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MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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IRON MAN ARMOR WARS⑤(#229〜#232)

長きに渡る戦い、アーマーウォーズもいよいよ今回で決着です。根幹であるアイアンマンとしての技術も、ヒーローとしての名誉も失われた今。トニー・スタークがそれでもアイアンマンであり続ける意味とは? 名作と名高いアーマーウォーズの果ては見逃せません。
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〈あらすじ〉

ジャスティン・ハマーにアーマーの技術を盗まれて以来、技術の悪用を恐れたトニーは敵味方容赦なく攻撃した。キャップとの対峙を経て、最も大切に育んできた絆さえ失ったトニー。それでもこの果てなき戦いに決着をつけねばならない。アーマーウォーズの最終決戦が始まろうとしていた。

 

〈最後の敵〉

キャップを倒しても尚終わらないアーマーウォーズ。トニーが定めた次なる標的は、クリムゾン・ダイナモチタニウムマンでした。どちらもクレムリンに仕える強力なアーマーの使い手。国境を越えた相手に、トニーは新たなステルススーツによる奇襲作戦を画策します。ロケットミサイルの要領で成層圏まで飛び上がり、急降下してチタニウムマンの秘密基地を襲撃するトニー。慌てふためくチタニウムマンの様子から、作戦は成功したかに思われました。しかしアーマーウォーズの噂は赤い壁の向こう側まで届いていたよう。予め備えていたクリムゾン・ダイナモが現れたのです。ステルス機能を特化させた代わりに武装がリパルサーしかないステルスアーマーでは、2人の敵を相手にすることは出来ないでしょう。トニーはまずクリムゾン・ダイナモに体当たりし、チタニウムマンから距離を離します。さらに素早い動きでクリムゾン・ダイナモを圧倒、驚く暇もないほど一瞬で無効化装置を取り付けてしまいました。自らの戦闘経験を遺憾無く発揮した形でしょう。しかし次なるチタニウムマンはそうもいきません、チタニウムマンは頑強な装甲と豊富な武装を持つ高性能アーマー。ステルススーツの戦闘性能では奇襲戦法のように不意をつかねば勝てる相手ではないのです。引き離された性能差を埋めるかのように取っ組み合う2人。トニーも手加減する余裕さえありませんでした。その瞬間、上空でつかみ合う2人にアクシデントが。アイアンマンのブーツブースターから発せられた炎がチタニウムマンのブースターに引火、アーマー全体へ燃え広がったのです。制御を失ったチタニウムマンは首から地面に落下し、なんとそのまま死亡してしまいました。
f:id:ELEKINGPIT:20230518230246j:image目の前で悲鳴をあげるチタニウムマン。その衝撃と驚きはアメリカまで響く。

 

アメリカに戻ったトニーを待っていたのは、ウエストコーストアベンジャーズでした。スティングレイやキャップの襲撃、クリムゾン・ダイナモチタニウムマンにまで攻撃を仕掛けたことを大きな問題として捉えているよう。故意でないとはいえチタニウムマンの死の一因であり、アーマーウォーズでの「失態」を重く見たホークアイは、アイアンマンを除名処分を言い渡す程でした。アベンジャーでさえなくなったアイアンマン。しかしそれでも、テクノロジーの悪用を防ぐため戦い続けなくてはなりません。改めて決意を固めるトニーへ朗報が舞い込みます。以前トニーが依頼していた、盗まれた技術データをネット上から完全に削除するソフトが完成したのです。既に流出済みの技術の大半はトニーが自らの手で無効化しており、このソフトを起動してしまえばアーマーウォーズは一気に終結へと向かうでしょう。早速ソフトを起動、盗まれた技術はこうして再びトニーだけのものとなりました。念の為流出した技術が残っていないか、衛星から観測。最後の1つだけ残っていることを確認しました。最後の敵は、アメリカ合衆国国防省です。国防省は以前からヒーローが反旗を翻した場合に備え、対ヒーロー兵器の開発を進めていました。そんな時にトニーのアーマーの技術を入手、昨今のアーマーウォーズも鑑みて対アイアンマン用のパワードスーツを完成させていたのです。早速アイアンマンと対アイアンマン兵器の戦いが始まろうとしていました。
f:id:ELEKINGPIT:20230519000334j:imageアメリカが開発したパワードスーツ。その性能はアイアンマンさえも凌駕する。

 

対アイアンマン兵器、ファイヤパワーはシミュレーションでアイアンマンに完勝するほどの性能を誇っていました。事実、最大出力のリパルサーブラストさえ装甲を傷つけることが出来ず、アイアンマンが反応しきれないほどの弾幕で攻撃することが可能。さらに機動力もアイアンマンと互角以上で、現在のアーマーでは太刀打ち出来ないほどです。トニーは一瞬の戦いで、絶対に勝てないほどの性能差があることを悟りました。もはやアメリカの敵となったアイアンマンの敗北は、全米が大きく報道します。当のトニーも桁違いの挫折を味わったようで、もうアイアンマンの復活はないと言うほど。敗北感を引きずったまま、トニーはスターク社のCEOとしての業務に戻ろうとしていました。しかしそんなトニーの前に、再びファイヤパワーが現れます。ファイヤパワーの計画を提唱していた上院議員が私物化、スターク社への私怨を募らせていたため嫌がらせに来たのでした。アイアンマンを支援していると根拠の無い罪を被せ、スターク社の資材などを燃やすといった行為にトニーも我慢の限界です。この悪逆非道な行いに、トニーは痛感しました。アイアンマンが必要だと。トニーは盗まれることを恐れ封印していた最新技術を解禁し、新たなアーマーの作成に取り掛かります。これまでのアーマー全てを超える超高性能、原点回帰と進化発展を兼ねた赤と金のカラーリング、全てにおいてそれまでのアーマーを完全に凌駕したネオクラシックアーマーが完成しました。
f:id:ELEKINGPIT:20230519010216j:image新たなるアーマー、ネオクラシックアーマー。その性能はファイヤパワーさえ圧倒する。

 

〈技術の番人〉

長きに渡るアーマーウォーズの果て、トニーはアイアンマンさえ挫折するほどの精神的ダメージを負いました。その再起をもってアーマーウォーズは終戦へと進むのですが、何故トニーは再起できたのか? 現代まで続くアイアンマンの礎となった理由を考えたいと思います。トニーは暴走するファイヤパワーを見て、アーマーウォーズを始めた理由を思い出していました。技術の悪用を防ぐため、どんな犠牲を払ってでも戦うと。それはトニー個人で抱えきれないほど重いプレッシャーとなり、やがてローディにも協力を求め戦い続けてきました。トニーは改めてこの時の覚悟を思い出します。技術が悪用されないようにアイアンマンを続けようと。トニーは言わば技術の番人としてアイアンマンを続けようと決意したのでした。これは後のIRON MAN EXTREMISなどの作品でも変わっておらず、アイアンマンの根底を支える礎となっています。テクノロジーの用途は様々です。軍事技術が日用品に転用されている例は数えればキリがありませんし、開発者とは思わぬ形で価値を見いだした技術も多いでしょう。その番人になるとは、一見傲慢に思う方もいるかもしれません。しかしこれこそがトニーがアイアンマンたる所以でしょう。テクノロジーの発展には犠牲が伴うものだという話は何度かさせていただきました。活版印刷術の発明で写本家の仕事が無くなったように、蒸気機関車の発展と共に飛脚の存在が消えていったように、技術の発展による利便性の向上は、同時に技術のなかった時代に必須だった職業を失わせる可能性を大いに秘めています。また新技術への乗り換えが遅れ、取り残されてしまう人々の姿を現代では見かける場面も増えてきたでしょう。これらテクノロジーの「犠牲者」を出さないため、トニーはあえて発展を遅らせていると考えることができます。トニー個人が抱える技術は後の時代で100年先を行くものだと言われています。何故それらを開放しないのか? アイアンマンの技術も、危険な部分を避けて公開すると、人類がより発展することは間違いありません。しかしトニーはそれをしようとさえしません。トニーの考える発展は護送船団方式、誰も取り残さない方法です。一切技術を流出させない姿勢がそれを表しているでしょう。トニーはテクノロジーの発展による犠牲者を出さないために技術の番人をしているのです。