アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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STAR WARS HEIR TO EMPIRE

スローン大提督という人物をご存知でしょうか? 1990年代に発売されたスターウォーズのスピンオフ小説にて登場した人物であり、現在でも知る人ぞ知るキャラクターです。映像化作品に登場していないにも関わらず高い人気を誇るスローン大提督。また登場作品であるスローン三部作は後続のスターウォーズ作品に大きな影響を与え、例えばコルサントの設定もそこから逆輸入されたと言われています。さて、今回紹介するSTAR WARS HEIR TO EMPIREはそんなスローン三部作の第1作目をコミカライズしたもの。レジェンズ作品としても高い人気を持つスローン三部作と大提督の魅力を味わっていきましょう。
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〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

暗黒皇帝パルパティーンが死に、第2デス・スターが破壊されてから5年の歳月が経った。今や銀河の大部分は新共和国が統治し、幾年ぶりの平和を享受していた。

しかし銀河の最深部では未だ帝国の残存艦隊が猛威を奮っていた。中でもスローン大提督は打倒新共和国を掲げ、ついに自らの大部隊を動かし始める。

スローン大提督が発見した新共和国の弱点は、勇敢なる戦士達が築き上げた平和を瞬く間に壊すものだった。時計の針を戻すような戦争に、悪魔のような大提督はほくそ笑むのみだ。帝国の後継者として……

 

〈帝国を継ぐもの〉

銀河内戦から早5年。モンモスマをリーダーとして設立された新共和国は、今や銀河の大半を統治範囲内に収めるほど成長していました。しかし旧共和国のようにジェダイという力を背景にした統治ができないため、その政情は未だ不安定なものです。また、共和国の目の届かないところでは無法地帯のようになっており、設立されたばかりの国家はまだまだ課題山積と言わざるを得ないでしょう。銀河帝国の残存艦隊はそんな共和国の無法地帯で戦力を拡大、スローン大提督を首魁として遂に動き始めました。まずは唯一のジェダイマスターにして銀河内戦の英雄、ルーク・スカイウォーカーを倒さねばなりません。そこでスローン大提督は、かつてジェダイマスターだったジョラス・シボースのクローンを発見。今やダークジェダイ(シス卿ではないが、闇堕ちしたジェダイ)に身を落としたシボースのクローンを利用してルークと戦わせる作戦を立てます。
f:id:ELEKINGPIT:20220809235252j:imageスローン大提督とペレオン艦長。5年の歳月を経て、新共和国を名乗る「反乱軍」を倒す準備が整った。

 

一方コルサントで日々を過ごしていたルークは、妙な予感が頭から離れません。何か銀河の深い部分で、暗黒面のような邪悪な力を感じずにはいられないのです。そして予感が的中したかのようなタイミングで、新共和国軍のある部隊が全滅したとの報せが舞い込んできます。撃退したのは帝国軍。またその直後に皇帝が所持していた武器庫が襲撃されます。帝国残党が新共和国へ戦争を仕掛けようとしているのは明らかでしょう。しかし、銀河内戦で戦力が疲弊しきった今の共和国軍では帝国を迎え撃つほどの余裕はありません。そこでハンは、賞金稼ぎ達へ依頼することを提案。無法者ではありますが腕は確かでしょう。ジャバ・ザ・ハットがいなくなった今、皆働き口に困っているはずです。ハン・ソロのよき友人であるランドーの手を借りて、信頼できそうな賞金稼ぎを探します。とはいえ賞金稼ぎはゴロツキばかり。信頼出来て、かつ傭兵として有用そうな人物となるとそう多くはありません。ランドーが提案したのは、密輸業者のタロン・カード一味でした。同刻、ソロとは別行動を取っていたルークはスターデストロイヤーから必死に逃走していました。あと少し距離を詰められれば、トラクタービームで捕まってしまうギリギリの瀬戸際。どうにかして敵の目を掻い潜ることには成功しましたが、またいつ見つかるか分かりません。しかし運良く密輸業者の船に遭遇、同乗させてもらうこととなりました。Xウィングでなければスターデストロイヤーに追いかけられることもないでしょう。密輸業者の船長は自らをタロン・カードと名乗ります。タロン・カードはルークを歓迎しますが、副船長のマラ・ジェイドは快く思っていないよう。フォース感応者のようですが、ルークに向けられる感情は憎悪ばかりです。さらに、タロンは突如ルークを拘束。拠点としている惑星に着いた途端、牢屋へ押し込めてしまいます。
f:id:ELEKINGPIT:20220810084651j:imageフォースを通じて繋がるマラ・ジェイドとルーク。強いフォースを持ちながら、憎悪ばかりが向けられる。

 

マラにルークを監視させ、ソロとランドーを迎えるタロン。数日前にルーク捕縛の依頼を帝国から受けていましたが、このタイミングで新共和国から使いが来たということは……タロンは内心ほくそ笑んでいたでしょう。どちらが自分にとって「美味しい」のか見極める絶好の機会です。ソロ達がタロンと交渉を始めようとしたその時です。帝国の艦隊が惑星を包囲、ストームトルーパーが地上へ降りてきました。ルークの捕縛をタロンに依頼していましたが、スローン大提督は既にタロンがルークを捕まえていると推測。その捜索を始めたのです。こうなればタロンもどちらに付けばいいかは明白。とはいえ短時間でストームトルーパーから隠れるなど不可能でした。ランドーはどうにか逃れますが、ソロとタロンは呆気なく捕まってしまいます。一方牢屋に閉じ込められていたルークは何とか脱出。追ってきたマラと共に森の中でストームトルーパーの大部隊を目撃します。生き延びるには協力するしかない。そう直感した2人は、森を抜けて町へ出るまでの間サバイバル生活を始めました。その夜、マラは初めてルークへ語りかけます。何故自分がルークを憎んでいるのかを。マラは、元々皇帝直属の部下でした。皇帝の命でかつてはジャバ・ザ・ハットの館に潜入、ルークを初めて見たのはその時だと言います。しかし5年前のエンドアの戦いで皇帝は死亡。以来地を這うような生活を送ります。タロンに拾われてようやく安定したのが半年前。皇帝があの時死んでから……いや、ルーク・スカイウォーカーに殺されてから。自らの人生を狂わせ、ドン底に突き落としたルークをこれ以上ないほど憎んでいたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20220810094424j:image自身を地獄へ叩き落としたルークへ怨念を抱くマラ。それでもサバイバルは続く。

 

時に恐竜のような生物と戦いながら、時にストームトルーパーの部隊と戦いながら、2人はようやく町へ到着します。そこには拘束されたソロとタロンの姿が。マラはルークを変装させ、わざと帝国に捕まえさせます。脱出の隙を見てソロ達を解放させようという作戦です。同じくソロを助けようとしたランドーの狙撃が合図となり、ルークはソロ達を脱出させます。そして急ぎファルコンで宇宙まで。とはいえそこにはスローン大提督率いる帝国艦隊が待ち構えていました。ローグ中隊が救援に駆けつけますが、このまま戦えば数で圧殺されるのは明らか。共和国軍の部隊を一瞬で全滅させた戦略家としての顔も持つスローン大提督から逃れる手はあるのでしょうか?
f:id:ELEKINGPIT:20220810102336j:image閃光の狭間を飛び交うXウィングとTIEファイター。5年前と変わらない光景に、果てなき戦争という言葉を実感させる。

 

〈皇帝が死んだ帝国〉

スターウォーズファンの間ではダース・ベイダーに次ぐ人気を持つとさえ言われるスローン大提督。今作でもそのカリスマ性が遺憾無く発揮されましたが、皇帝のいない帝国軍は、何故スローン大提督を頭として選んだのでしょうか?

スローン大提督と皇帝、あるいはその右腕だったダース・ベイダーの決定的な違いは、部下の扱いでしょう。部下にとっても恐怖の代名詞だったベイダー卿は言わずもがな、皇帝も部下へ過剰な罰を与えることは映画内でも間接的に語られていました。事実上トップ2人が恐怖による統治を行っていた帝国軍の士気が高かったとは思えません。一方スローン大提督は、不必要なほど部下を殺すことはしません。絵画のような戦略から自軍を勝利に導き、部下のミスを許容する寛大さを持ち合わせていました。帝国という最早名前だけの神輿を担ぐためには、恐怖ではなくカリスマが求められたのです。スローン大提督は部下を大切にする、ということはありません。しかし不必要に殺すこともしません。あくまで重大なミスをした人物のみです。我々の感覚からすればそれも十分恐ろしいことですが、当時の帝国軍にとってはこれがどれほど革命的かはベイダー卿や皇帝を見れば明らかでしょう。恐怖を用いない軍のトップ。それだけでも自然とスローン大提督が選ばれた理由をうかがえます。