アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

MENU

IRON MAN #197〜#199

前回と前々回にてそれぞれの越えるべき壁を乗り越えたトニーとローディ。しかしこの物語には最大の障壁とも言うべき存在がいました。オバディア・ステインです。トニーの会社を乗っ取り、自殺寸前まで追い込めた張本人です。今や最後の壁として君臨するオバディア。最終決戦に向け、物語は加速的に進み始めます。
f:id:ELEKINGPIT:20220425141519j:image

 

 

 

前回はこちらelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

ベサニー・ケイブが拐われた! オバディア・ステインの陰謀により次々と誘拐されるのは、かつてトニーと友情を結んだ仲間たちだった。更にマキシマム・サーキットを破壊するために送り込まれたサーキット・ブレイカーは、アイアンマン1人で勝てる相手ではなかった。再起の兆しを見せるトニーへ、オバディアが打った一手はチェックメイトに至るのか?

 

〈オバディアの一手〉

再起を果たしたトニーに、ある日ベサニー・ケイブが誘拐されたという連絡が入ります。ベサニーとはトニーの元パートナーであり、DEMON IN A BOTTLE編では禁酒を支えた人物です。大の男でも返り討ちにしてしまうほどのベサニーが拐われたとは、恐らく集団で襲いかかったに違いありません。犯人は恐らくオバディアが雇った傭兵の一味でしょう。急ぎ旧式のアーマーを着用して追うトニーですが、最新型の軍用ヘリにはアイアンマンの速度ですら追いつくことができません。悔しさとイライラを滲ませながら次の一手を考えるトニーですが、有効な策が何も思い浮かばないまま時間ばかり過ぎてしまいます。ベサニーを誘拐したならばなにか目的があるはず、恐らく無意味に殺すことはしないだろうと無事を祈るしかありません。そんな時、上空からマキシマム・サーキットへ突撃しようとする飛翔体をローディが捕捉します。アーウィン博士らと共に立ち上げた会社をあっさりと破壊されるわけにはいきません。ミサイルを打ち込みながら突っ込んでくる飛翔体へ、トニーとローディの2大アイアンマンが立ち向かいました。
f:id:ELEKINGPIT:20220427015054j:image2大アイアンマンvs謎の飛翔体。鋼鉄の装甲をも溶かすレーザー光線に、高威力のミサイルを連射する超危険な兵器に立ち向かう術とは?

 

同刻、オバディアはステイン社(旧スターク社)から2人のアイアンマンが戦う様子を観察していました。謎の飛翔体は、サーキット・ブレイカーと名づけられたステイン社の秘密兵器です。トニーの元パートナーであり現在は宿敵マダム・マスクと手を組んだオバディアは、自らの過去を語り始めます。オバディアは8歳の頃、ギャンブルにのめり込んだ父が目の前でロシアンルーレットを始め、自殺した姿を目撃。信頼していた唯一の肉親の死に凄まじいトラウマを覚えたオバディアは、以来一切髪の毛が生えないほどの深い心の傷を負います。それまではごく普通の子どもだったオバディアは、以来人生はゲームに過ぎないという境地に辿り着きます。チェスが得意だったオバディアは、その類まれなる頭脳を生かして、まるで駒を動かすように様々な策略を張り巡らせることで現在の地位に立ちます。そしてトニーを再びアルコール中毒に堕とし、この地位を磐石なものにしようとしていたのです。サーキット・ブレイカーの敗北を知ったオバディアは、作戦を次の段階へ移します。アーボガスト夫人やペッパーらトニーと親交のあった人々を次々と誘拐、ジワジワとトニーを孤立させます。大切な物や人を奪えば人間は想像以上に脆いということを、オバディアは誰よりも知っていました。それはあまりにも残酷で卑怯な一手でした。トニーを再びアルコール中毒者に陥れるには? 目の前で親しい人を殺せば良いのです。
f:id:ELEKINGPIT:20220427020827j:imageトニーの目の前で爆破されるマキシマム・サーキット。再びトニーの心をくじくため、残忍非道な殺人が行われた。

 

〈人生とはゲームである〉

最初はチェスのコマを模したヴィラン軍団の「キング」として登場し、以来様々な方法でトニーに立ち塞がったオバディア。トニーの物語史上間違いなくトニーを最も追い詰めたヴィランであり、策略家として自分は直接手を汚さない手段はマンダリン等他の宿敵とは違った印象があります。MCU1作目のアイアンマン(無印)でもラスボスとして描かれ、その残忍っぷりが描かれたオバディア。ではオバディアの強さとはなんでしょうか? 明かされた過去やこれまでの行動を元に考えたいと思います。

人生とはゲームである、という言葉は、目の前で父が自殺したオバディアが悟ったいわば座右の銘です。人生とは所詮ゲームに過ぎず。上手く駒を進めた者こそが勝者になるという考え方です。しかしチェスと違う点は、指し手自身も駒である、ということでしょう。チェスト違い、このゲームは駒それぞれに意思があり自らの考えで動きます。ならばそれらを束ねて動かすことが出来れば、このゲームの「指し手」になれるのです。オバディアにはそれができる頭脳とカリスマ性がありました。しかしそれだけがオバディアの強さではありません。

さて、皆さんは取引において最も大事なこととはなんだと考えますか? 私はリスクに見合ったリターンが得られるかどうかの見極めであると考えています。自分がどれほどの損害を負えばどれほどの利益を出せるのか。具体的な数字がない事案であればあるほどその見極めは重要です。一方で、見極めることさえできれば相手の動きを先読みした動きが出来ることでしょう。相手に利があるのは○○であるから、私は××すればそれを阻止できるだろう、といった具合です。損得を何度も勘定し、利害を計り、取引を進めるのです。トニーのいわゆる「未来視」とはこの能力が極めて高いからこそできる芸当でしょう。しかしトニーはオバディアの行動の先々を読むことが出来ず、結果ホームレスまで身を堕とすこととなりました。何故か? オバディアの取引には損得勘定がない、または壊れているからでは無いでしょうか? 自分がより危険になる選択をあえて取ることで動きを読まれにくくしているのです。例えばオバディアが自らの正体をトニーへ明かす回、後の展開を思えばその必要は一切なかったはずです。またIRON MAN #172では書類1枚で会社の乗っ取りが失敗するかもしれない状況でした。あえてなんのリターンもないリスクを背負うことで、オバディアの行動はよりミステリアスになったと言えます。オバディアはこのゲームを指し手として最も楽しんでいたのです。