アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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ROAD TO CIVIL WAR

ヒーロー社会を二分し、私たちの住む世界でも大きな議論を呼び起こしたCivil war。MCU版だけでなく、邦訳されているコミック版を読んだことがある方も多いのでは無いでしょうか? しかし議論の中心となった超人登録法が一朝一夕で出来たものでないというのは、果たしてどれほどの方が知っているでしょうか。今作はヒーローたちの内戦に至るまでの前日譚を克明に作品です。これを読むか読まないかで、Civil war本編の印象がガラリと変わってしまうことでしょう。読むには少し覚悟がいるかもしれません。何せ今作には、世界の裏で活動し続けたある組織が関わっているのですから。
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関連作品

 

日本語版関連作

シビル・ウォー (MARVEL)

シビル・ウォー (MARVEL)

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〈あらすじ〉

トニー・スタークが耳にしたのは、ヒーロー社会へ大きな変化を促すある法案だった。この是非を巡り、イルミナティが集められる。全ては予想された未来を回避するために。

 

〈足音〉

それはクリー/スクラルウォーの時代まで遡ります。銀河に激震を走らせた最悪の戦争の舞台となった地球では、終戦後名だたるヒーローがワカンダに集結します。アイアンマン、プロフェッサーX、ネイモア、ブラックボルト、ミスターファンタスティック、ドクターストレンジ、ブラックパンサー。挨拶もそこそこに、アイアンマンが重い口を開きます。今回の戦争は我々の落ち度ではないか? と。ヒーローコミュニティ全体で連携し、情報を共有出来ていれば防げたのではないか? この意見にヒーローたちは激論を始めます。最終的に妥協点が探られ、今日集結したヒーローたちで情報を共有し、秘密裏に世界平和をコントロールが決められました。しかしこの傲慢とも取れる結論にブラックパンサーは反発。結果ブラックパンサー以外の6人が今後イルミナティとして世界の裏側で活躍することとなります。それから長い時が経ちました。イルミナティ結成当初はモデル3アーマーを着用していたアイアンマンも、今やモデル29、エクストリミスアーマーを着用する頃です。トニー・スタークは再びイルミナティを招集します。つい最近、世界平和のためにとかつての仲間だったハルクさえ追放したイルミナティが、解決すべき緊急の議題とは? トニーはある法律の草案を耳にしたと言います。超人登録法案です。ヒーローは適切な訓練を受け、その身分を政府に登録することを義務化する法案。登録を拒否すればスーパーヴィランと同様の扱いになります。政府は既に対超人を想定した特殊部隊の編成を進めている様子。下手を打てばヒーローが犯罪者になる危険な法案。トニーはここで全面的に賛成すべきと提案します。ある未来を明確に想定していたからです。フューチャリストとして100年先を行くと言われるトニー。そんなトニーが予測していたのは、あまりに正確なものでした。それでもイルミナティは結論を出せず、その日の会合は終了してしまいます。
f:id:ELEKINGPIT:20240118223344j:imageトニーが語る正確無比な未来予測。予言といえるほど的中した想定に、イルミナティはなんの結論も出せなかった。

 

会合があった夜、バグスタービルに戻ったリードを待っていたかのように緊急通信が入ります。なんとアメリカ軍の将軍ではありませんか。オクラハマにてドゥームボットの大軍に襲撃されたから対処をして欲しいと。ドゥームボットは、かのドクタードゥームを模して作られたロボットです。経験豊富なファンタスティック・フォーが相手でなければ相当手強い相手でしょう。リードはファンタスティック・フォーを呼び出し緊急出動。助けを求められた場所は米軍の小規模な基地があり、それをドゥームボットが襲っているようでした。しかし何故こんな小さな基地をわざわざドゥームボットが襲撃しているのでしょうか? 当のドゥーム本人は死亡しているにも関わらずです。とはいえ世界一の天才と言えどすぐに答えが出る問いではありません。今は戦いに集中するべきでしょう。4人でドゥームボットを蹴散らし基地の防衛に務めている時、背後から聞き馴染みのある声がします。ドクタードゥームです。この基地にあるものを狙い、ドゥームは地獄の底から蘇ったのでした。答えはすぐに分かります。基地の付近にあるクレーターの中心、そこには小さな槌がありました。ドゥームは言います。あれは雷神ソーのハンマーだと。あれはムジョルニアだと。米軍は半年前にムジョルニアがオクラハマに墜落したことを確認、極秘情報とし虎視眈々と持ち上げられないかを狙っていたのです。そしてドゥームもまた同様に、現世に甦ってからずっとムジョルニアを狙っていたのでした。しかし雷神の忘れ形見は清く正しい心でなければ持ち上げられません。
f:id:ELEKINGPIT:20240118224851j:imageムジョルニアをめぐって争うドクタードゥームとシング。しかしハンマーは地面から離れない。

 

同じ頃、ピーターパーカーはトニーに呼び出され、ラボを訪れていました。なんとトニーが無償で新たなコスチュームを作っていたのです。後にアイアンスパイダーと呼ばれるそれは、今までのコスチュームにはなかった様々な機能が高性能で搭載されています。その上トニーはピーターとMJをアベンジャーズタワーに住まわせたではありませんか。これほどの高待遇、トニーは何か企んでいるのでは? 答えはすぐに分かります。トニーはピーターを自身の右腕として雇用したいと考えていたようです。というのも、ワシントンにて政府と話し合う機会があるため着いてきて欲しいというのです。それもキャップにさえ他言しないことを条件に。ピーターはトニーを信頼し、その約束を守ります。ここでトニーはようやくピーターへ招待状を渡しました。手紙の主は超人登録法案諮問委員会です。翌朝。ピーターとトニーはワシントンにいました。ピーターはあくまでトニーのアシスタント、超人登録法案諮問委員会とやり取りするのはトニーの仕事のようです。会話の内容を聞く限り、トニーは超人登録法案の成立を少しでも長引かせたい様子。思わずピーターも口を出してしまう場面もありながら、諮問委員会の1日目は無事に終了します。ところがその帰り、なんとロシアからの刺客チタニウムマンが襲撃してきたではありませんか。狙いはトニーのようです。ピーターはスパイダーセンスでこれを検知、新コスチュームで挑みます。高性能なバトルスーツを纏う相手に一進一退の攻防を続けるスパイダーマン。新コスチュームの性能を遺憾無く発揮し、見事センサーユニットへダメージを与え撃退することに成功しました。日も沈み辺りが暗くなった頃。チタニウムマンは傷ついたバトルスーツを着たまま、空から飛来してくる人物を待っていました。同じく鋼鉄のパワードスーツ身を包んでいたその人物は、チタニウムマンへブリーフケースを渡します。中身は札束です。そしてそれを持つのは、アイアンマンではありませんか。アイアンマンがチタニウムへ金を渡し、今日の襲撃を依頼していたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20240119223749j:imageアイアンマンから金を受け取るチタニウムマン。鋼鉄の仮面の奥に隠れる真意とは?

 

〈土台〉

本作はシビルウォーに向け、3つの物語が展開されました。イルミナティの結成と超人登録法案の登場、ドクタードゥーム復活とムジョルニア墜落、超人登録法案諮問委員会。それだけに語りたいことが多くなってしまうのが本作ですが、今回は1つだけピックアップしたいと思います。イルミナティの結成も超人登録法案の登場です。それ以外の2つの物語は、イルミナティの会合があってから1日後程度の出来事。超人登録法案がイルミナティに知らされた時点が本作の中心点と見て間違いないでしょう。

そんなシーン、まず注目すべきは超人登録法案がシビルウォーよりも前から既に存在していたことでしょう。リードのパートナーであるスーザンはこれを「選挙の票稼ぎのため」であると認識していましたが、既に一般レベルでも知られているであろうシーンが散見されることから確実に市民が関心を寄せている話題の1つであったことは間違いないでしょう。つまり、超人登録法案を官僚に書き起こさせるだけの熱量が既に土台となって存在していたのです。

ではそんな土台が形成され始めたのはいつか? 本作はそこにも言及されています。イルミナティが結成された時です。クリー/スクラルウォーでは、かの初代キャプテンマーベルがクリー人であること理由に糾弾、アベンジャーズにさえ大きく影響を与えてしまうという一幕がありました。当時でもキャプテンマーベルは栄光のヒーローとして名高いにも関わらず、です。栄光のヒーローさえ排斥しようとした動きは、その経歴に関係なく1つの要素で市民はヒーローを敵とみなしてしまうことの証左といえるでしょう。この時から市民はヒーローを称えながら、一方で恐れていたことが見て取れます。

ヒーローを驚異として迎えてきたマーベルユニバース。しかし同時に脅威として常に恐れ続けてきた歴史がありました。ヒーローとヴィラン、超人同士の戦いで被害を被るのは当人同士だけではありません。時に死者をも出しながら巻き込まれる人々の心を思えば、無条件でヒーローを礼賛することが難しいのは確かでしょう。また、タクシードライバーも顔と名前を登録する時代にマスクで顔を隠し匿名でヴィランと戦うヒーローは時代錯誤的であった面も否めません。あくまで匿名で悪人を倒し人助けをするには、ヒーローは社会的地位を与えられすぎていました。超人登録法案は生まれるべくして生まれたものなのです。