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MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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ULTIMATUM SPIDER-MAN REQUIEM

Ultimatumのその後を描いたUltimatum Requiemも今作が最後となりました。Ultimatum本編ではその死が示唆されたスパイダーマン。その鎮魂を願うのは、あの名物キャラクターでした。未曾有の天変地異だからこそ光を照らしたヒーローへ送る最大の賛辞に注目です。
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Ultimatum (English Edition)

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〈あらすじ〉

日に照らされたニューヨークは、生々しい傷跡を露わにした。2日前まで世界で最も栄えていた街は見る影もなく瀕死となっていた。デイリービューグルの復刊を目指すジェイムソンは、あの大津波の日に見た光景からある考えに至っていた。スパイダーマンここ真のヒーローなのだと。

 

〈今はただ〉

マグニートーの天変地異が起きた次の日、避難していたJ・ジョナ・ジェイムソンはデイリービューグル社のビルを訪れていました。家族を失ったジェイムソンが脳裏に刻んだのは、恐るべき天災でも人々の悲鳴でもありません。スパイダーマンです。あの時自分を助けてくれたヒーローの姿です。JJJは自らが発行した記事を見つめ、過去の自分を恥じます。スパイダーマンは脅威と書かれた見出しの多くはJJJが書いたもの。あれほど非難していたにも関わらず、まるでそんなこと今まで無かったかのように助けてくれたヒーローを、自分はこれでもかと罵っていた。なんという恥か。現状では紙の新聞は発行出来ないとして、Web上に記事をアップすることはできるようです。JJJは素早くキーボードを叩き始めました。今や生死不明となったスパイダーマンへ、誠心誠意謝罪をせねば。スパイダーマンこそヒーローだと今すぐ知らせねば。JJJは過去記事を書いた出来事を思い出します。例えばあれは少し前のこと、自分の記事では、スパイダーマンがハイドラを率いてアイアンマンを襲撃したとあります。しかし今思い返すと、あれはアイアンマンと協力してハイドラを倒そうとしていたに違いないでしょう。生身のトニー・スタークを狙い、拉致監禁しアーマー作成を強制しようと企んでいたハイドラ。直後にスパイダーマンが現れ協力関係にあったのかと考えていましたが、あれはむしろトニーがアーマーを着用するまで時間稼ぎをしていたに違いありません。
f:id:ELEKINGPIT:20230809190310j:imageアイアンマンと共にハイドラを倒したスパイダーマン。JJJの推測と現実は大きくズレていた……?

 

例えばあれは数ヶ月以上前のこと。ハルクとそれを追うSHIELDが交戦していました。悲鳴が響き渡る中颯爽と現れたのはスパイダーマンです。ところがスパイダーマンとハルクが少しの間戦うと、ハルクがたちまち人間の姿に戻ったではありませんか。JJJはこの出来事からスパイダーマンがハルクを引き連れニューヨークを襲撃したと報じていました。しかし今思い返すと真相は全くの逆。あの時ハルクが人間の姿に戻ったのは、スクールバスを持ち上げようとした瞬間でした。スパイダーマンがハルクを引き連れたのではなく、スパイダーマンがいなければむしろ子どもたちが犠牲になっていた可能性も否めません。そして再びハルクが暴れだしたのは、その後スパイダーマンの制止も聞かず銃撃したSHIELDが原因でしょう。スパイダーマンはハルクを引き連れニューヨークを襲ったのではなく、ハルクを止めようと勇敢にも戦っていたではないか。こうして振り返ると、スパイダーマンは脅威と報じた事件は皆スパイダーマンが脅威と戦った事件。キーボードを叩く手は止まりません。今やそんなスパイダーマンも安否不明。生きていることを信じ、偉大なヒーローだと迎える準備をせねばなりません。同刻、瓦礫の山となったニューヨークでは復旧作業が続いていました。生き残ったヒーローたちも復旧作業の協力を惜しまず、全員が一丸となってあの頃を活気を取り戻そうと邁進します。キャップが瓦礫の下から蜘蛛のマークを見つけたのはそんな時でした。急いで掘り起こすと、そこにはマスクを失ったスパイダーマンがゆっくりと瞼を開けようとしていました。世界はあまりに多くを失ってしまった。しかしこの大災害で偉大なヒーローを失いはしなかったようです。
f:id:ELEKINGPIT:20230810082220j:image2人のヒーローに見守られながら目覚めるスパイダーマン。悲劇ばかりの世界で、それでもスパイダーマンだけは失われなかった。

 

〈決して失うことは無い〉

アルティメイタムであまりにも多くを失ったアルティメットユニバース。その後を描いたUltimatum Requiemでは多くが失ったものへ焦点を当て、その悲劇を表していました。一方今作で焦点を当てられたのは悲劇ではありませんでした。今作の主役は過去スパイダーマンが行った数々のヒーロー活動です。スパイダーマンを脅威と断じ、多くの記事を発行してきたJJJさえ偉大なヒーローと改めるほどの功績の数々です。ヒーローに助けられた人々は、それほど力強い勇姿を脳裏に刻んできたのでしょう。X-Menファンタスティック・フォーも解散し、多くのヒーローが失われたアルティメットユニバース。しかし今作では決して失うことは無い、ヒーローの生きた証が示されました。この悲劇ばかりの世界で、恐らく今後も悲劇は続くでしょう。それでも私たちは、ヒーローが一丸となってガー・ラク・タスを退けたことを知っています。平行世界を旅してその危機を救ったことも知っています。枚挙に遑がないほどのヒーローとしての証を私たちは知っています。例え宇宙を滅ぼすほどの脅威が迫ったとして、私たちがヒーローの生きた証を知る限り決してこの世界から「ヒーロー」は失われないのです。