメケリ村から助けを求める便りが来たのです。シルバークロウは中南米に位置するカメケリ村の生まれ。スペインに植民地化されるまで信仰のあった多神教の神々を調査する考古学者と、唯一人間界に残った火山を司るカメケリの神ペリアリの間に生まれました。体をあらゆる動物の形へ変化させる能力を持っていたため、カメケリ村の住民は気味悪がってついには出ていかざるを得なくなるほど。アメリカでは偶然知り合ったジャービスを中心に広い人間関係を持っていました。現代。短いながらも助けを求める手紙を受け取り、アベンジャーズとともにカメケリ村へ急ごうと考えていました。アベンジャーズもシルバークロウの話を受け、早速クインジェットの用意を始めます。カメケリ村付近に到着した頃、シルバークロウは大きなショックを受けてしまいます。かつての村の姿からあまりに大きく変わってしまったのです。そもそも村が魔法都市のようになっており、侵入した途端謎の人物により魔法をかけられ、村の為政者に従うようマインド・コントロールを受けてしまうようです。村へ潜入するには外敵と認識されないよう慎重に行動する必要があるでしょう。謎の人物は、村の為政者でもあるクラン・ガスと名乗りました。カメケリ村は既にクラン・ガスが乗っ取ったのだと宣言したも同然です。とはいえ現状では抗う術を持たないアベンジャーズは、村の近辺で作戦を練ることにしました。
f:id:ELEKINGPIT:20230607024251j:image変わり果てたシルバークロウの故郷、カメケリ村。クラン・ガスの事実上の勝利宣言に、アベンジャーズさえ黙るしか無かった。

 

翌日、ワスプ、アイアンマンを除いたアベンジャーズはカメケリ村内部にいました。外敵を排除する魔法のセキュリティの弱点は、外敵と認識されなければ発動しないことです。軽い変装で村へ潜入したアベンジャーズは、村やクラン・ガスに関する情報を集めるため酒場へ向います。しかしそれさえも罠だったのでしょう。酒場にいる客も店員も、全員がクラン・ガスの使役する悪魔だったのです。それぞれの戦闘力はもちろん、圧倒的な数でアベンジャーズを一方的に倒してしまいました。捕らわれたアベンジャーズ。これはクラン・ガスにとっても僥倖です。クラン・ガスは神を生贄に捧げることで、神をも超えた災厄の力を手に入れようとしていたのです。その上アベンジャーズも生贄に捧げたならば……儀式の準備はあっという間に進められました。磔にされ、あるいは檻に入れられ、それでもアベンジャーズは諦めていないようです。クラン・ガスの儀式が始まる前に脱出する。そうすれば儀式の成功はないのです。油断しきったクラン・ガスから僅かな隙を見つけ、アベンジャーズは錠を破壊しました。更に次の瞬間、アイアンマンとワスプが村の外から合流します。アベンジャーズが村を調査している間、2人は国防軍と掛け合っていたのです。こうしてアベンジャーズは村の内外から挟撃することに成功します。
f:id:ELEKINGPIT:20230619154207j:image国防軍と共に現れたアイアンマンとワスプ。しかしクラン・ガスがこの状況を許すはずもなく……

〈人種とアベンジャーズ

今作はアベンジャーズが市民のデモに応える形で再編される描写がありました。マスコミの粘着質な報道もあり、ソーやキャップが事実上脱退することに。市民の圧力で強制させるようにさえ見えてしまう描写ですが、何故アベンジャーズは再編する必要があったのでしょうか?

地球最強のヒーローチームとして大きな影響力を持つアベンジャーズ。政府とも繋がりを持ち、再編の度に記者会見も行われるヒーローチームを「街のヴィジランテの集まり」「一介のヒーローチーム」と扱うことは難しいでしょう。アベンジャーズはアイコニックなヒーローチームなのです。そんなアベンジャーズの存在は民衆に大きな勇気を与えてきたことでしょう。ところがアベンジャーズが多くが白人で構成されていたら? 例えば私達は、ハリウッド映画に日本人俳優が登場すると歓迎の声を上げるでしょう。MCUのエンドゲームに日本人俳優が採用されたと報じられ、大きな話題を呼びました。またMARVELが日本の漫画や特撮ドラマとコラボすることも喜ばれます。アベンジャーズに多様な人種が望まれるのは同様の理由でしょう。地球を代表するようなヒーローチームに私たちと同じ人種がいると、それだけで勇気を貰える人、そうでなくとも心が動かされる人は多いはず。より多くの人々へ勇気を与えるのもまたアイコニックなヒーローチームの役割なのです。