アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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STAR WARS DARTH VADER AND THE GHOST PRISON

パルパティーンの陰謀によって樹立された銀河帝国ジェダイがクローン戦争に参加した時点で滅亡は免れなかったと言われるほど非の打ち所のない謀略は、万雷の拍手をもって独裁政治をスタートさせました。しかし盤石に見える銀河帝国も、実は崩壊の危機に見舞われていたことをご存知でしょうか? 今作STAR WARS DARTH VADER AND THE GHOST PRISONは、樹立直後の帝国を襲った大事件を描く、レジェンズ(非正史)のミニシリーズです。ターキンと皇帝の命にすら手をかけた未曾有のテロ。ダース・ベイダージェダイに対する思いが垣間見得るなど、注目すべき点は多いでしょう。
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〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

銀河を支配した帝国は記念すべき日を迎えていた。帝国アカデミーの卒業式が行われていたのだ。

翌日、コルサントの広場を大爆発が襲う。かつてのクローン戦争の英雄がクーデターを起こした瞬間だった。

皇帝にすら死が迫る時、たった3人の帝国将校が立ち上がる。失敗すれば銀河に再び大いなる混沌が覆う、最後の計画を企てて……

 

銀河帝国の行方〉

帝国士官候補生のトームは、帝国アカデミーの卒業式を晴れ晴れとした表情で迎えていました。火傷跡が生々しく残るトームは、帝国に強い忠誠心を持つ優秀な人物。卒業後は中尉の階級が与えられることとなっており、初任務は今か今かと待ちわびているほどです。卒業式後は友人と記念パーティに参加するなど交友関係も恵まれている様子。そんな充実した日々を過ごすトームに転機が訪れます。それは友人の「プロト・TIEファイターに乗ろう」という提案から始まりました。元はパイロットを志しながら、左腕がないせいで諦めていたトームにとってはどれほど魅力的に思えたことでしょう。決まりきったような注意を一言二言呟いてしばらく後には、コックピットへ座っていました。いつか読んだマニュアル通りに装置を起動させていくトーム。しかしエンジンは作動せず、コックピットのハッチも開かなくなってしまいました。窓の向こうには友人の申し訳なさそうな表情が。1人取り残されたトームは、すぐにでも脱出しなければと緊急脱出装置を起動させました。トームの運命はここから大きく変わっていくことになるのです。
f:id:ELEKINGPIT:20220613230304j:image緊急脱出装置でプロト・TIEファイターから飛び出るトーム。幸か不幸か、これがトームの人生の分かれ目に。

 

着地のことを考える余裕が無いほど焦っていたトームは、帝国広場から爆音を耳にします。地上に迫るにつれ、黒煙と炎が広がっている光景が見えます。爆風に煽られたおかげか、幸い軽傷で地上に着地したトーム。驚くべきことに、そこではストームトルーパーの大部隊と所属不明の軍隊が銃撃戦を行っているではありませんか。最前線にはあのダース・ベイダーライトセイバーを振るっています。混乱しながらも敵の強襲だと理解したトームは、拳銃型のブラスターを手に自らも戦いに参加しました。そんな時です。傍らから聞き覚えのある声が聞こえてきます。瀕死の敵兵が何か話しかけているようです。ヘルメットを被っていた敵兵は、近寄るトームに顔を見せます。なんとその顔はトームをプロト・TIEファイターに乗せた友人。銀河のためを思うなら帝国を裏切れ。必死に訴えかける友人を、トームは帝国の忠誠心から銃殺しました。この様子を目撃したベイダー卿から認められ、以降トームはベイダー卿の側近の1人として行動を共にします。
f:id:ELEKINGPIT:20220614123028j:image最前線で獅子奮迅の活躍を見せるダース・ベイダー。それでもテロリストの急襲に帝国軍は敗走を重ねていた。

 

ベイダー卿によると、強襲が開始されたと同時に皇帝の宮殿に細菌兵器がバラ撒かれたとの事。この混乱で通信網も断絶し、ターキンとも連絡が取れません。更に悪いことに、皇帝がウイルスに感染、瀕死に近い状態だと言うのです。皇帝の危篤は出来上がったばかりの帝国を揺るがしかねません。ベイダー卿は、ウイルスに感染していない最低限の人数で皇帝を匿わねばならないと考えているようでした。ベイダー卿が選んだメンバーは、自身とトーム、そしてモフ(銀河の宙域を総督する司令官)でサイボーグのトラチタです。しかしどうやらトラチタはトームを信頼しきれていない様子。何故なら現在帝国に牙を向けるテロリストの首魁は、トームが最も尊敬する帝国アカデミーの校長ゲンティスだったのです。呆然とするトーム。しかし銀河帝国を裏切ったのであれば恩師も親友も敵。トームは忠誠心と覚悟を持って戦いに挑みます。
f:id:ELEKINGPIT:20220614125454j:image帝国を裏切った恩師のゲンティス。同じ帝国に忠誠を誓ったゲンティスに何があったのか?

 

ジェダイ聖堂に皇帝を匿ったベイダー卿は、トームらを率いて「ゴースト・プリズン」と呼ばれる場所へ向かおうとします。ゴースト・プリズンとは、共和国に仇なした重要犯罪者が収容される刑務所です。その特性上、刑務所の場所すらジェダイ評議会レベルの人物でないと知らされないほど。最近ではクローン戦争の重罪人が収容されており、そのほとんどはアナキン・スカイウォーカーというジェダイが捕らえた者ばかりのようです。ベイダー卿アーカイブからゴースト・プリズンの場所を突き止め、船の針路を向けます。どうやら恩赦と引き換えに囚人を解放し、一時自らの部隊として使役しようとしているようです。檻が開いたと同時に暴れ出す囚人を難なく抑え、200人近い手駒を手に入れることに成功。ハイパースペースでゲンティスの懐へ突撃します。
f:id:ELEKINGPIT:20220615005800j:image帝国の敗北が決定的となる直前、ハイパースペースで現れたベイダー卿の部隊。最終決戦の台風の目として、戦況を大きく変えていく。

 

〈失敗の象徴〉

古くはEP5帝国の逆襲など、スターウォーズでは「機械化」は失敗の象徴として描かれます。ベイダー卿の装甲服やグリーバス将軍などは正にその典型と言えるでしょう。今作に登場するモフ、トラチタもクローン戦争中に両腕を失っており、上半身はほとんどサイボーグ化しています。一方トームは片腕を失ってはいるものの、サイボーグ化はしていません。トームとトラチタ、ベイダー卿の差はなんなのでしょうか?

ベイダー卿やグリーバス将軍のように全身を機械化した者には、内なる怒りを内包している場合がほとんどです。実際トラチタはパダワンの作戦ミスが原因で両腕を失う大怪我を負っており、以来全てのジェダイへ激しい憎悪を抱いています。しかしトームにそのような感情は見られません。激しい怒りも憎悪もトームは抱いていないのです。トームは出世欲のために勤勉な優等生となったと心情を吐露していますが、その忠誠心は本物。そして友人の「銀河のためを思うなら」というセリフから、トームは銀河の平和を願っていた、そして目指していたことが分かります。ジェダイによるクーデターを平定し、クローン戦争をも終結させたパルパティーン。その功績は正に銀河へ平和をもたらしたと考えてしまうほど。トームとベイダー卿の差は、そんな内心に基づくものだったのです。