アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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X-MEN BATTLE OF THE ATOM 後編

4つのX-Menが入り乱れるクロスオーバー、X-MEN BATTLE OF THE ATOMはいよいよクライマックスへ突入です。多様なX-Menが現れる今作は、それまで半世紀近く培ってきた数々の歴史が為せるストーリーと言えるでしょう。そんな今作が果てにたどり着いたのは、半世紀前の原点でした。
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前編はこちらelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

元の時代へ帰ることを決意した過去のX-Men。ところがこれを阻止するために現れたのは、「未来のX-Men」だった。明かされる未来の災厄。全てを解決するには、分裂した現代のX-Menが協力するしかない。

 

〈因縁の対決〉

ジーンの同意により、元の時代へ帰ることが決まった過去のX-Men。未来のX-Menに学園まで連れられ、着々と準備が進められます。ここでエグゼビア3世が過去のアイスマン、ビーストの不在に気付きました。外へ出ないよう言いつけていたはずなのに、あっさりとそれを許したミュータントらへエグゼビア3世は激怒します。まるで癇癪を起こしたかのように怒りを露わにするエグゼビア3世は、なんと現代のX-Menへ攻撃さえするではありませんか。高潔な精神を微塵も感じられない行動に、ウルヴァリンらは不信感を抱きます。未来からやってきたというX-Menは本当に「X-Men」なのか? そんな問いに答えるかのようにウルヴァリンの腹が貫かれます。武器は鉤爪。犯人は未来のキティ・プライドと思われていた、ミスティークとウルヴァリンの子どもレイズです。未来から来たX-Menは「X-Men」ではなかった。少なくともそう判断せざるを得ない状況が続きます。では、自称「未来のX-Men」は何者なのか? 同刻。現代のサイクロプスが率いるX-Menはある人物と接触していました。過去のビースト、アイスマンと共に未来へ行き「災厄」の正体を探っていたマジックが現代へ帰還したのです。本物の「未来のX-Men」を引き連れて。真の未来X-Men曰く、X-Menを名乗りこの時代へやってきたのは「ブラザーフッド」、かつて何度も戦った因縁の宿敵の名を冠するチームです。
f:id:ELEKINGPIT:20231123214216j:imageマジックが連れてきた本物の「未来のX-Men」。明かされたのは、未来にまで続く因縁だった。

 

未来のX-Menだと思っていたチームはブラザーフッドだった。その場にいた全員が戦慄した事実でした。すぐさまブラザーフッドのいるジーン・グレイ学園へと向かいます。サイクロプスらが学園に到着した時には、既にウルヴァリン率いるX-Menは制圧されていました。なんとエグゼビア3世は突然変異した「ミュータントの島」クラコアをも操っていたのです。過去のビースト、アイスマンも囚われ絶体絶命のX-Men。分裂状態のX-Menがそれぞれ戦っても勝ち目はないでしょう。各々の力を集結させ、未来のX-Menの手を借り、再び1つのX-Menとして立ち上がるしかありません。迷いはありませんでした。まるでそうすることが当たり前のようにX-Menらは手を取り合います。最初から1つのチームであったかのように、分裂していたとは思えないチームワークがブラザーフッドへ襲い掛かります。抜群のチームワークかつ多勢に無勢を強いられるブラザーフッド。過去のX-Menも全員解放され、敗色濃厚であることは隠しようもありません。逆転の一手を、ブラザーフッドは外に求めました。SHIELDです。騒ぎを聞き付けたSHIELDがやってきたのです。エグゼビア3世とゾーンはテレパスでヘリキャリアを操作、ミサイルの雨を降らせます。更にこれでもかとセンチネルの大軍を起動させ圧倒的な火力でX-Menを苦しめました。ミサイルを止めセンチネルと戦う。多勢に無勢を強いられたのはX-Menの方でした。逆転に次ぐ逆転、何度も入れ替わる形勢。エグゼビア3世が倒れても止まらないゾーンに立ち向かったのは、過去から来たX-Menでした。勝負の行方は若き初代X-Menに託されたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20231125083736j:imageゾーンに立ち向かう過去のX-Men。何年経っても変わらぬ勇気の原点がここにあった。

 

〈未来まで続くもの〉

本作のクライマックスでは、過去から未来まで多くのX-Menが協力してブラザーフッドと戦う王道の展開がなされました。その魂は結成当時から変わらず、また歪んでしまったブラザーフッドとの対比もあり、快感さえ覚えてしまいそうなほどストレートに突き進んだと言えるでしょう。しかし結成以来未来まで続くものはそれだけではありませんでした。X-Menのそもそもの結成理由は、ミュータントと人類の平和的共存というエグゼビア教授の夢から始まったもの。ミュータント差別を無くし平和的に人類とミュータントが歩み寄ることを願って結成されたチームでした。未来世界ではダズラーが大統領に選ばれ、その理想は叶えられたも同然……かに思われました。しかし大統領就任式で突如砲火に見舞われ、ダズラー含む多くの人々が惨殺。未来でも色濃く残るミュータント差別が描かれます。また、本作最終決戦の際に動員された大量の新型センチネルはミュータントへの不信感を露骨に表現したものと言えるでしょう。過去から未来に渡ってもミュータントへの差別は消えていないのです。未来まで続くミュータント差別とX-Men。しかしダズラーが大統領に選ばれるシーンは少しづつ人類との平和的共存がなされている証拠でもあります。差別との戦いは長く困難です。すぐに結果が出るわけでも、また戦歴や勲章が与えられるものでもありません。世代が1つ変わる程度では消えない差別感情の深刻さを目の当たりにした本作。しかしX-Menが歩んだ道は決して間違っていなかった。小さくも確実な光とそれを覆う大きな影を本作で描いたのでした。