アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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STAR WARS vol5 YODA'S SECRET WAR

最強のストームトルーパーを退けた前回。しかしさらなる試練がルークらを襲います。そして今作ではマスターヨーダの知られざる過去が明かされました。EP5に繋がる要素も散りばめながら、自作にして2度目のクロスオーバー作品、スクリーミング・シタデルへの布石を描くプロット力は見事と言わざるを得ません。
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前回はこちらelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

反乱軍に芽生えた希望を絶やすため、帝国軍は無慈悲な鉄槌を容赦なく振り下ろす。スカー部隊がC3POを拉致したのだ。

40年前、ヨーダはフォースを宿した惑星に現れる。そこは子どもが武器を取り親が逃げる戦争が続けられていた。

オビワンの日記から40年前の真実を知ったルーク。紡がれる歴史と事実の果てに見つけたものとは?

 

〈40年前の教え〉

C3POの拉致は、ルークにとって衝撃的なものでした。前回退けたスカー部隊の仕業でしょう。敵の狡猾さが上回っていたのか、それとも自身の油断が招いたのか。ともかく反省している暇はありません。C3PO救出のために無駄にできる時間はないのです。ところがこれを予想外の人物が遮ります。反乱軍、そしてレイア姫ハン・ソロです。確かに2人にとってもC3POは親しく救出したい気持ちはありました。しかしそれ以上に、ドロイド1体のために戦力を分け、また犠牲者が出るリスクを負うわけにはいかないのです。スカー部隊ともう1度戦うなら強奪したスターデストロイヤーをもちいるのは必至。それをドロイド1体のために失うなど考えられません。ルークらには待機が厳命されていました。レイアもソロもこれを受け入れていましたが、誰よりもR2D2には耐え難い命令でした。C3POとは長年共に居た仲。アナキンに連れられていた20年分のメモリはC3POから消去されていますが、R2は今でも主記憶装置の奥へ残しているのです。そんな相棒のようなドロイドの死を見過ごせと言われ、誰が受け入れられるのでしょうか? R2はスターファイターを駆け孤独な救出作戦を始めました。ドロイドの逸脱行為にルークも黙っているわけにはいきません。いいえ、これでC3PO救出の口実が出来たと言った方が正確でしょうか。ルークはR2を追いかける形で出撃します。これは試練です。そう直感していたルークは、助けを求めるようにオビワンの残した日記をめくります。そこでルークが見つけたのは驚くべき記述です。そこには伝説のジェダイ、マスターヨーダの戦いが記されていました。
f:id:ELEKINGPIT:20231030183520j:imageオビワンの日記を手に取るルーク。そこに記されていたのは、40年前の戦いだった。

 

40年前、グランド・マスターと呼ばれ称えられていた最強のジェダイ、マスターヨーダはフォース感応者の子どもをコルサントへ連れていく活動を行っていました。ある日訪れたのは奇妙な惑星です。そこでは生きたフォースを宿した山が鎮座しているのです。しかしそれよりも目を引くのが、武器を手に取りこちらへ刃を向ける大勢の子どもたち。フォースでなだめて話を聞くと、どうやらこの惑星では大人がいなくなった代わりに子ども達同士で戦争を行っているようです。フォースを宿す大山に眠るとされている、「フォースの心臓」をめぐって。ヨーダが注目したのは子ども達が操るフォースでした。経験深いヨーダでさえ見たことの無い術は、ヨーダ以上に生きるフォースを宿した石の欠片を操ってみせたのでした。別勢力から奇襲を受けたヨーダはこのフォース操作術に苦戦、なんと捕らえられてしまいます。ヨーダは捕虜として山に眠るフォースの心臓部を取ってくるよう命令されました。未だ存在するかも分からないフォースの心臓部。それを探してこいと言うのですから、事実上の死刑宣告に他なりません。ヨーダはこれを了承しました。ヨーダは単なる小さな老人ではありません。力強く杖をつき山頂目指して歩き始めました。どれほど時間が経ったのでしょうか。無傷で山頂まで辿り着くと、付近には大穴を開けた洞窟がありました。中に居たのは、なんと戦争をしている子どもたちの親ではありませんか。大人たちは口々に子どもたちを「獰猛な獣」と称します。大人たちは子どもたちの戦争を恐れ避難していたのです。山には食料もありました。確かにここで暮らす分には問題ないでしょう。ヨーダは大人たちを背にフォースの心臓部探しを再開します。フォースに導かれるまま、アリの巣のように細く複雑な洞窟を抜けるヨーダジェダイグランド・マスターともなると、強いフォースの導きさえあれば発見までそう時間はかかりませんでした。巨大なフォースの心臓は、山の中枢にあったのです。
f:id:ELEKINGPIT:20231030185703j:image洞窟の奥底で見つけたフォースの心臓部。これを巡り子どもたちは傷つき殺しあっていたのだ。

 

〈大人と子ども〉

本作は様々な観点から「大人と子ども」という観点に注目しているように思えました。私たちは基本的に子どもより大人の方が賢いものだと考えています。当然大人には子ども以上に経験を積み、経験から様々なことを思案できます。しかし子ども時代の私たちは何も考えず行動していたでしょうか? その結果を招いたのが「バカなこと」であっても、私たちは一切の思考を停止して常に動き回っていたでしょうか?

今作では2度「子ども」が現れました。戦争をする子どもたち。そして待機命令を無視して飛び出したR2です。戦争が愚かなことだというのは言うまでもないでしょう。それでも子どもたちは武器を手に取り、互いの未来を捨ててでも殺し合うのです。そして大人たちはそんな子どもを恐れ山奥へ引きこもっています。大人たちは賢いのでしょう。確かに戦火のない山奥へ避難するならば犠牲も被害も有り得ません。C3PO救出をしないと宣言した反乱軍は賢いのでしょう。手に入れたスターデストロイヤーも兵士もドロイドのために犠牲にする必要はありません。しかし私たちは、それが本当の正解であるかどうかを考えねばなりません。犠牲を出さないために子どもの未来を差し出していいのか? 犠牲を出さないために友を見殺しにするのか? 大人という生き物は子どもよりかしこいものです。しかし子どもの行動は決して思案のない短絡的なものではありません。ならばせめて、自分が子ども時代に培った経験で子どもの手を取ることが大人の役割ではないでしょうか?