アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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IRON MAN EXTREMIS

アイアンマンを代表する作品といえば? Demon in a bottleやArmor wars同様に必ずと言っていいほど名前が挙がる作品があります。EXTREMISです。映画アイアンマン3の原案にもなった作品で、アディ・グラノフ氏のアートも相まって後続のシリーズへ大きな影響を与えました。そのため邦訳の機会にも恵まれ、過去2回日本語化されています。またモーションコミック化されたこともあり、既に読んだことのある方も多いでしょう。しかし今作は言うなれば21世紀のアイアンマンのオリジンとでも言うべき作品。何度でも再読し、時代が進むにつれて意味を増す「未来を目指すテストパイロット」という言葉を噛み締めましょう。
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〈あらすじ〉

超人を生み出す目的で作られたナノボット、エクストリミスが何者かによって盗まれた。時代をさらに進める新技術は、やがて民兵組織に売り払われテロを引き起こす。未来を託す技術を守るためアイアンマンが立ち向かうが……

 

〈未来のための攻防〉

フューチャーファームで作られたエクストリミスと呼ばれるナノボットは、トニーさえ驚くような技術が盛り込まれていました。開発者のマヤ・ハンセンとアルドリッチ・キリアンにとって、エクストリミスは我が子のような存在。そんなエクストリミスがキリアンによって民兵組織へ売り払われたとわかったのは、自殺したキリアンの傍らにあった遺書でした。共同開発者のマヤは旧知の仲であるトニーへ助けを求めます。マヤはエクストリミスに未来を賭けていたのです。一方、民兵組織に所属するマレンは数日前に入手したばかりのエクストリミスを摂取。見事適合したマレンは、人間を遥かに凌駕する超人的な肉体と能力を手に入れていました。過去の記憶に囚われたマレンは早速FBI支部を襲撃。FBIに親を殺されたあの時の復讐を果たすように、20人以上の警官達を焼き殺していました。ヒーローの出番です。アイアンマンはマレンを仲間から引き離し、一騎打ちを挑みます。ところがマレンの能力はトニーの想定もアーマーの性能を上回っていました。スピードもパワーもアイアンマンのそれを凌駕しており、トニーは手も足も出ずに敗北してしまいます。
f:id:ELEKINGPIT:20230704231300j:imageマレンと戦うトニー。エクストリミスがもたらした戦闘力は計り知れない程だった。

 

重傷を負ったトニーは、フューチャーファームへと向かいます。驚くマヤ。トニーはマレンに勝つための唯一の方法を考えていました。トニー自身もエクストリミスを摂取することです。適合できれば身体能力もアーマーの性能も飛躍的に上昇するでしょう。しかし適合出来なければ、待っているのは死あるのみ。賭けに負ければ死ぬ大博打ですが、トニーは迷わず乗ります。文字通り命を賭けてエクストリミスを摂取するのです。更にトニーはエクストリミスのリミッターを解除、適合までの時間が短くなり能力を調整できる代わりに、リスクはより高くなってしまいました。24時間後。トニーは見事賭けに勝利。エクストリミスに適合してみせたのでした。アーマーもエクストリミスで強化を施しており、反応速度も敏捷性もそれまでの比ではありません。トニーは一通り能力を試した後、マレンへ再戦を挑もうとします。マレンはアイアンマンを撃破後ワシントンを襲撃する計画を立てていたため、逆算して居場所を割り出すことはそう難しくありません。マレンがワシントンへ到着する前にトニーは再び一騎打ちを挑みました。
f:id:ELEKINGPIT:20230704233138j:imageマレンへ決戦を挑むトニー。従来の性能を圧倒的に凌駕したアイアンマンが、未来の番人として立ちはだかる。

 

〈未来を変えるために〉

今作は言うなれば21世紀のアイアンマンのオリジン、という話はさせて頂きました。では今作が示したアイアンマンの新たな方向性とは? 今作では、未来、過去という言葉が何度も登場し、またそれを思わせる描写がいくつもありました。トニーのドキュメンタリー映画を撮影したフィリンジャー監督は、トニーを20世紀の亡霊と呼びました。スターク社が軍事兵器を開発していた時代の地雷で苦しむ子どもたちが21世紀になってもあとを絶えないからです。一方トニーは自らを未来を目指すテストパイロットと表現していました。マレンは家族がFBIに射殺された過去を清算させるためにエクストリミスを用いました。トニーは新たなテクノロジーとして未来を託すためエクストリミスを摂取しました。過去と未来。一見正反対の概念に聞こえますが、実際は過去の地続きが未来と言えるでしょう。中でも技術は過去の積み重ねで生まれたもの。フューチャーリストとしてこれを無視しないトニーではありません。何故トニーはアイアンマンなのか? という疑問も、インセン教授との過去に隠されていました。地雷の破片が心臓近くまで突き刺さり、1週間も持たないとされてきたトニー。その未来を変えるためにアイアンマンを開発したのでした。未来を目指すテストパイロット。それは未来へ先に到達する代わりに、その負担全てを背負い込まねばなりません。今作ではトニー自身か鏡に映る自分を直視できないほど精神的に追い詰められてもいました。そうまでしてなぜトニーはアイアンマンを、未来を目指すテストパイロットをやめないのか? 非常に明白な答えが用意されていました。未来をよき方向に進めるためです。テクノロジーは社会へ大きな変化をもたらすことがあります。しかしそんな可能性を秘めたテクノロジーも悪用するもたちまち人類を脅かす兵器にだってなりかねません。トニーはアイアンマンを、自分の死という未来を変えるために生み出しました。この「未来の軌道修正」を現在は世界単位で行っているのです。だからこそマレンのような人物にエクストリミスが奪われることを何よりも嫌悪していました。一見トニーを傲慢と断じる人もいるでしょう。しかしトニーがいなければ、新たな技術が生まれても悪用されると人のための技術が殺人テクノロジーとなってしまうでしょう。そんな未来を変えるために、トニーはアーマーをまとい続けるのです。誰かの未来をより良い方向へ変えるために。