アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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IRON MAN DOOMQUEST

ヒーローコミックの大手として有名なMARVEL。しかし人気なのはヒーローだけではありません。魅力的なヒーローには魅力的なヴィランが付き物でしょう。今回紹介するIRON MAN DOOMQUESTはMARVELが誇る屈指の人気ヴィラン、Dr.ドゥームとアイアンマンが対決する名作です。ファンタスティック・フォーの宿敵として登場したDr.ドゥームですが、同じ発明家のトニー・スタークとも因縁があります。さらに本作最大の特徴は、IRON MAN#149、#150と#249、#250の4話が収録されていることでしょう。なんと本作は前編(#149〜150)が刊行されてから10年後に後編(#249〜250)が発売されたのです。長い歴史を持つアメコミならではと言えますが、前編と後編で2人が変わったところ、変わらなかったところにも注目して読んでいきたいと思います。
f:id:ELEKINGPIT:20211025114427j:imageIRON MAN DOOMQUEST

 

〈あらすじ〉

Dr.ドゥームがスターク社の製品を狙っている。自分の発明を悪に利用させないため、トニーはすぐさまドゥームの居城ラトヴェリアへ向かった。数々の罠をくぐり抜け、ついに対決が始まるが……トニーもドゥームも予想しなかった事態が起こる!

 

〈#149〜150〉

アイアンマンとDr.ドゥーム。共通点の多い2人ですが、その直接対決とは胸が踊りました。ところが対決自体はあっという間に終わってしまいます。ドゥームは優秀な科学者を強引に誘拐し、自身の下で働かせることがありました。その1人が土壇場でドゥームに反乱、なんとタイムマシンを作動させてしまうのです。急展開にこちらも驚くばかりですが、2人はもっと驚いたでしょう。目が覚めると、辺りは円卓の騎士の時代、キャメロットでした。キャメロットとは簡単に言うとアーサー王が治めていた架空の王国、ログレスの都です。突然の事態に戸惑う2人。しかし甲冑を纏う騎士団に遭遇、否が応でも円卓の騎士時代にタイムスリップしたと実感せざるを得ませんでした。
f:id:ELEKINGPIT:20211025210059j:image景色いっぱいに広がる草原と、見下ろすようにそびえる石造りの街々。ここは中世ヨーロッパ、円卓の騎士の時代。

トニーの咄嗟の機転で2人はアーサー王の歓迎を受けることとなります。しかしドゥームは密かにあることを企んでいました。そもそもタイムマシンをこの時代に設定したのはドゥーム自身。部下の裏切りで不本意な来訪となってしまいましたが、黒魔術師モーガン・ル・フェイの魔法を狙っていたのです。アーサー王の居城からまんまと逃げ延びたドゥームはその足でモーガン・ル・フェイへ会いに行きます。早速黒魔術の教えを乞うドゥーム。モーガン・ル・フェイは代わりにアーサー王の死を望みました。早速墓場からゾンビのような騎士を蘇らせ、これを軍隊としてドゥームに与えます。地鳴りのような行軍の音がアーサー王の城まで届くのにそう時間はかかりませんでした。アーサー王をアイアンマンに協力を求めます。こうして中世ヨーロッパを部隊にゾンビ対円卓の騎士、Dr.ドゥーム対アイアンマンという戦争が始まったのです。
f:id:ELEKINGPIT:20211026010127j:image草原に広がる乱戦。誰も止められなかった戦争が始まる。

 

そしてもう1つ、ドゥームとトニーには重大な「クエスト」が残されていました。現代へ帰らねばならないのです。これらの出来事がモーガン・ル・フェイの仕業でないかと疑ったトニー。ドゥーム同様数々の罠をくぐり抜けてついに追い詰めます。とはいえ相手はあの伝説のモーガン・ル・フェイ。そう簡単に倒せる相手ではありません。ル・フェイはテレポートでどこかへ消えてしまいました。ドゥームが現れたのはその直後。事情を知ったドゥームは、最早この時代に用はないと切り捨てます。そして驚くべき提案をしました。パワードスーツとドゥームアーマー、2つのパーツを組み合わせてタイムマシンを作り、現代へ帰ろうというのです。ドゥームは信用できる相手ではないと断ろうとしたトニーですが、どうやらそれ以外手はないでしょう。疑心は晴れませんが、渋々手を組むことにしました。
f:id:ELEKINGPIT:20211026012530j:image2人の天才が作り上げたタイムマシン。こうして2人は現代へ帰った。

 

〈#249〜250〉

前編からしばらくの時を経て、ドゥームとトニーが再び対峙することになります。物語は2人の目の前にほぼ同時に現れた謎の物体を巡ってスタートしました。調査の結果分かったことは、何もわからないということ。この物体が何の素材から出来て、何故これほど強大なパワーがあるのかまるで分かりません。ドゥームは直感的にそれが魔法由来の物体だと確信します。そしてその力を我がものとするため、同じ謎の物体を持つアイアンマンと戦うことに。しかしその物体が突如力を発揮します。そしてドゥームとトニーの目が覚めると、そこは2093年、100年後の未来世界でした。
f:id:ELEKINGPIT:20211026013931j:image見渡す限り広がる鋼鉄の密林に、狭い空の間から覗く雲々。ここは2093年、100年後の未来の世界。

 

突然の事態に戸惑う2人。そこへ現れたのは魔術師マーリンとアーサー王の生まれ変わりを自称する子どもでした。到底信じられる話ではありませんが、前編であった出来事を事細かに語られては信じざるを得ません。しかし何故この2人を呼び出したのか? マーリンは答えます。トニーの子孫とこの時代のドゥームが手を組み人類に牙を向いているというのです。これを止めるにはアイアンマンとドゥームしかいない。さらにアイアンマンはマーリンの計らいで聖剣エクスカリバーを託しました。こうして2人は新たな「クエスト」を進めていきます。とはいえ、アーサー王への忠義もなければ敬う気もないドゥームは離反。この時代のタイムマシンを使おうとしますが、どうやらマーリンが魔法で細工を施している様子。問題が解決するまではこの時間にいるしかないようです。
f:id:ELEKINGPIT:20211026020519j:imageトニーの子孫、アンドロス・スタークと体を機械化して生き長らえていたドゥーム。この世界を脅かす2人を倒すことが、マーリンの課したクエスト。

 

当初トニーはアンドロスに手も足も出ませんでしたが、聖剣エクスカリバーを手に入れてからは立場が逆転。今度はアンドロスが抵抗虚しく倒される番でした。一方ドゥームも未来のドゥームと対面。体の半分以上を機械化して醜く生きる自分に絶望します。怒ったドゥームは未来のドゥームへ攻撃を開始、ドゥーム対ドゥームという予想だにしない方向へ物語は展開しました。その行方は意外にも早く決着が着きます。未来のドゥームを呆気なく吹き飛ばしたドゥーム。トニーと共にアーサー王から感謝の言葉を告げられ、次に目が覚めた時は現代へ戻っていました。
f:id:ELEKINGPIT:20211026021738j:image未来の自分自身を粉々に吹き飛ばすドゥーム。決してこうはならないと誓った。

 

〈2人の騎士〉

今作で特に強調されたのは、ドゥームとトニーの共通点と違いでした。ハイテクな鎧を身に纏い、時代の先を行く発明家の2人。しかし中身が違えば全く違う戦士となります。現代の騎士は何を守り何を重んじているのか? その違いを考えていきましょう。

Dr.ドゥームは何故モーガン・ル・フェイの黒魔術を狙っていたのでしょうか? 実はドゥームの母も優秀な魔術師だったのですが、現在は地獄王メフィストにその魂を捕えられているのです。ドゥーム悲願の目的は母親の魂を解放することにありました。ドゥームはあくまで過去を重んじていることが分かります。

ではトニーは? 恐らく大半の方は言うまでもなくおわかりでしょう。トニーは100年先の未来を作るため、人々の未来をより良くするために未来主義者として戦っています。同じ発明家でありながら、その頭脳を自分のためか、不特定多数の誰かのために使うかが2人をヴィランとヒーローに隔てているのでしょう。

ではそんな2人が100年後の未来へ行ったら? 後半はそんな化学反応を楽しむ実験的な物語のように感じました。提示されたのはある種2人の成れの果てでしょう(トニーは子孫でしたが)。いつまでも自分の生にしがみつき、過去に囚われ続けている未来のドゥーム。知識と力に溺れ、進化を忘れた未来のアイアンマン。どちらも2人が成りうる姿といえます。2人が「現在」に囚われ続けた成れの果てと言えます。しかし本作は同時にそれを否定しました。未来の2人はそれぞれ倒されてしまったのです。ドゥームを見れば分かりやすいですが、未来の姿を2人は拒否したのです。ここで示された2人の共通点は、「信念に違いがあれど進化し続ける存在」なのでしょう。