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【第6回】MCU版アイアンマンの2つのオリジン

今や最も成功したヒーロー映画に名を連ねるであろう、MCU版アイアンマン。世界中の多くの人々がそのストーリーに熱狂し、トニー・スタークに魅了されたことでしょう。そんなMCU版アイアンマンは、コミック版とは少し違う経緯でヒーローとなりました。今回はMCU版アイアンマンのオリジンから、いつヒーローとなったのかを考えたと思います。今回も気まぐれ不定期更新のオタク語りをするコラムとなっております。
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前回のコラムはこちらelekingpit.hatenablog.com

 

〈2つのオリジン〉

MCU版アイアンマンには、2つのオリジンがあると考えることができます。1つはアフガニスタンでテロリストに捕まった事件、もう1つはラストシーンでトニーが「私がアイアンマンだ」と宣言するシーンです。それぞれ順番に見ていきましょう。まずは1つ目のオリジンから。アフガニスタンでテロリストに捕らえられたトニーは、新兵器「ジェリコ」を作るよう強要されます。ところが共に捕らえられたインセンと共同開発したのは小型のアーク・リアクターであり、パワードスーツでした。その最後の起動時間を稼ぐため、インセンは犠牲となってしまいます。その時、インセンはトニーへある言葉を送ります。「その命、無駄に使うな」と。トニーは弔い合戦とばかりにテロリストを焼き払い脱出しました。コミック版でもほとんど同じ流れですが、インセンの遺言は描かれていません。インセンの遺言がMCU版アイアンマンへ大きな影響をあたえたことは間違いないでしょう。帰国後にトニーが行ったことは、さらなるパワードスーツの進化と兵器産業の打ち止めでした。兵器産業の打ち止めは、テロリストも自社兵器を使っていた現状や先の事件の反省からくるものと思われます。ではパワードスーツの改良は何故行ったのでしょうか? 当時の世界ではヴィランが跋扈していませんでした。正確には違うかもしれませんが、それは後付けで設定されたもので制作当時の設定ではなかったでしょう。では何故トニーはパワードスーツを改良する必要があったのでしょうか? それは、世界に蔓延る兵器をなくすためです。トニーはパワードスーツを改良した後、テロリストを倒し兵器を破壊する描写がありました。アイアンマンはそのために生まれたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20240308210324j:image戦車を破壊し歩き去るアイアンマン。兵器を破壊し2度と悲劇を生み出さないためにアイアンマンは生まれた。

 

ではもう1つのオリジン、「私はアイアンマンだ」には何から生まれたのでしょうか?アイアンマンは兵器を破壊するためにうまれた存在でした。しかしその目的が変わってしまった事件が作中で描かれてます。オバディア・ステインとアイアンモンガーです。オバディアといえば、コミック版ではトニーを罠に陥れ、会社を乗っ取った凶悪な人物。トニーはアルコール依存症を悪化させ、アイアンマンさえも引退に追い込みます。そこから復活するには長い時間がかかってしまいました。そんなアイアンマンの再起とその後のヒーローとしての地位を確固たるものにしたオバディアが、今作でも敵として登場したのです。MCU版オバディアは、トニーの右腕でありスターク社副社長という立場でした。しかしその内心はトニーが社長となったことに不満をいだいており、復讐の機会を狙っていました。これは後にトニーが陥ったかもしれないもう1つの可能性です。テロリストに捕まる以前のトニーは、女遊びや賭け事を楽しむ人物として描かれていました。このような遊びに興じるのはスターク社CEOとして、大富豪だからできることでしょう。それはオバディアが自身の思い描いた姿だったに違いありません。金と権力欲に溺れた結果、トニーを嫉妬の眼差しで見ていたオバディア。もしこれが逆の立場であったなら? もしもトニーがテロリストに捕まることなく暮らしていたら? その姿はトニーの反転したものであり、トニーがなったかも知れない可能性がオバディア・ステインなのです。
f:id:ELEKINGPIT:20240309092145j:image胸のアークリアクターを奪い去るオバディア。金と権力欲に溺れた様は、トニーと正反対でありかつてのトニーのあり得た姿だった。

 

自分の反転した敵を倒すというのは、かつての自分を乗り越えることと同じです。それは大富豪として遊んで暮らしていた自分との決別であり、2度と戻らないという覚悟の現れなのですからアイアンマンとアイアンモンガーはそんな2人の違いを対比的に映し出した鏡のような存在となっています。赤と金で塗装されたアイアンマンは、トニーの派手好きによって出来上がったものです。しかしそれが鋼鉄の鎧に血肉を与えました。派手な見た目と派手な装着シーンが描写されたからこそ中にトニー・スタークがいると私達は理屈抜きで悟ることができます。アイアンマンとトニー・スタークを同一の存在として認識できるのです。ではアイアンモンガーはどうでしょうか? 自身の抱え込んだ科学者にアイアンモンガーを作らせたオバディアは、Mark Iを元に制作したせいか、オリジナルのアイアンマンと比べてもかなり大きなパーを着用することとなりました。そのせいかスーツの操縦性能は下がり、かなり大雑把な動きとなってしまいます。外観は鉄を打ち付けたような銀色で派手さはなく、むしろ無骨さが全面に出ているでしょう。アイアンモンガーはオバディアの膨れ上がった醜いエゴを表すように巨大で、オバディア自身でさえ完全な制御ができていないのです。スーツと一体となったトニーと、スーツに振り回されるオバディア。2人の差は歴然です。そして事件の後、トニーは新聞の見出しを見て自身のパワードスーツヘアイアンマンという名前がつけられたことを知ります。その後記者会見で「私がアイアンマンだ」と名乗りました。この宣言にはなんの意味があるのでしょうか? トニーはアイアンモンガーどの戦いで知ったのです。悪がテロリストだけでないことを。トニーは正体を公表することで決意表明をしたのでしょう。悪に立ち向かう決意表明です。武器を破壊するための武器であったアイアンマンが、悪を倒し人々を助けるための存在になった。これがトニーの第2のオリジンであり、アイアンマン誕生の瞬間と言えるでしょう。
f:id:ELEKINGPIT:20240309095813j:image正体を公表するトニー。それは覚悟の表れであり、アイアンマン誕生の瞬間だった。

 

〈まとめ〉

アイアンマンが誕生するまでには、2つのオリジンが存在していました。1つはアフガニスタンでテロリストに捕まり、インセンの死と「その命、無駄に使うな」という遺言です。これによりトニーは助かった命をどのように使うか向き合うようになります。パワードスーツを改良し、武器や戦争を破壊するための武器としてアイアンマンは活動するようになります。テロリストを撃退するシーンは印象的ですね。そしてもう1つのオリジンは「私がアイアンマンだ」というセリフです。オバディア・ステインという反転した自分の姿であり、あり得たかもしれない自分を打ち倒すことでトニーは心理的に大きな成長を果たします。悪という存在を認識し、それを打ち倒す覚悟が生まれたのです。コミック版アイアンマンとの違いをあえて述べるなら、MCU版アイアンマンのほうがより悪を意識しているということでしょうか。MCU版アイアンマンは、インセンの遺言をもとに~がどのように解釈したか、という物語だと私は考えています。それが後のアベンジャーズへと繋がり、エンドゲームに繋がるのです。トニーは自らの命を誰かを助けるために、インセンが死んだ時と同じように命を使おうとするようになりました。コミック版ではインセンの遺言はなかったため、自己犠牲を意識するシーンは多々ありますがMCU版のほうが印象的になってしまいます。前回のコラムとあわさて、コミック版とMCU版アイアンマンそれぞれの誕生の経緯を考えてみました。これを踏まえてもう1度物語に触れることで、少しでも新しい視点が増えたら幸いです。