アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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IRON MAN THE END

人気がある限り物語が続く、というのはアメリカンヒーローコミックではよく言われることです。映画化するほど有名なヒーローのほとんどは初登場から50年以上経っており、様々なクリエイターがその生き様を語り継いできました。私たちが物語の結末を見ることはおそらくないでしょう。ですがもし、そんな物語に最終回があったら? 今回紹介するIRON MAN THE ENDは、アイアンマンの最終回を描いたもしもの世界です。アベンジャーであり未来の創造者であるトニー・スタークはどのようにその舞台から降りるのか? その最後を見ていきましょう。
f:id:ELEKINGPIT:20210909144712j:imageIRON MAN THE END

※なお今回は紙の書籍から画像を引用させていただきます。見えにくい等ございましたらコメントにて教えて頂けると幸いです。

 

〈あらすじ〉

アイアンマンが誕生してから50年以上経った。トニーは人生最後の大事業として、宇宙エレベーターの「ビッグジャンプ」完成を急ぐ。しかし、半世紀もの間戦い続けたアベンジャーの体は既に限界を超えていた。それでもアイアンマンであろうとするトニーに、「未来」は残酷な現実を突きつける。

 

〈トニー・スターク最後の贈り物〉

「ビッグジャンプ」とは、ナノテクノロジーを用いた宇宙エレベーターです。スタークユニバーサルと名を変えたスターク社一大プロジェクトであり、地球へ太陽光エネルギーを供給し続ける装置でもあります。そしてトニー・スターク最後の発明品です。しかしトニーも既に高齢に。その完成を急ぐ必要がありました。
f:id:ELEKINGPIT:20210910131732j:image宇宙エレベーター「ビッグジャンプ」。太陽光エネルギーを地球へ供給することで、従来のわずか2%の効率で発電することが出来る。

 

一方スターク社は老い先短いトニーに代わり新たな人材を発見していました。マサチューセッツ工科大学ナノテクノロジーに関する論文を発表したニック・トラヴィスです。弱冠19歳でトニーから直々にヘッドハンティングされた将来有望の天才であり、ナノテクを応用したホログラム技術の研究を行っています。トニーはビッグジャンプ建設を急ぐためニック・トラヴィスにスターク社の技術顧問の椅子を譲りました。半紀以上トニーしか着いていない、スターク社の象徴的なポストです。
f:id:ELEKINGPIT:20210912123136j:imageニックへ技術顧問の地位に就くことを提案するトニー。ビッグジャンプへ全てを賭けるため、それ以外のプロジェクトを託した。

 

〈アイアンマン最後の戦い〉

日を追う毎に老いていくのを実感するトニーは、それでも「世界が必要としている」とアイアンマンであり続けていました。しかしその体は「何年もパンチをくらい続けたボクサー」のよう。薬を飲めば辛うじて戦えはしますが、その薬もまた体をじわじわと蝕んでいます。もはや戦える体でないことはトニーが1番理解しているはず。それでも鋼の意思が休むことを許さないのでした。
f:id:ELEKINGPIT:20210912154527j:image薬を摂取するトニー。杖がなければ歩けない体でも戦い続ける。

 

そんなトニーにある情報が舞い込みます。地球へ計り知れない恩恵をもたらすビッグジャンプは、あまりの規模の大きさから同時に快く思わない人達が多かったのも事実。中でもロキソン社は強硬手段を使って工事を妨害していたのです。トニーはシベリアにあるロキソンの秘密基地を特定し、妨害データを集めようと動き始めます。しかしロキソン社もこの動きを感知していました。ウルトラ・ダイナモを雇ってアイアンマンを倒そうとしているのです。
f:id:ELEKINGPIT:20210912180954j:imageシベリアで対峙するアイアンマンとウルトラ・ダイナモ。半世紀以上続いたダイナモシリーズとトニーの戦いに終止符が打たれる。

 

その巨体からは想像もできないような激しい攻防が繰り返されます。以前から判断力の衰えを痛感していたトニーは、パワードスーツの性能を引き出せずにいました。更にウルトラ・ダイナモはリパルサーブラストを「前時代的」と跳ね返してみせます。最早トニーに打つ手はありません。よろよろと起き上がり、必死に逃げることしか出来ませんでした。

 

〈最後の最後〉

ウルトラ・ダイナモに負けたという事実は、トニーを大きく動揺させました。アイアンマンは未来の最先端でなくなった。もう「未来を目指すテストパイロット」にはなれない。ならば、今のトニー・スタークに出来ることとは? 禁酒の誓を破りそうになるほど悩んだ末、アイアンマンの引退を決意しました。ニック・トラヴィスに正体を明かし、アイアンマンという称号を継がせたのです。ニックは戸惑いながらも尊敬するトニーの頼みを断ろうとはしませんでした。直ぐにパワードスーツの開発に着手、得意のホログラム技術とナノテクノロジーを応用した全く新しいアイアンマンを完成させます。そしてトニーが極秘理に使用していたトレーニング施設で訓練を受けました。
f:id:ELEKINGPIT:20210913091835j:image訓練を受ける2代目アイアンマン。様々な新技術で性能は初代すら大きく上回っている。

 

しかし訓練はニックの想像していた何十倍も過酷なものでした。絶えず実戦で経験を積んできたトニーと違い、ニックは最近まで大学生だったただの若者です。やがてあまりの過酷さでニックはトニーへ反感を抱くようになり、その場を去ってしまいます。

 

〈大いなる1歩〉

ビッグジャンプ完成当日。この日を心待ちにしていたトニーですが、その表情は晴れ晴れとしていません。あれ以来生まれたニックとの溝を埋められないままだったのです。会社も「アイアンマン」もニックへ託したつもりですが、もしニックがアイアンマンを拒否すれば……そんな想像が離れません。何とかニックと和解しようとしたその時、ビッグジャンプ妨害のためにウルトラ・ダイナモが再び現れました。トニーを誘拐して混乱を招こうとしていたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20210913093107j:imageスターク社へ現れたウルトラ・ダイナモ。初代アイアンマンをも圧倒する戦闘力に、トニーとニックが対抗する。

 

倉庫の中へパワードスーツをしまい込んだトニーはウルトラ・ダイナモと戦う術がありません。老体に鞭打って逃げ回りながらニックがアイアンマンになることへ賭けるしかないのです。現れた新アイアンマンをトニーはどのような気持ちで見ていたのか? 安心した以上に胸に込み上げるものがあったのでしょう。あっという間にウルトラ・ダイナモを倒したアイアンマンを、トニーは笑顔で迎え入れます。最早何も思い残すことは無い。ビッグジャンプ完成を記念の式典に出席したトニーの表情は晴れ晴れとしていました。そしてビッグジャンプで宇宙へと旅立ちます。人々へもたらした未来のステップの、第1歩を踏み出してみせたのです。遠ざかっていく地球を眺めながら、僅かばかりの寂しさと誇らしさを胸にトニーは語ります。「私はもうアイアンマンではないが、死ぬまでトニー・スタークではあるんだ。そしてトニー・スタークは……明日を楽しみに待っているよ」
f:id:ELEKINGPIT:20210913094829j:image未来を変える役目から、未来を待つ者の1人になったトニー。このたった一言の重みが「トニー・スターク」の証だろう。