アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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ULTIMATE AVENGERS 2 CRIME & PUNISHMENT

フューリー主導でアベンジャーズが結成された前回。アルティメット版アベンジャーズがどのようなものか期待を寄せていた方も多いでしょう。今作はそんなアルティメット版アベンジャーズの方向性を確たるものにした物語が展開されます。アベンジャーズは正義の代行者か、それともフューリーの私兵か? 私たちは今1度「アベンジ」の意味を考えなくてはならないのかもしれません。
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前回はこちらelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

それは地獄からやってきた。20年前の報いを受けさせるために、頭蓋を燃やし魂を捧げ這い戻ってきたのだ。獄炎を引っさげ駆け抜けるバイクが狙う標的はただ1人。しかしそこへアベンジャーズが立ちはだかる!

 

〈悪魔の報い〉

フランク・キャッスルは悪人にとって検察官であり裁判長であり、死刑執行人でした。並外れた猟犬のように悪の臭いを正確に嗅ぎ分け、死を持って己の罪を償わせます。手段を選ばない数々の「処刑」は、アメリカ屈指の殺人鬼として名を馳せる程でした。立ち去った後に残るのは血の海だけ。それがパニッシャーです。タイロン・キャッシュは自由を謳歌していました。南米マフィアを潰してはその「所有物」を強奪し、欲しいものは全て我がものとしてきました。かつてはバナー博士に師事される天才科学者でありながら、今や初代ハルクとさえ言われる暴君。タイロン・キャッシュは自由を謳歌していました。紛うことなき悪人として知られる2人は、半ば強制的にニック・フューリーの元へ集められます。待っていたのはキャップを除くアベンジャーズの面々です。フューリーの目的は、2人を新生アベンジャーズのメンバーに加えることでした。アルティメッツと違いフューリーの指揮下となったアベンジャーズは、超人による特殊作戦実行部隊という捉え方をしても良いでしょう。当然時には汚れ仕事を担当せねばならない場合もあります。そこでフューリーはキャップをメンバーから外し、2人をメンバーに招いたのです。拒否すると脳に埋め込まれた電子チップが電流を流すおまけ付き。断る権利などないのです。パニッシャーもタイロンも強制的にアベンジャーズへ参加することとなりました。フューリーから早速命令が下されます。最初の命令は。地獄の精霊ゴーストライダーの討伐です。
f:id:ELEKINGPIT:20231020081357j:imageフューリーが招集した新生アベンジャーズ。汚れ仕事さえ請け負う最強の超人部隊が始動する。

 

燃え残った瓦礫から見つかったのは奇妙な死体でした。ゴーストライダーの行方を追うため、直近の変死事件の現場へ向かったアベンジャーズ。そこには、石化した遺体がありました。ゴーストライダーが何らかの能力を使ったのでしょう。これまでゴーストライダーが殺してきた人物は、かつて同じギャングチームに所属していたという共通点があります。ここから次の標的をある程度絞ることは出来るでしょう。アベンジャーズは次なるターゲットを空路へ避難させ、空港でゴーストライダーを待ち受けることに。離陸する前に襲撃される可能性もあるでしょう。飛行機が頭上を通りすぎる瞬間まで油断は禁物です。滑走路に緊張が走ったその時。現れました。ゴーストライダーです。骨を剥き出しにした頭蓋は松明のように燃え上がり、炎を引き連れ猛スピードでバイクが駆け抜けます。驚くべきはその後です。なんとバイクに乗ったまま離陸した飛行機を襲撃、アベンジャーズの目の前でターゲットを殺して見せたのでした。せめてここで捕えるしかありません。アベンジャーズの攻撃が始まります。ところがタイロンのハイパワーもパニッシャーのテクニックもゴーストライダーには通じません。頭蓋同様に燃え盛る鎖を武器に、アベンジャーズはあっという間に倒されてしまいました。一方フューリーはゴーストライダーの正体について調査していました。トニーの兄グレゴリーが生み出した、プロフェッサーXとスパイダーマンの合成クローン「スパイダー」の協力を得て、真相に迫ります。20年前、ジョニー・ブレイズはパートナーと共に全米1周の旅に出ていました。旅の途中、2人はバイカーの集団と親しくなります。しかしバイカーらは最初から2人の命を狙っていました。富と権力を得るために、悪魔へ魂を捧げる儀式に2人を生贄として使ったのです。魂を地獄へ落とされたジョニーは、何よりもパートナーの命を弄んだことへ怒りを爆発させます。ジョニーは悪魔王メフィストと取引をしました。あの日や自分の記憶を失ってもいいから、死んだパートナーを蘇らせること。そしてあのバイカーらへ復讐する力を与えること。対価はジョニーの魂です。地獄の試練は20年続きました。パートナーは無事に復活し、ジョニーは獄炎を纏う復讐鬼と化していました。あの時のバイカーも残すところあと1人。最後の1人は、バイカーのリーダーにして、今やホワイトハウスて胡座をかくロバート・ブラックソーン副大統領です。
f:id:ELEKINGPIT:20231021224503j:image地獄より舞い戻ったジョニー・ブレイズ。憎悪を薪に燃えたぎる炎は、20年前から微塵も衰えていない。

 

ブラックソーンはホワイトハウスの1室で神に祈っていました。ゴーストライダーの狙いは間違いなく自分だと分かっているのです。アベンジャーズに護衛させているとはいえ、そのアベンジャーズも倒した相手。護衛などないに等しいでしょう。しかし富や権力と引き換えに悪魔と取引したブラックソーンに神の慈悲など有り得ません。ブラックソーンは再び悪魔へ魂を売る覚悟を決めていました。悪魔王メフィストを呼び出したブラックソーンは取引をもちかけます。自らの魂を捧げる代わりに地獄の炎を纏うもう1人のゴーストライダーとなったのです。アベンジャーズを振り切り、ジョニーとの戦いが始まりました。復讐のために全てを捧げたジョニー。富と権力のために魂をも失ったブラックソーン。両者の力は無情なほど互角でした。与えられた力は同程度のものでしょう。ならば両者の勝敗を分けるのは、残された人間の力であり、覚悟の差なのでしょう。ジョニーは鎖でブラックソーンを捕らえると、教会へ引きずり込みました。教会は悪魔の力が抑えられる神聖な場所。ゴーストライダーの力も弱まってしまうのです。2人のゴーストライダーは、人間の姿に戻りそれでも戦いを続けます。
f:id:ELEKINGPIT:20231022011034j:image戦場を教会に移した2人のゴーストライダー。戦いの果ては肉体と覚悟の差で決まる。

 

〈正義の復讐〉

「Avenge」という言葉は、正当な仕返しをする、正義の復讐をするなどの意味を持ちます。正史世界のアベンジャーズはそれが転じて「正義を行う」という意味で名付けられたのでしょう。今作ではアルティメット版アベンジャーズが再編され、よりフューリーの私兵という意味合いが強くなっていました。そんなチームに「アベンジャーズ」という名前が与えられたのは、まるでアルティメットユニバースの歪さを表しているように思えてしまいます。アルティメットユニバース最大の事件、アルティメイタムは世界の歪さが産んだ結果の悲劇という話は以前させていただきました。しかしこの歪さはニューヨークが津波に呑まれても残っていたようです。

「正義」という言葉を背負うアベンジャーズ。では、今作のアベンジャーズは誰のための正義で動いていたのでしょうか? 正史世界のアベンジャーズは弱者のため、万人の平穏のために戦ってきました。市民を守るためなら国家さえ相手にすることだってあるでしょう。正義の代行者として第1線で常に立ち続け、誰もが憧れるヒーローチームとなりました。一方今作のアベンジャーズは、悪を悪と指摘できないチームとして描かれていました。そもそもパニッシャーやタイロンといった改心していない殺人鬼をメンバーに加えていますし、副大統領が元バイカーで、その所業を知っていながら一切指摘する描写はありません。本家アベンジャーズではありえないでしょう。ではアルティメット版アベンジャーズの「正義」とは誰にとっての正義なのでしょうか? フューリーは私欲のためにアベンジャーズへ命ずることはないでしょう。しかしこの疑問が浮かんで離れないヒーローチームの時点で、それは「歪み」であり「歪さ」の象徴に他なりません。このチームが直接のきっかけになるかは分かりませんが、未だ世界に残るこの「歪さ」を解決せねば、再び争いや悲劇が起こることは必至。アルティメットユニバースはどこへ向かっていくのでしょうか。その行く末を今後も見守りたいです。