アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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ORIGINAL SIN HULK vs IRON MAN

変化の耐えないMARVELユニバースですが、ことMARVEL NOW!期(2012年後半〜2016年頃)ほど大波が続いた時期は多くないでしょう。アベンジャーズと銀河評議会の共闘を描いたインフィニティ、X-Menアベンジャーズが反転してヴィランになるAXIS、MARVELユニバース史上最大規模のクロスオーバーイベント、シークレット・ウォーズetc。そんな大型イベントの間に行われたのが、2014年のクロスオーバー、ORIGINAL SINです。宇宙戦争や全ユニバース消滅の危機に比べると小規模に思えますが、アベンジャーズ達が隠していた「原罪」が白日の元に晒される重要なイベント。現在まで影響を及ぼした「秘密」もあり、MARVEL NOW!期以外の時期ならより大きな禍根を残したのではないかと思わせるほど。今回紹介するORIGINAL SIN HULK vs IRON MANはそのタイイン(サイドストーリー)です。ORIGINAL SIN本編は日本語版も発売されておりますので、ぜひそちらもあわせてお楽しみください。
f:id:ELEKINGPIT:20211113233109j:imageORIGINAL SIN HULK vs IRON MAN

 

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〈あらすじ〉

全知全能の観測者ウォッチャーが殺された。蓄えられた秘密が解放され、ヒーロー達の「原罪」が暴かれる。ハルク誕生の「秘密」を知ったバナーは、トニーへアベンジすることを決意。最強のハルクの力を使うのだった。

 

〈科学者のプライド〉

秘密が解放された瞬間、バナー博士にはハルクが誕生した時の記憶が掘り起こされていました。それも当時のトニーの記憶です。それは遡ること何年か前。バナー博士はアメリカ軍の依頼でガンマ爆弾を開発していました。当然アメリカ軍としてはコストパフォーマンスと威力を求めますが、バナー博士はこれを拒否。博士にとってガンマ線の開発とは、癌の除去等将来の研究に役立てるため。政府のために殺人兵器をつくるのも不本意なのです。それを聞いたトニーは助け舟を出します。当時のトニーもまた米軍から依頼を受けて兵器開発をしていました。博士は助けを拒否しますが、トニーは博士に無許可で爆弾に手を加えたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20211114003439j:imageガンマ爆弾を無許可で改ざんされていた証拠を発見するバナー博士。これが原因でハルクが誕生していたのなら許しておくわけにはいかない。

 

一方トニーもバナー博士が「秘密」を知ったと予想していました。恐らくハルクが自分を殺しにくるだろう。防衛都市トロイで対ハルクの準備を進めました。当時のことを鮮明に覚えていないトニーは記録映像を発見し、そこである真実に気付きます。瞬間、ハルクがトニーを襲撃。トロイの機能と新型アーマーを駆使して迎撃します。どうやらバナー博士はトニーがたどり着いた真実は知らない様子。何とか説得しようとしますが、準備万端のトニーすらハルクには勝てませんでした。
f:id:ELEKINGPIT:20211114011101j:imageハルクに敗北し、拘束されるトニー。自分の罪をその身で思い知らせねば。

 

ここでトニーは真実を話します。実はバナー博士のガンマ爆弾には重大な欠陥があり、このまま実験を続ければ博士が死んでいただろうことをトニーは見抜いていたのです。バナー博士のプライドを守る為にも本人には知らせずに爆弾を改造していました。しかし中でも唯ー直せなかったのが、ガンマ爆弾のせいで遺伝子配列がめちゃくちゃになること。トニーがいなければバナー博士は死んでいたかもしれないのです。真実を知ったバナー博士は愕然とします。バナー博士がプライドを高くしなければこうはならなかったかも……と思わざるを得ません。
f:id:ELEKINGPIT:20211114031416j:imageガンマ爆弾を改造するトニー。これがなければ多大な被害が出ていただろう。

〈2人の罪と罰

オリジナルシン本編は、「罪と罰」「因果応報」のような意味合いの強いストーリーが展開されたと思います。それはこのタイインも同様。今回はトニーとハルクの「罪と罰」について考えたいと思います。

トニーの罪とはなんでしょうか? これは恐らくガンマ爆弾に手を加えたことでしょう。作中最大の謎として扱われており、記録映像を見るまでトニーもそう思っていたようです。そしてトニーの受けた罰とは、「さらなる真実」を隠し続けることだと考えています。終盤、トニーはガンマ爆弾に関するメールをバナー博士へ送っていたことを思い出します。なんとそのメールではハルクの誕生を予測しており、バナー博士への警告メッセージだったのです。しかしバナー博士はそれを開きもせず実験を行ってしまいました。メールさえ開けばバナー博士の人生は大きく変わっていたかもしれない。この残酷な真実を秘めておくため、トニーは誰にも話さないと誓います。

バナー博士の罪はなんでしょうか? 当時のハルクは高い知能を有し、パワーも計り知れません。それを使ってトロイを襲撃したことでしょう。アルノや施設なども巻き込まれ、死者が出ていてもおかしくないほどでした。そして受けた罪は、トニーを許すことかもしれません。1度振り上げた拳を下ろすのは難しいものです。ましてや相手が実は全部自分のために行動したのだと知ると。トニーを許すとは自分を「理性」で納得させる必要があります。ハルクのパワーの源である「怒り」を封じる行為であり、ハルクがそれを行うのは自分を弱体化させることと等しいはずです。

トニーとバナー博士には多くの共通点があり、また互いを科学者としてライバル心を燃やしていました。しかし今回顕になったのは、2人の違いです。一方で大きく強調された共通点もあります。それはプライドの高さ。2人の罪と罰にも現れている通り、2人はプライドが高いからこそ素晴らしい発明をし、また今回のような事件が起こってしまうのです。あえて教訓を述べるなら、そのプライドを少しでも低くして仲間を頼ることが大切、ということでしょう。