アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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【第4回】エクストリミスアーマーと21世紀型アイアンマン

アイアンマンを語る上で欠かせない重要な要素の1つに、パワードスーツの存在があるでしょう。パワードスーツはアイアンマンがヒーローとして必要な力をもたらす、トニー・スターク最大の発明とされています。そんな日進月歩で性能が向上しているパワードスーツ。中でも大きな進化を遂げた、エクストリミスアーマーについて見ていきましょう。今回も普段の記事では語りきれなかったことをオタク語りする不定期更新コラムとなっております。

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公式設定資料集

邦訳版

 

前回のコラムはこちらelekingpit.hatenablog.com

 

〈高性能アーマーの性能〉

エクストリミスアーマーとは、邦訳版も出ているIron man extremisにて初登場したパワードスーツです。日本でもマーベルvsカプコン3にて登場しており、コミック版アイアンマンのパワードスーツの代名詞的な知名度があるでしょう。そんなエクストリミスアーマーの基本的な性能を見ていきたいと思います。なお、今回は公式設定資料集、THE All new iron manualと非公式のFandom wikiを参考にしています。身長は6,6フィート、198.1cm、重さは200ポンド、約90キロ。型式番号はモデル29、別名はバイオ/メタロ・ミメティックスーツシリーズ マーク3です。この別名は、いわゆる「生体スーツ」と呼ばれるカテゴリから来ていると思われます。最大の特徴は、そんな別名の由来ともなったエクストリミスでしょう。エクストリミスは人体の青写真を書き換える、新世代の超人血清を目指して開発されたナノマシンです。人体に投与することでまさに超人的なパワーと能力を得ます。トニーが得たのは、テクノパシー。いわゆる機械を考えるだけで操る能力です。これまでも脳波を使いパワードスーツを操るなどの芸当は行っていましたが、エクストリミスで文字通り全ての機械を操ることができるようになりました。自身をコンピューターの記憶装置と同じようにしてデータを格納することも可能です。この能力をパワードスーツに応用したものがエクストリミスアーマーになります。パワードスーツの下に着用するアンダーシースを骨に格納することで、考えるだけでパワードスーツの着用が可能となりました。また既存のパワードスーツはモーターにより稼働していましたが、神経接続することで脳とパワードスーツの動きがダイレクトに反映。運動性や敏捷性の飛躍的な向上に成功しています。トニーとパワードスーツが文字通り1つとなることで、それまでのパワードスーツを凌駕する圧倒的な性能を得るに至ったのです。
f:id:ELEKINGPIT:20240305093129j:imageエクストリミスアーマーをまとったトニー。それまでのパワードスーツとは一線を画す新世代型アイアンマンが誕生した。

 

何故トニーはこれほどの超高性能スーツを作らなくてはならなかったのでしょうか? それを紐解くには、21世紀型アイアンマンのオリジンとなった「フューチャリスト」について考える必要があるでしょう。21世紀はテロとともに始まりました。少なくともアメリカはそう考える人が多いでしょう。9.11の衝撃はそれほどに強く、またマーベルコミックにも大きな影響を与えています。同事件を受けてキャプテン・アメリカは「より強くあらねば」と決意を固めていますし、トニーもまた新時代の脅威から人々を守るための変化が求められたのです。トニーが見出したのは「未来の守護者」でした。未来という可能性を生み出し、最も良い形で人々に享受するのです。人類は石器時代以来様々な「発明」によって未来を掴み取ってきました。活版印刷術によって人々が安価で本を手に入れるようになりましたし、産業革命によって人々の生活は激変しました。しかしそれは決して良い面のみではありません。活版印刷術は地球上から写本家という職業を消し去りましたし、産業革命は貧富の差をそれまでにないほど大きくしました。発明は時にメリットをもたらしますが、時に莫大なデメリットももたらすのです。現代でもスマートフォンが「誰でも持っていることが前提」となるほど普及しました。しかし次々と移り変わるガジェットの進化についていけない人々は容赦なく振り落とされ、「情報弱者」となってしまいます。AIによる諸問題もデメリットと言えるでしょう。ではメリットのみを享受するにはどうしたらよいのでしょう? トニーは「未来を目指すテストパイロット」となることで、そのデメリットを一身に受け止めメリットを世に普及させる道を選びました。常に技術革新の先頭に立ち続け、メリットのみを享受できるよう剪定するのです。これが21世紀型アイアンマンのオリジンとなった、フューチャリストです。
f:id:ELEKINGPIT:20240305101044j:imageフューチャリストとしてシビルウォーを戦い抜いたトニー。100年先の未来を見通すと呼ばれた天才は何を創造するのか?

 

未来を創造し、メリットのみを享受できるよう剪定するフューチャリストとなったトニー。その最大の敵は、未来の可能性を潰す存在と言えるでしょう。いわば過去の亡霊です。過去に囚われ続けた亡霊が未来を潰そうとするならば、人々の未来のために立ち続けるフューチャリストは絶対にこれを阻止せねばなりません。Iron man extremisでは、エクストリミスを接種したマレンがホワイトハウスへテロ事件を起こそうとしていました。マレンは幼少期のある事件がトラウマとなっており、アメリカ政府へ復讐しようとしていたのです。未来を潰すために新技術を用いている。これは新技術がもたらすデメリットです。人類に未来の光を見せるための技術がテロ事件によって恐れられてしまっては、その後の発展の可能性も潰れてしまうでしょう。これがフューチャリストの敵です。しかし過去に囚われた敵というのは恐ろしいものです。マレンのように、たった1つの出来事で人生のすべて、この瞬間の命さえ躊躇なく捧げられるのですから。キャプテン・アメリカも「より強くあらねば」と覚悟を新たにするほどですから、相当なものです。そのため、パワードスーツに求められる力もより強力となっていくのです。パワードスーツへも技術革新がなくては、過去に囚われた敵を倒すことなどできないのです。これがエクストリミスアーマーが既存のパワードスーツよりも飛び抜けて強い理由だと考えられます。
f:id:ELEKINGPIT:20240305103809j:imageマレンを圧倒するアイアンマン。既存の強さでは、「21世紀の敵」には勝てない。

 

〈まとめ〉

エクストリミスアーマーは、トニーが接種したエクストリミスを応用して生まれたパワードスーツです。トニーと神経接続することで文字通り1つとなり、圧倒的な敏捷性や運動性、スピードを獲得するに至りました。そんなトニーは21世紀において新たな変化を求められます。それが未来を見通すフューチャリストです。技術革新の最先端に立ち続けることで、発明がもたらすメリットのみを人類が享受できるよう選定するのがフューチャリストだと私は考えます。だからこそ未来の可能性を潰す、過去に囚われた亡霊が最大の敵となりうるのです。過去に囚われた亡霊は1つの出来事のためにだけひた走るため、それまでのヴィランとは違う強さを持っています。そのような敵と戦うのですから、エクストリミスアーマーはそれまでのパワードスーツとかけ離れた強さを持っているのでしょう。また未来を守り過去と戦う覚悟は、それまで以上にアイアンマンとしての強さを求められます。酒に酔い、アイアンマンとなることを拒否していた過去からトニーがどれほど成長したのか、1人のファンとして感慨深くなるものです。このように、パワードスーツの進化は単なる性能の向上以上に物語としての意味を持たされている場合があります。パワードスーツの進化とは、同時にアイアンマンの進化でありトニー・スタークの進化なのです。