アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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ULTIMATE HULK vs IRON MAN:ULTIMATE HUMAN

時にMARVELコミックではヒーロー同士の戦いが描かれます。シビルウォーアベンジャーズvs X-Menはまさにそれを象徴した大型イベントでしょう。ヒーローvsヒーローという禁断の戦いにどこか罪悪感を覚えながらワクワクした人も多いはず。そんなヒーロー同士の対決も今や数多く描かれており、中でもキャプテン・アメリカとアイアンマン、アベンジャーズとハルクのような名シーンまで生まれているほど。今回紹介するULTIMATE HULK vs IRON MAN:ULTIMATE HUMANはアルティメットユニバースで描かれたハルクとアイアンマンの戦いです。正史世界やMCUでも描かれたハルクvsアイアンマン。アルティメットユニバースではどのような戦いが繰り広げられたのでしょうか?
f:id:ELEKINGPIT:20211202122315j:imageULTIMATE HULK vs IRON MAN:ULTIMATE HUMAN

 

〈あらすじ〉

大企業のCEOにして天才発明家のトニー・スタークを訪ねる人物がいた。ブルース・バナーだ。バナー博士はトニーへ二度とハルク化しないため研究を依頼したのだ。ハルクを永遠に封印するため、地球でもトップクラスの天才が動き出す。

 

〈究極のその先へ〉

アルティメットユニバースのハルクは、超人血清を再現しようとした結果生まれた産物です。バナー博士にとってハルクは失敗作ではないと豪語する傑作のようですが、1度暴走すると市民をも殺しかねない危険な存在。2度とハルク化しないようその封印を決心しました。そこでナノテクノロジー研究の第一人者であり、パワードスーツ制御のためにナノマシンを接種しているトニーへ協力を求めたのです。バナー博士の必死な訴えでトニーはすぐさま動き始めました。パワードスーツ開発のために使っている研究所で早速ハルク化の原理を解明するところからスタートです。どうやらバナー博士の過剰なストレスに反応し、細胞単位で変異を起こしている様子。そこでハルクへストレス抑制剤とナノマシンを大量に打ち込み動きを抑えようとしますが、ここでトニーは驚くべき発見をします。なんとハルクはあらゆる状況に適合、進化できる能力があるのです。過酷すぎる状況ならば動きが鈍るのではと予測したトニーは金星と同じ環境の部屋に閉じ込めるのですが、あっという間に強化ガラスを突き破る勢い。暴走状態のハルクを止めるため、トニーは命懸けで戦うこととしました。一方、その隠しカメラからその実験を眺める人物が。
f:id:ELEKINGPIT:20211204235204j:image暴走するハルクと戦うアイアンマン。あらゆる環境に適応するハルクを倒す術はあるのか?

 

バナー博士が目を覚ましたのは、それから数日後のことでした。トニーは実験の失敗を謝りながらティラノサウルスだって動けないほどのナノマシンを注入したと言います。恐らくこれでどんなストレス化に置かれてもハルク化しないだろうとトニーは豪語します。その瞬間、施設中に催眠ガスが散布されました。さらに重武装した人達が一斉に攻撃を開始、トニーとバナー博士は瞬く間に敵に捕まってしまいました。椅子に縛られながら薬でコクコクと眠る2人を見つめ、車椅子に座る「リーダー」は改めて究極の目的を思い返します。
f:id:ELEKINGPIT:20211204231922j:image囚われたトニーとバナー博士を見つめるリーダー。そこにはリーダーにとって究極の目的があった。

 

それは今から十数年ほど前のこと。MI6に務めるベテラン諜報員のピーター・ウィズダムは、イギリス国防の新たな計画を主導していました。上司も認めるほど優秀なウィズダムですが、その華々しい経歴はある事件で崩れ始めます。アメリカ、特にニューヨークで次々と現れる超人。中でもアイアンマンの登場は、なんの能力も持たない一般人がヒーローになるという衝撃的なものでした。そこでEUは協力して現代の超人血清を作り、その第1号としてロンドンに新ヒーローを誕生させようとしていました。ところがこれはウィズダムの計画とほぼ同じもの。それも血清の研究は既にウィズダム個人のものより大幅に進んでおり、MI6としてもそちらを採用する流れとなっています。ウィズダムは自身の計画の有用性を証明するため、血清を自らの体に投与。ところが血清の作用はウィズダムの予想と全く違うものでした。頭部は肥大化し、車椅子が手放せない生活に。一方射程範囲内なら考えるだけで人を殺せる殺人思念を獲得します。しかしMI6はそんなウィズダムを危険視、即刻解雇を言い渡しました。こうしてウィズダムは「リーダー」を名乗りヴィラン化。MI6に自らの正しさを証明するため、究極の人間となる道を模索し続けていました。
f:id:ELEKINGPIT:20211205001127j:image究極の人間を目指すリーダー。ハルク血清とトニーの血中ナノマシンを組み合わせることで悲願を達成させようとしていた。

 

先に目が覚めたトニーは、バナー博士と自分が大量の血を抜かれていることに気づきます。このままでは出血多量で死ぬ恐れも。既に血中ナノマシンの多くを失ったトニーはアーマーを制御することも困難になっていました。そこで目を覚ましたバナー博士へ、ハルクに変身して状況を打破するよう頼みます。トニーの血中ナノマシンで、バナー博士の体内に打ち込まれたハルク抑制ナノマシンを無効化しようというのです。もし再びハルク化すれば、ハルクはナノマシンの働きすら適合してしまうでしょう。トニーが開発したのはあくまでハルク化を抑制するナノマシン。それすら適合されてしまえば、もはや防ぐ手立てはありません。ここで死ぬか、それとも永遠にハルクと共に生きるか、バナー博士に究極の2択が突きつけられます。答えは1つしかありませんでした。
f:id:ELEKINGPIT:20211205002658j:imageこの窮地を脱するため、ハルク化するバナー博士。究極の生物がリーダーへ牙をむく。

 

〈究極を目指すために〉

今回の作品での大きな主題は、やはり「究極」の意味でしょう。超人血清の試作から究極の生物へと変貌したバナー博士。ナノマシンという究極の発明品でアイアンマンとなったトニー。MI6に認めさせるために究極の血清の完成を目指すリーダー。究極とは、辞書的な意味でいえば「物事を突き詰めて行き着いた最終地点」といったところでしょうか。しかし今作で示されたのは、「究極」の意味が三者三様だったということでした。

バナー博士やトニーにとって、それはどのような意味でしょうか? それは単に「最終地点」だけではありません。確かに常に進化し続けるハルクは究極の生物でしょう。確かに思考だけで機械を操作する生体ナノマシンは究極の発明品でしょう。しかし暴走の危険性や不安定性が大いにあるなどの欠点があるのもまた事実。一見完璧に思える生体ナノマシンも、血中量次第で簡単に機能不全になるなどの弱点が顕になっていました。2人にとって究極とは、「現時点での究極」であり、「さらにその先の余地を残している」状態なのです。言葉にしてしまえば当たり前のことですが、リーダーにとっての「究極」とは誰かからの評価にほかなりません。究極というより「すごい」のようなざっくりとした褒め言葉でした。そもそもトニーもバナー博士も自らの研究を究極と表しておらず、その言葉を使い続けたのはリーダーのみ。あくまで自分の名声のため、肥大化した承認欲求こそがリーダーの究極点だったのでしょう。