アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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CAPTAIN AMERICA RED MENACE

キャプテン・アメリカと言えば? という問いには多くの答えが出てくることでしょう。しかし必ずといっていいほどその名が出てくるのがバッキーです。キャプテン・アメリカのサイドキックでありながら、戦時中に死亡し以来何十年も復活劇が描かれなかったバッキー。タブーになりつつあったその復活を描いたのが、Winter soldierです。今作はその続編で、後の展開の布石までを行った傑作です。再び姿を消したバッキーに、キャップはどのように再会したのか? Winter soldierを読んでも読まなくても楽しめる構成となっています。

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日本語版関連作

 

〈あらすじ〉

再び失踪したバッキーの行方を追い続けるキャップ。一方、レッドスカルらハイドラの残党、クロスボーンとシンはレッドスカル復活に向け動き始めていた。それらが交わる衝突地点には恐るべき脅威が隠されていた。

 

〈再会〉

コズミックキューブを砕き、自らの姿をくらましたバッキー。最後に消えてしまいたいと願い、文字通りキャップらの目の前から消えたバッキー。以来、キャップはその行方をずっと追いかけていました。あの時バッキーは死を願ったのか? それともどこかで生きているのか? ウィンターソルジャーの洗脳が解け、生きていたとしても苦悩しているに違いありません。だからこそキャップは再会する必要があると考えたのです。聞き込みなど地道な調査を続けるうちに、ある証言にたどり着きました。それはつい数日前のこと、巨大な蜘蛛型アンドロイドと戦う人影を見たというのです。左腕には金属のような光があり、聞けば聞くほどバッキーの特徴と一致するではありませんか。バッキーは生きていた。あの時、コズミックキューブを砕いたバッキーは死を願っていたわけではなかったのです。舞い上がるほど喜ぶと同時に安堵するキャップ。どうやら人知れず影に隠れヒーロー活動をしていたよう。ならばいずれ再会することもあるかもしれません。それでもキャップはバッキーを探し続けようとします。そんな時、キャップの耳にある知らせが入ります。クロナス社がイギリスで不穏な動きを見せているというのです。クロナス社の社長で元ソ連将校のルーキンは、コズミックキューブを手に入れウィンターソルジャーを操っていました。そのルーキンが不穏な動きを見せたのですから、警戒しなくてはなりません。キャップはクロナス社が何かを密輸しようとしていることを聞きつけ、ユニオンジャックスピットファイアと共に調査を始めます。すると突如、マスターマンのコスチュームをまとった人物が複数現れたではありませんか。マスターレースと呼ばれるその集団はキャップらの実力と互角。しかし経験の差で少しずつ追い詰めることに成功します。ここでマスターレースはセットした時限爆弾を起動、ヒーロー諸共海に沈めようとしました。起動してからわずか10秒後、ヒーローたちにできることはほとんどありません。密輸されたものが何なのかも謎のまま、脱出したキャップらは沈みゆく船を見守ることかできませんでした。
f:id:ELEKINGPIT:20240116223749j:image爆破する船から間一髪で脱出するヒーローたち。ルーキンの目論見と目的は海の底へ沈んだ。

 

ルーキンは、奥底から聞こえる声にジワジワと侵食されていました。ウィンターソルジャーに命じてレッドスカルを射殺したルーキン。しかしレッドスカルは死の直前、自身が手にしていたコズミックキューブの力を使ってその精神をルーキンに移していたのです。ルーキンは人格が2つあるような状態となり、やがてジワジワと侵食され、今やルーキンはレッドスカルの操り人形のような状態となっていました。クロスボーンズやシンとの合流も間近の中、レッドスカルはマスターレースが敗北し船諸共爆破したと報せを受けます。計画通り。恐らくキャップはクロナス社を追い、イギリスまで来るでしょう。まんまと誘い出されたキャップをあの兵器で叩いてしまえば長きに渡る戦いも勝利で終わるというものです。レッドスカルの思惑通り、キャップはロンドンのクロナス本社近くまで来ていました。その日クロナス社は、パーティを開いていました。パーティ当日ならばルーキンは確実にいるはず。キャップはそこを狙ったのです。ところがそれは敵もお見通し。再びマスターレースの襲撃が始まり、クロナス社へたどり着く前に足止めを食らってしまいます。その上、マスターレースは前座に過ぎませんでした。レッドスカルは密かに微笑みます。襲撃したマスターレースが退けられたと同時に、大量破壊用に生み出された秘密兵器、スリーパーを起動したのです。地面を割って現れたスリーパー。その力はキャップさえも大きく上回っていました。伝説の兵士の持つ経験でも埋められない圧倒的な差。しかし伝説は1つではありません。キャップを援護したのは、見覚えのあるシルエットでした。バッキーです。半世紀ぶりに伝説のコンビが共闘した瞬間でした。
f:id:ELEKINGPIT:20240116230039j:imageスリーパーを前に共闘する伝説の2人。しかしバッキーはキャップの眼差しを未だに正面から受け止められなかった。

 

事件の後、スリーパーをも破壊され完全敗北したと思われたレッドスカル。しかしその表情は自身に満ちていました。そして堂々と宣言します。ハイドラの復活を。レッドスカルは、今晩は前哨戦でしかないと考えているようです。今日の敗北はやがて勝利するためのきっかけに過ぎないと。完全勝利まであと僅か。ハイドラの復活は、まるで勝利の前祝いのように見えました。一方クロナス社は大きなダメージを受けていました。傍から見ればキャップの行動はクロナス社を襲撃したようにさえ思われるでしょう。今や世界的企業の1つとなったクロナス社でこのような被害があれば。嫌でもメディアの注目を浴びることは間違いありません。これがルーキンの、レッドスカルの目的だったのかもしれません。未だ生々しく傷跡が残る本社ビル前で、ルーキンは会見を行っていました。世界的企業のトップの言葉の数々は、キャップを大々的に非難するものばかりでした。その是非はともかく、世間の注目を集めたことは間違いありません。この会見で、ルーキンの言葉が1面で扱われたらなお良いでしょう。ルーキンはキャップを非難し、宣言します。超人登録法に賛成することを。
f:id:ELEKINGPIT:20240116230850j:imageメディアの前で超人登録法賛成を表明するルーキン。世界的企業CEOの表明は、アメリカでも取り上げられていた。

 

〈救世主〉

バッキーと半世紀ぶりに共闘したことが描かれる本作。全体を通して見ると。バッキーはルーキンを殺すために影で動いており、キャップはその後を追っていた形になります。それほど2人は追い詰められていたのでしょう。大戦時代、キャップと共に幾多の戦場を駆け抜けてきたバッキー。しかしその心は間違いなく悪を憎む正義の心があったはず。だからこそ暗殺者に仕立て上げられたことに苦悩し、ルーキンを殺すという手段しか考えられなくなったのでしょう。悪を持って悪を制そうとしたのです。一方キャップは、バッキーの行方を追い続け、その生存に大きく喜んでいました。地獄の戦争を共に生きただけでは説明できないほど強固な絆が、キャップの中で半世紀以上生き続けていた証拠です。そして未だに目の前でバッキーを失った(と思われた)ことをフラッシュバックし後悔していたのでした。現代で孤独に苛まれる伝説の兵士は、バッキーの生存を喜ぶと同時にこの孤独を共有できる人物との再会に安堵していたのでしょう。それほどキャップは孤独に追い詰められていたとも考えられます。本作はバッキー、キャップそれぞれの視点で読むと見方が変わってくる作品です。しかし2人にとっての救世主は、どの視点でも明確。ピースの多くは揃いました。伝説のコンビが完全復活するまで、順調に進めばあと僅かだったのでしょう。ヒーロー社会を真っ二つにしたあの内戦がなければ……。