アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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CAPTAIN AMERICA CIVIL WAR

シビルウォーの主役といえば、アイアンマンとキャプテン・アメリカでしょう。しかしキャプテン・アメリカ誌のタイインは驚くほどキャップの影が薄いように思えます。それもそのはず。本作はシビルウォーの後に繋がる大事件へ向けた、言わば嵐の前の静けさなのです。
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日本語版関連作

シビル・ウォー (MARVEL)

シビル・ウォー (MARVEL)

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今回は紙の本から画像を引用しております。見えにくいなどありましたらコメントいただけると嬉しいです。

 

〈あらすじ〉

地下に潜伏し、アメリカを影から守ると決めたバッキー。キャプテン・アメリカを愛し、超人登録法に悩むシャロン。2人はそれぞれの道からキャップを支えるための道を模索する。アメリカンドリームを絶やさないために。

 

星条旗の行方〉

シャロンは精神科に通っていました。内戦によりキャップと自身が引き裂かれ、その後の行動についてずっと悩んでいたのです。シャロン自身は超人登録法に賛成の立場でしたが、キャップは反対派の代表的な立場。会うことさえ危険なのです。悩み抜いた末、シャロンはキャップを説得しようと考えます。ここでキャップが考えを変えたら内戦だってあっという間に終わるに違いない。絶対にそれがありえないと分かっていながらも、シャロンは緊急回線を使ってキャップとコンタクトを取っていました。こうしてキャップとシャロンは会う約束を交わします。当日、シャロンはどこか震えたような面持ちでキャップを待っていました。キャップが現れると、予め用意していた隠れ家に移動します。SHIELDは2人の関係性さえ利用しようとしていました。シャロンならば立場は違えどキャップとコンタクトを取れる人物のはず。秘密の会合を通して居場所を教え、特殊部隊が急行し逮捕する手はずでした。ところがシャロンは密かにこの作戦を裏切ります。発信機をジャミングし、別の場所を伝えるよう細工していたのです。一時の感情に任せて任務を放棄するなんてこれまでにはなく、シャロン自身も戸惑っていたのでした。ともかく2人の時間ができたのは確か。2人は早速意見をぶつけ合います。とはいえその意見が変わるはずもありません。2人は意見を変えることなく、戦争中の夜を過ごすこととなります。
f:id:ELEKINGPIT:20240130172959j:image密かに会う2人。しかしキャップは決して信念を曲げなかった。

 

シャロンはキャップと任務の間で揺れていました。どちらが正しいのか? どちら側につくべきか? 一方キャップは、逃亡生活を続けながらヒーロー活動も並行していました。ハイドラの秘密基地を見つけたのです。例え超人登録法違反の犯罪者と言われても、キャプテン・アメリカのすべきことは変わりません。その夜、キャップはハイドラの基地を襲撃します。大勢のハイドラ兵を相手に、長年の経験を頼りに一騎当千の如き活躍を見せるキャップ。敵の自爆攻撃に苦しめられながら魔、ハイドラの基地をあっという間に壊滅させてしまいます。直後、SHIELDの特殊部隊がキャップを包囲します。いくらなんでもタイミングが良すぎるのでは? そんな文句も疑問も抱いている暇はありません。すぐさま戦闘態勢に気持ちを戻します。ヒーロー専門に相手している特殊部隊は、ハイドラの一般兵とはわけが違います。その時です。キャップへ救いの手を差し伸べたのは、シャロンでした。法と立場に揺れていたシャロンはキャップに協力することを決意したのです。こうしてシャロンもまた地下へ隠れることになります。遡ること少し前。密かにキャップを支援しようと動き始めていたバッキーは、フューリーを通して驚くべき事実を知ります。レッドスカルがドクタードゥームと秘密の会合を繰り返していたのです。凶悪なヴィラン同士が何度も隠れて会っているというのですから、当然良からぬことを考えているに違いありません。SHIELDもこの事実に気づいてはいるようですが、重要視していない様子。とはいえ今は内戦中。調査をするリソースはありません。こうして誰もがレッドスカルの計画を見過ごす事となってしまいました。これが最悪の悲劇に繋がることも知らずに。
f:id:ELEKINGPIT:20240130185524j:image計画に支障がないことを確認するレッドスカル。このシビルウォーさえ序章に過ぎないと語るレッドスカルの真意とは?

 

〈悪とシビルウォー

今作を通して描かれたのは、レッドスカルの悪事です。レッドスカルがなにか良からぬことを企んでおり、それが次回以降に向けた伏線であることが描かれ続けています。しかし登場キャラクターたちは皆それを認識していながら、誰も止めようと行動を起こしません。後に続く物語への繋ぎのような立ち位置で受け止められる本作。しかしそれだけが本作の役割でしょうか? 私はそうは思えません。なぜなら本作が他のタイインと同様にシビルウォーへの問題提起を行っているからです。それこそが、レッドスカルとヒーローの行動でしょう。

悪をくじき皆を助ける。文字にしてみると、理想のヒーローというのは至極単純です。しかしこの単純明快なヒーロー論さえ、シビルウォー中はどれほど達成されていたでしょうか。本作でバッキーは「ヒーロー同士の戦いに集中しすぎて、本来すべきことが見失われているのでは?」という趣旨のセリフを言っています。ところがこれはフューリーによって、「物事はそう単純ではない」と却下されています。第2次世界大戦から生き延びた最後のヒーローの1人であるバッキーは、単純なヒーロー論の観点からシビルウォーを見ようとし、同じく第2次世界大戦を生き延び現代社会への移り変わりを見守ってきたフューリーは複雑化した社会からこれを否定する構図です。超人登録法が成立した経緯を見ると、フューリーの指摘は何も間違っていません。しかし後の悲劇を思えば、バッキーの主張も間違っていなかったことは明白でしょう。本作はキャップさえレッドスカルがシビルウォーの裏で悪事を企んでいる事を認識しながら、ほとんど何も行いませんでした。キャップはスタンフォードの悲劇の1週間も前から、ルーキン(レッドスカル)が超人登録法に賛成を表明したことに違和感を抱いていたのです。ところが行ったことといえばハイドラの秘密基地を1つ壊滅させただけ。レッドスカルの作戦には全く影響を与えられていません。超人登録法とはそれだけでヒーローに大きな影響を与えるもので、その是非は激論をもって迎えるべきものでしょう。しかし内戦を行うことが「ヒーロー」でないことは誰もが分かっていたはず。だからこそトニーは戦争の早期終結を目指していました。ではキャップは? 何も手を打たなければ、ヒーロー活動をしながらSHIELDの特殊部隊に追われることが、戦後も続くことは容易に想像できるはず。ヒーローの本来の仕事を行うには、現状維持こそが最も危険なのです。ではキャップは、戦争の早期決着に向けて何かしたのでしょうか? ある時点で切り上げて交渉という手段もあったはずなのに。キャップもまた、内戦に集中するあまり悪事を見逃すことに加担してしまいました。だからこそ内戦を早期に終わらせることが至上の命題であるにも関わらず、キャップはそこに向けて動いたようには思えません。キャップでさえヒーローの単純明快な理想を行うことができなかった。それもまたシビルウォーの悲劇でしょう。