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MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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IRON MAN vol3 THE SECRET ORIGIN OF TONY STARK BOOK2

スターク家の驚くべき秘密が明かされた前回に引き続き、トニーの出生に迫るTHE SECRET ORIGIN OF TONY STARK編を紹介したいと思います。衝撃的な事実を突きつけられ項垂れるばかりのトニーですが、451にアーマーの制御を奪われたこの状況を打開できるのでしょうか? 精神的に打ちのめされたトニーの再起にも注目したいと思います。f:id:ELEKINGPIT:20210921224314j:imageIRON MAN THE SECRET ORIGIN OF TONY STARK BOOK2

前編はこちらelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

451を名乗る正体不明のアンドロイドにアーマーの操作を奪われ拘束されたトニー。そこで語られたのは数十年前の秘密だった。もうすぐ来るであろう絶滅の危機に備え、451がスターク家の胎児へ遺伝子改造を行ったのだ。

 

〈神を殺すために〉

トニーは451と共に半ば強制的に深宇宙へ向かいます。目的地はかつて戦争があった星の近く。ダイソン球(恒星のエネルギーそのものを利用する極大な建造物。当時のニューアベンジャーズシリーズでトニーが建造していたものとは別物)です。そこに隠されていたのはゴッドキラーアーマーと呼ばれる超巨大なアーマーでした。かつてアスピランツという種族が神を殺すために作った鎧は、同じく神殺しの鎧であるデストロイヤーアーマーとは全く規模が違いすぎます。ゴッドキラーアーマーは天空神セレスティアルズを殺すための兵器なのです。
f:id:ELEKINGPIT:20210921232515j:imageそびえ立つゴッドキラーアーマー。451曰く全長は約7500mを誇るのだとか。

 

451はかつてアスピランツとセレスティアルズとの間で起こった天空戦争で、セレスティアルズを何体も殺してきた規格外の強さを誇ると言います。しかしゴッドキラーアーマーも宇宙中にパーツが散らばってしまうほど深刻なダメージを負っていました。451は胎児の遺伝子を改造した後、そのパーツを集めるために宇宙を駆け回っていたのです。451が奪ったヴォルディの心臓は、正にゴッドキラーアーマーを動かすための機関部でした。ゴッドキラーアーマーはある程度自動制御も可能ですが、その真価を発揮するには登録された生体データを有するパイロットが必要です。451はトニーにパイロットとなるよう迫ります。しかしトニーは拒否。ゴッドキラーアーマーのパイロットとして一生使役されることを恐れたのです。怒った451は自動制御システムでゴッドキラーアーマーを操縦します。そして近くの手頃な惑星を破壊するよう命令しました。100万の命を人質に、451は再度トニーへパイロットとなるよう要求します。これにはトニーも応えざるを得ません。
f:id:ELEKINGPIT:20210922000605j:imageヘッドギアを被りゴッドキラーアーマーのパイロットとなるトニー。地球にいる旧友たちに別れを告げて覚悟を決める。

しかしコントロールパネルからどれだけ司令を送ってもゴッドキラーアーマーはうんともすんとも応えません。数瞬後、目の前に広がっていた美しい世界は爆発と共に消滅していました。トニーはゴッドキラーアーマーが操縦できないと叫びます。しかし451はまるで信じようとしません。さらなる脅しのためにターゲットを地球へと設定します。

 

〈451の誤算〉

451の制御を逃れるためにアーマーのAIを初期化したトニーは、ゴッドキラーアーマーのハッチに停泊していた簡易アーマー倉庫へ向かいます。そこにはモデル42以降のアーマーが備えられていました。トニーはここで451を迎え撃ち、自動制御を解除してもらおうと画策します。
f:id:ELEKINGPIT:20210922001712j:image451を迎え撃つトニー。コントロールを奪われないため、有線ケーブルで各アーマーを接続している。

 

戦いは終始トニー優勢で進められました。元々451は戦闘を目的に作られたアンドロイドではなかったのです。ハッキングシステムを破壊し、ついに451に膝をつかせます。自らの計画が失敗に終わったことを覚った451は完全に戦意を喪失しました。数十年かけ、完璧に思われた作戦はトニーがゴッドキラーアーマーを操れないことで破綻した。451はガックリと項垂れます。トニーの必死の訴えで地球を破壊対象にすることは中止しますが、同時に自爆機能を起動していまいました。ゴッドキラーアーマーにも、自分にも。
f:id:ELEKINGPIT:20210922004134j:imageトニーの腕の中で死に行く451。トニーは共にゴッドキラーアーマーから脱出することを誓う。


薄れゆく記憶の中、451は自らの半生を振り返ります。リゲリアン帝国の観測用ボットとして生まれた451は、本来抽出された後に消されるはずのデータがバグで保持され続けていました。観測用ボットのためあらゆる事象に不干渉を貫くことが鉄の掟とされてきましたが、戦地を目撃した451は自らも行動を起こすべきという考えに取り憑かれます。そしてリゲリアン帝国の莫大なアーカイブをダウンロードして脱出、宇宙の恒久的な平和を願いゴッドキラーアーマー再起動計画を思いついたのです。しかしその行いは自己中心的でしかありませんでした。最期はトニーへの謝罪の気持ちと共に息を引き取りました。

 

〈生まれてきてくれた君へ〉

451の亡骸と共に脱出したトニーは数ヵ月後、母なる地球へと戻ってきました。するといきなりペッパーから緊急連絡が。出来る限り早くロサンゼルスへ来て欲しいというのです。二言後には急行していたトニーを迎えるのは……誕生日パーティーでした。実は宇宙海賊を討伐してヴォルディに歓迎された日、トニーは誕生日だったのです。
f:id:ELEKINGPIT:20210922005148j:image笑顔で始まるサプライズパーティ。トニーが宇宙へ旅立った頃から企画されたペッパーとびきりのプレゼントなのだ。

 

ケーキを分け、乾杯の音頭と共にグラスをコチンとぶつけ、誰もがトニーの誕生日を大いに盛り上げていました。更にペッパーは死別したハッピーに代わり新たなパートナーと婚約していたことを明かします。トニー自身も大喜びしていましたが、どうにも1つ気がかりになることが。何故自分はゴッドキラーアーマーを操縦出来なかったのか? ハワードの遺品から音声テープを見つけたトニーは、451すら知らなかった最後の真実へ辿り着きました。

 

〈スターク家の真実〉

胎児へ遺伝子改造を行うという451の条件を受け入れたマリアとハワード。しかし生まれてきた子どもは、保育器なしでは生きられないほど衰弱していました。もしこの子を451が見つけてしまったらどうなってしまうのか? トニーはその子を451から守るための囮だったのです。複雑な心境の中、ある病院を訪れます。マリアとハワードの本当の子ども、アルノ・スタークです。
f:id:ELEKINGPIT:20210922011307j:image病室で1人迎え入れるアルノ。未だ体は衰弱しており、喋れない代わりに手元のタイプでコミュニケーションをとる。

 

まるでトニーの胸中そのものを表しているかのように暗い病室。実際トニーはアルノを中々直視出来ずにいました。自分は囮に過ぎなかった。しかしトニーは人生で計り知れないほど莫大な恩恵を人類へもたらしてきたはず。たとえそうでなくとも、トニーの誕生日を祝う人が大勢いたのは間違いないでしょう。割り切れない気持ちはアルノも同様でした。しかし、アルノは「君は両親に愛されていた」と告げ、弱々しい体でトニーの目を真っ直ぐ見ます。2人は徐々に心を通わせ始めました。そして口に出さずとも素晴らしいアイデアが2人の頭を駆け巡っていました。
f:id:ELEKINGPIT:20210922012355j:image「私の経験上、スタークの子どもが世界を守るって言葉はいい響きさ。君にもスーツが似合うかもしれないな、アルノ」

病室に光が差し込んだ。

 

〈スーパーヒーローとトロッコ問題〉

ロッコ問題という有名な問いがあります。猛スピードで駆けるトロッコがいたとしましょう。しかしその先には分岐点、それぞれ5人と1人の作業員がトロッコに気付かず作業をしています。あなたはトロッコの進行方向をどちらかに変えるポイントに立っていますが、作業員達に声をかけて退避させる猶予はないでしょう。ではトロッコをどちらに進めるのか? あるいは成り行きを見守るのか? というものです。

451は宇宙の恒久的な平和を守るため、正にこのトロッコ問題と同じことをしたのではないでしょうか。宇宙中のあらゆる戦争をなくすため、数百万の犠牲はやむなしと自身の考えを改めることなく多くの人々を殺してしまいました。そして「平和を守る」という観点から、451はアベンジャーズと同じ立場だと考えていたのです。

しかしトニーは決して451のやり方に賛成しようとはしませんでした。スーパーヒーローの務めとは、例えトロッコ問題に遭遇しても誰も犠牲にしないことだと私は思います。トロッコそのものを止めるのか線路を破壊するのか、やり方に違いはあれど誰かを犠牲にすべきという考えは絶対にあってはならないのです。そもそも451のやり方は、まだ来てもいないトロッコを恐れて作業員を殺し、線路に壁を設けるというものでしょう。これでは本末転倒です。

451は誰かを犠牲にしない限り平和は守られない=作業員の誰かは死ななければならないという前提から抜け出せずにいました。しかし先程も言った通り、スーパーヒーローがそれを行うのはタブー中のタブー。誰かに与えられたカードで戦おうとする451に対して、自ら新たなカードを探し続けたトニーが勝てたのは必然と言えるのです。