アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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ULTIMATE VISION

ギャラクタス三部作を終え、地球史上最大の危機を乗り越えたアルティメットユニバース。今作はそんなギャラクタス三部作の後日談とも言うべき内容です。ガー・ラク・タスの襲来を告げたヴィジョンが主役の本作。ギャラクタス三部作の始まりを象徴するキャラなためか、短い出番ながら明確な目的と意図を持つため魅力溢れるヒーローとなりました。そんなヴィジョンの活躍に期待したいと思います。
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〈あらすじ〉

アルティメッツ、X-Men、FFの活躍で地球史上最大の危機は去った。かと思われた。未だ残るガー・ラク・タスの脅威に対処出来るのはヴィジョンしかいない。地球滅亡へのカウントダウンが再び始まろうとしていた。

 

〈災厄の再来〉

誰もが成し遂げやらなかった、ガー・ラク・タスの撃退。気が遠くなるほど長い間ガー・ラク・タスによって滅ぼされる文明を何度も記録し観測し続けたヴィジョンにとって、それは自分が培ってきた常識さえ覆すほど衝撃的な出来事でした。とはいえガー・ラク・タスは死んだのではなく撤退しただけ。いつまた次の惑星を襲うか、或いはもう襲っているかもしれません。ヴィジョンはすぐさま宇宙へ飛び立とうとします。ところが地球圏から抜け出そうとしたその時、遭難信号を受信します。宇宙での遭難となれば、一刻も早く助けねば人命に関わる一大事です。どうやら発信元はとある人工衛星のよう。待っていたのは、ジョージ・タールトン博士ら率いるアドバンスド・アイデアメカニクス、通称AIMと呼ばれる組織でした。AIMは人類の科学的進歩を目指し日々研究に取り組んでいるようで、例えばテレパシーの研究などを行っていました。またAIに人口の肉体を与え、成長させる研究も。ディマと名付けられたその子どもはIQの成長が6歳で止まってしまったため、AIMは失敗作と位置づけていました。そもそも肝心の遭難信号は? AIMの研究成果を案内されたヴィジョンは苛立ったように言います。タールトン博士は笑みを浮かべました。何故なら遭難信号の発信元が、ガー・ラク・タスの群れの1体だったのですから。
f:id:ELEKINGPIT:20230623153716j:imageAIMの人工衛星に秘匿されていた、1体のガー・ラク・タス。非常に小さな個体だが、これでも地球を壊滅させるパワーがある。

 

タールトン博士は、ヴィジョンを介してこのガー・ラク・タスを調査、解明し、科学の発展に役立てようと考えていました。厄災を呼び起こすだけだと猛反対するヴィジョンに、タールトン博士は自らの覚悟を証明するかのように自身の体を見せました。その体はほとんどが改造人間となっており、文字通り体を張って実験を繰り返してきたことが分かります。壮絶な覚悟を目の当たりにしたヴィジョンは協力することに。ところがそれさえもタールトン博士の策だったようです。ヴィジョンを媒介に自らの体をガー・ラク・タスに接続、コントロールしようとしたのです。ヴィジョンが気付いた時には腹を撃たれ意識を失っていました。こうしてタールトン博士はガー・ラク・タスの力の一部を手に入れたのです。ところが時間が経つにつれ、気に入らない部下を殺害するなど凶暴性が増していました。数時間後、人工衛星に2つの異常事態が発生します。1つは乗組員が突如異形の怪物へと変わり他の乗組員を襲い始めたこと。そして人工衛星の軌道が地球へ真っ逆さまに落ち始めたことです。どちらも原因はタールトン博士でした。ガー・ラク・タスに意識が侵食されつつあったタールトン博士は、ガー・ラク・タスの持つウイルスのような怪物を解き放ち、地球へ向かうために人工衛星を墜落させようとしていたのです。特に厄介なのが怪物。この怪物が口から出す液体に触れたが最後、自身も怪物へ変異してしまうようです。ヴィジョンが気がついた頃には人工衛星内の人間ほぼ全てが怪物へと成り果ててしまったのでした。残るはAIMの作り出した生命体ディマとヴィジョンのみです。自己再生プログラムで復活したヴィジョンですが、子ども同然のディマを守りながら戦うことは不可能と判断。墜落直前まで待ち、何とか脱出に成功します。それでも危機は去っていません。人工衛星の墜落の影響か、内部に匿われていたガー・ラク・タスが呼び覚まされたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20230624015849j:image復活したガー・ラク・タス。ただの1体だが災厄をもたらすには充分すぎる力を持つ。

 

ガー・ラク・タスが復活したことで、タールトン博士の自我が蘇りました。ひどい頭痛に苛まれているようで、ガー・ラク・タスを倒し完全に自我を取り戻すため戦おうとします。ヴィジョンもガー・ラク・タスとの戦闘を決意。一方フューリー長官は人工衛星の墜落からガー・ラク・タスの復活までを観測していました。そこでアルティメッツにエマージェンシーを要請、現場に最も近いファルコンを真っ先に派遣させます。ガー・ラク・タスは米軍基地に寄生しているようです。タールトン博士によると、巨大なフォースフィールドで自身を守りながら、マントルへ向かって直接攻撃を仕掛けているのだとか。あと40分以内に決着をつけなければ地球が消滅する計算です。まさに一刻を争う緊急事態。ファルコンとタールトン博士の秘策でフォースフィールドを破ることには成功しますが、本体のガー・ラク・タスへダメージを与えることは困難を極めます。元々戦闘用でないヴィジョンの攻撃はもちろん、ガー・ラク・タスの力の一部を持つタールトン博士やファルコンの攻撃も決定打にはなりません。打つ手なしかと思われたその時、タールトン博士はディマへ秘密の命令コードを与えます。
f:id:ELEKINGPIT:20230624030128j:imageタールトン博士の隠された命令コードで動き出すディマ。最後の切り札に地球の命運がかけられる。

 

〈科学教〉

本作にて初登場したタールトン博士は、一言で表すならテクノロジーを狂信する科学者でしょう。科学技術のために自らの体を実験し、ただテクノロジーを次なるステップへ進めるために思いつく手段が倫理的かどうかさえ気にせず突き進む人物です。しかしテクノロジーの進化は良いことだけではないはず。科学技術の発展はすなわち何らかの犠牲が前提なのです。古くは活版印刷術の誕生から、蒸気機関、コンピューター、そして現在はAI技術の発展で新たな問題が浮上しています。テクノロジーの進化による人類の発展は、それまでの旧来の世界を1度壊して再構築していると言えるでしょう。タールトン博士はこの事実を無視するようにガー・ラク・タスを制御した結果、現れた犠牲がガー・ラク・タスの復活でした。一方ヴィジョンは、ガー・ラク・タスにより滅ぼされる星々の文明を観測、記録することを目的としたアンドロイドです。言うなれば科学技術の一種の到達点でしょう。しかしその役割は他の犠牲を前提としたもの。まるでテクノロジーの進歩とその犠牲に対する皮肉のようです。そんなヴィジョンはファルコンやディマとの出会いをきっかけに、人間的な存在へと変化していました。中でもAIMに失敗作と告げられたディマが、ヴィジョンとの交流を経て少しずつ成長していったように思えたのは私だけでないはず。傲慢となったことでテクノロジーを詰めたボディが進化した変わりに、仲間を失い成長の限りなく少なくなったタールトン博士。ディマとの出会いを通じ互いに人間的になったヴィジョン。科学を宗教のように盲信し邁進するタールトン博士ですが、人間の生み出すものに他者との協力や育みが必要ないわけがないのです。科学技術発展の道は、科学技術以外にも目を向けることなのでしょう。