アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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STAR WARS:DOCTOR APHRA vol1 APHRA

マーベルが手がけるスターウォーズ。EP4とEP5の間を描く物語は、ルークとベイダーの初戦闘など目を引くものばかりでした。中でもオリジナルキャラクターであるドクターアフラの存在は異彩を放っています。考古学者で宇宙海賊という異色の経歴を持ち、ベイダーが秘密裏に行使した部下として活動。ルーク捜索に大きく貢献するなど印象的な活躍が目立ちました。今作はそんなドクターアフラを描いたシリーズです。考古学者かつ宇宙海賊であるドクターアフラの魅力を全面的に引き出した今作は、まるでインディ・ジョーンズを彷彿とさせる興奮と冒険に満ちたストーリーとなりました。
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〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

チャンスの時がやってきた! ベイダーの秘密を握りながら皇帝に味方したドクターアフラは、命からがら帝国軍から逃げ出した。

一攫千金を目論むアフラに舞い込んだ話は、ある伝説の秘宝。それは永遠の命をもたらすものだった。

目的地は歴史を変えた新たな古戦場、そして伝説の住む居城。しかし帝国の手は銀河の端々まで容赦なく広がっていた……!

 

〈1000年前の秘宝〉

ベイダーの秘密を皇帝に漏らし、その怒りから処刑されたと思われたドクターアフラ。しかし持ち前の機転と運と土壇場の賭けの強さで生還していました。帝国軍の追跡がないことから、帝国はドクターアフラが死亡したと考えているに違いありません。これは好機でしょう。すっかり膨らんだ借金を返すためにも一攫千金を狙うしかありません。考古学者という立場を活かし、トレジャーハンターから財宝を奪うことで大金を獲得しようとするアフラ。しかし物事はそう上手くいきません。なんとアフラが考古学者であるという資格が剥奪されていたのです。学者資格の無いものが古代の財宝を売却しても、学術的価値が証明出来ないとして受け取れる金額は大幅に減ってしまいます。これでは一攫千金どころか借金を返すことさえ出来ません。途方に暮れるアフラ。何か身入りのいい話はないかと考えていた矢先でした。アフラは聞き覚えのある声に話しかけられます。考古学者で実父のコリンです。音信不通で行方知らずだったアフラを偶然見つけたコリン自身も驚いている様子。良い機会だとコリンはアフラへ仕事の手伝いをするよう依頼します。長年追い続けた古代の伝説、オルドゥー・アスペクツです。
f:id:ELEKINGPIT:20231115074752j:image再会するコリンとアフラ。しかしその口から出た言葉は、アフラへ不安を呼ぶものだった。

 

オルドゥー・アスペクツとは、かつてフォースを使い戦った集団の名前です。確かなことはこれくらいしかわかっておらず、シスの暗黒卿と戦い多くの命を守ったという逸話や、逆にジェダイの騎士と戦い多くのパダワンを斬り殺したなんて話も伝わっています。そんな組織の長、ルァは自身の居城で「永遠」を手に入れたという伝説があり、コリンはこれをずっと探し続けていたのです。アフラの母が亡くなった時でさえこの伝説を探しに行っており、以来アフラは父へ大きく失望していました。そして今日に至り久しぶりの再会にも関わらずまだオルドゥー・アスペクツの名を口に出す始末。アフラの失望は広がるばかりです。アフラはオルドゥー・アスペクツの長、ルァの遺した「永遠の秘宝」探しに協力することにしました。コリンは永遠の秘宝の存在を証明するため、アフラはそんな父を否定するために永遠の秘宝を求めるのです。最初の目的地はヤヴィン4、かつて反乱軍と帝国軍がデス・スターを巡って攻防を繰り広げた新たな古戦場です。ヤヴィン4に到着した一行。古代遺跡のピラミッドはすぐに見つかりましたが、そこには帝国軍の姿もありました。帝国軍は放棄された反乱軍の基地から少しでも手がかりを得ようと血眼になっていたのです。コリンはそんな帝国軍を気にする素振りも見せず、アフラの手引きで何とか見つからず遺跡の中へ侵入しました。遺跡はルァの居城を示す地図のような役割を持っているようで、コリンは小躍りしそうな勢いで早速準備に取り掛かります。カイバークリスタルを所定の位置にセットするのです。コリンの予想通り、神秘の現象が起きました。ピラミッドの頂上から強烈な眩い光が発されます。この光が指す先へルァの居城がある。伝説の証明は少しづつ、確実に成されつつありました。
f:id:ELEKINGPIT:20231115175439j:image次々と放たれる光たち。この先にルァの居城があるのだ。

 

帝国軍も当然この光に気付き、ピラミッドへ数人のトルーパーが送り込まれます。特にアフラは帝国軍に生存がバレては命がいくつあっても足りなくなるでしょう。時にトルーパーを殴り倒してでも強引に突破する一行。あっという間に船へ乗り込むとハイパースペースジャンプで一気にルァの居城まで駆け抜けます。邪魔者はいなくなった。銀河の果て、ルァの居城を見つけたコリンのテンションは上がるばかりです。小惑星に建てられた城は、長年放置されたからか不気味な雰囲気が漂っていました。辺りに散らばるのはジェダイと思わしき白骨死体たち。そして帝国軍です。振り切ったと思われた帝国軍は猛追の果て、アフラ達へブラスターを構えていました。城の入口が塞がれた以上、奥へ進むしか逃げ道はありません。追い詰められたように最奥部へ進むコリンとアフラ。そこにはコリンの調査通り城の核となる部分がありました。ここに永遠の秘宝を収めたコンピュータが備えられているのです。しかし皮肉にも傍らには白骨死体が。ルァの遺体でしょう。伝説では永遠を手に入れたはずのルァが白骨死体となり転がっているのです。やはり伝説は間違っていたのでしょうか? コリンは懐からカイバークリスタルを取り出し、コンピュータを起動します。部屋はエメラルド色に輝き始め、永遠の秘宝と呼ばれたルァの遺産が解き放たれようとしていました。現れたのは、部屋と同じようなエメラルド色の眼光を持つドロイドです。ドロイドは自らをルァ、永遠のルァと名乗りました。永遠の秘宝の正体は魂や意識を肉体からドロイドに乗り移らせる装置のことでした。
f:id:ELEKINGPIT:20231116074454j:image2人の前に現れた「永遠のルァ」。伝説の宝の正体はドロイドだった。

 

唖然とするアフラとコリン。伝説は肝心なところだけ間違っていたのです。では何故そもそもルァの遺産が現代まで語り継がれるようになったのでしょうか? それはルァの語り始めた過去に秘密がありました。ルァはフォースユーザーでした。秘宝のありかを紐解く鍵がカイバークリスタルであったことがその証明でしょう。しかしルァはジェダイの騎士でもシスの暗黒卿でもありません。ある時ジェダイから離れたルァたちオルドゥー・アスペクツは、以来ジェダイと紛争を繰り広げていました。奮戦するオルドゥー・アスペクツでしたが、じわじわと追い詰められやがて敗北することは目に見えていたことでしょう。わずかな戦力を残して壊滅寸前まで追い詰められたオルドゥー・アスペクツはジェダイと和平を結ぶしかありませんでした。こうして紛争は解決しましたが、オルドゥー・アスペクツの長であるルァは結果に納得していません。そこで意識をドロイドへ移す秘密装置を開発、再起の機会をじっと待ちます。ジェダイが油断した隙に蘇り打倒しようと考えたのです。「永遠の秘宝」と呼ばれた伝説はそんなルァを復活させるための伝承でした。早速野望を成就させようと考えるルァ。多少時間は経ったようですが、だからこそジェダイを打倒できるはず。あの紛争から何年経ったのか? ルァの問いかけにアフラは答えます。ルァの語りは恐らく共和国が樹立する以前の話、どれだけ軽く見積もっても1000年は経っているでしょう。その上ジェダイは20年ほど前に帝国が樹立する時に滅ぼされています。野望は誰かが横取りし、戦うべき相手はもういない。ルァは叫びます。理由もなくただ暴れるしかルァにできるとはありませんでした。この場にいる全員さえ構うことなく、ルァはただ溜め込んだ力を解放します。
f:id:ELEKINGPIT:20231116081346j:image理由もなく暴れ始めるルァ。機械の体でも1000年が変えた現実を受け入れることは出来なかった。

 

〈財宝の果て〉

1000年間眠っていた伝説の秘宝を見つけ出したアフラ。その正体は金銭的な価値があるものでも、コリンが求めていた永遠を証明するものでもありませんでした。そしてアフラは「財宝より大切なものを見つけた」……という展開もありませんでした。確かに父とのわだかまりは少しでも解消しましたが、アフラはそれに重きを置いていません。ならば見つけた財宝の果て、アフラが見つけたものとは何なのでしょうか?

冒険譚の最後に教訓めいたものを探し出すのは物語を陳腐化させてしまうかもしれませんが、それでもアフラの冒険が無駄足だったとは考えられません。アフラが冒険で見つけだしたものは2つあると考えています。1つは財宝です。永遠の秘宝は金銭的に価値がありませんでしたが、ルァの居城に散らばっていたエメラルドに光るクリスタルは違うでしょう。もちろんそれも「永遠のルァ」に関連する危険なアイテム。しかし高額な金銭に変えられるものに違いはありません。アフラはこの冒険で「ひと山当てた」のです。ではもう1つは何か? 私は「自由」だと考えています。本シリーズを描いているのはダース・ベイダーシリーズ(2015)を担当していたキーロン・ギレン氏です。ギレン氏のベイダーシリーズで初登場したアフラは、ベイダーの思惑に巻き込まれ命の危険に晒され挙句捨てられた末路を辿ります。そこに自由があったとは思えません。しかし本作のアフラには自由がありました。冒険そのものも、冒険をするかどうかも、財宝を盗んで換金することも全てアフラが自ら判断し次の指針へ進んだのです。振り回されているようにも見えるアフラですが、少なくとも今作ではいくらでも違う道を歩めたはず。ベイダーシリーズの最後に「どちらに着くか」を決めたアフラ。その後の冒険は全て自分が決めるという自由がありました。