アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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STAR WARS VADER's QUEST

ダース・ベイダーはどのようにデス・スター破壊犯の名を知ったのか? ルーク・スカイウォーカーに執着するベイダー卿に何があったのか? という問題は、レジェンズでも触れないわけにはいきませんでした。新三部作(EP1〜EP3)全てが公開される前に刊行された本作は、ダース・ベイダー像をより深く描き出しました。短い話数ながら本作独自の視点があり、レジェンズならではの展開も。カノンだけでは描けなかった部分も楽しめるので、比較しながら読むのも一興でしょう。
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カノンでの同時系列elekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

デス・スターが破壊された! 帝国恐怖の象徴が光に飲まれ、多くの反乱同盟軍は戦争の終わりさえ期待していた。

死を免れた暗黒のダース・ベイダー卿は、デス・スターを破壊したパイロットを探し続けていた。怒るべき拷問の末、その名が遂に明かされる。

スカイウォーカー。憤怒のフォースに覆われたシスの暗黒卿は、その名を聞いた者全員へ処刑を宣告する。やがてそれは惑星全土を巻き込む災禍へと広がっていった……

 

〈運命を決めるその名〉

コルサントのとある施設では、凄惨な拷問が行われていました。ダース・ベイダーに雇われた賞金稼ぎが、同盟軍を捕らえデス・スター破壊犯の名を聞き回っていたのです。そして遂に、漏れ出るようにその名が語られました。スカイウォーカー。なんということでしょう。ベイダー卿が滅ぼしたはずの名が受け継がれ、同盟軍に所属しているのです。ベイダー卿はその場で賞金稼ぎさえ惨殺、辛うじて逃れた者も執拗に追いかけるよう命令します。一方、同盟軍基地のあるヤヴィンⅣでは戦勝ムードに包まれ、ルークを英雄として多くの人々が歓迎していました。しかし1人面白くない顔したパイロットの姿が。ジャルは危険な任務を30回以上こなし、TIEファイターを20機近く撃墜させてきたエースパイロットでした。しかしデス・スター襲撃の任務は惑星の風土病にうなされ参加出来ず。ルークが乗ったXウィングは、そんなジャルの愛機だったのです。本来なら勲章もメダルも功績も自分のものだったはず。それを飛び入り参加の若造に掠め取られたのだから面白くない。同僚達に誰がエースパイロットか思い出させねば。功を焦るジャルは、誤報のアラームにさえ敏感に反応し、独断で愛機を駆り出します。ですが誤報なので当然帝国軍の姿はありません。命令無視に無断出撃、本来なら軍法会議さえありうるほどですが、同盟軍はジャルのそれまでの功績を鑑みて辺境惑星との通信役に降格させるのみに留めました。しかしジャルはこの恩情さえ納得いかない様子。派遣された惑星で、酒に浸りながら過去の自慢話と愚痴を聞かせるだけの生活が始まります。f:id:ELEKINGPIT:20230304103409j:image惑星の住民へ任務の自慢ばかりするジャル。無力感とぶつけどころのない怒りがジャルを貶め続けていた。

同盟軍パイロットに憧れる子どもをからかい、やさぐれるように毎日を送っていたジャル。しかしそんな日々も長くは続きませんでした。帝国軍が星を襲ったのです。家々を焼き払い人々を殺し回り、一体帝国軍は何を目的にしているのでしょうか? 命からがら逃げ出したジャンはある名前を耳にします。スカイウォーカー。この星にはベイダー卿の拷問に立ち会った賞金稼ぎが逃げ込んでおり、スカイウォーカーという名前を聞いた可能性があるもの全員を殺し回っていたのです。たったそれだけで町1つが焼け野原になった。ジャルは命の危険も顧みずXウィングへ駆け込みます。一刻も早くルークを見つけ、助けねばなりません。さもなくばベイダー卿は意味もなく人々を殺して回り、やがてルークを殺すに違いないでしょう。ジャンは名誉や名声のためではなく、他人のためにヘルメットを被りました。その頃ルークはとある惑星へ赴いていました。帝国側として知られる惑星ですが、デス・スター破壊を知った君主が是非力を貸して欲しいと頼ってきていたのでした。なんと姫が危険生物の住処である洞窟に閉じ込められたというではありませんか。この救援依頼を上手くこなせば同盟軍に寝返ってくれるかもしれない。上層部の期待を背負いルークは惑星を訪れていたのでした。洞窟の奥にいた姫は直ぐに見つけることが出来ました。しかしルークの姿を見た姫は叫びます。何故ここに来たのか? そう、これは王の罠だったのです。王は王室の中で唯一同盟軍を支持する姫への罰を兼ね、何人か捕らえた同盟軍を帝国へ差し出そうと考えていました。その時、ダース・ベイダーの宇宙船の信号を受信。王は早速準備に勤しみます。その隙を狙い姫を支持する護衛軍の手引きで、ルークは脱出に成功しました。
f:id:ELEKINGPIT:20230307013148j:image姫の護衛軍に連れられ、避難したルーク。しかし邪悪なダース・ベイダーの接近を見過ごすわけにはいかない。

 

数時間後。王室から記録ドロイドの映像が届きます。どうやらこの映像は姫に宛てられたもので、何故か全国民も見れるようになっていました。不思議に思いながら映像を再生すると、そこには衝撃的なものが。なんと王が帝国軍に拷問を受けていたのです。自らの死を悟った王は、姫へ、そして国民へ最後の言葉を送ろうとドロイドに力を借りたのでした。愛する親の凄惨な最期に、姫は怒りを隠そうともしません。ルークや護衛軍と共にダース・ベイダーと戦う覚悟を決めました。いよいよ決戦という時、1機のXウィングが着陸します。なんとジャルが痕跡を辿り、遂にルークを発見したのです。とはいえジャルの警告も意味は無いでしょう。誰もが覚悟を決め、現れた黒衣の怪物と戦おうとしているのですから。ジャルはその姿を見て、自らの役割を理解します。ダース・ベイダーと対峙するルークを傍目に、再びXウィングで離陸したのです。ジャルを臆病者、裏切り者と罵るものさえいました。しかしルークにはジャルがこれから行おうとしていることが分かっているようです。数分後、空を眩い光が覆います。ベイダー卿の母艦スターデストロイヤーが爆発したのです。ジャルが特攻を仕掛けたのだと、誰もが悟ります。その光はやがて反撃の狼煙となり、姫たちに勝利を確信させました。
f:id:ELEKINGPIT:20230307015150j:image空一面に広がる閃光。ジャルの魂の光が、戦いの合図となった。

 

ベイダー卿の野望〉

今作のベイダー卿は、カノンのベイダーダウンと比べ「スカイウォーカー」という名前に執着し、ルークの存在そのものを再重要視しているようには思えませんでした。EP5では刃を振るいながら味方に引き入れようとした姿が描かれていましたが、今作とどのような変化があったのでしょうか? 当時のルークはフォースの扱いに慣れてきた頃ですが、一方でまだまだ未熟な一面もありました。後を思えばこの頃は半端な実力しか身についていなかったのでしょう。そんなルークを見て、ベイダー卿は何を思ったのでしょうか? 離れていても強大に感じるほどのフォースを持つルークですが、実力がそれに追いついていないと分かったとしたら? 恐らくベイダー卿は「まだその時ではない」と悟ったのではないでしょうか。そもそもベイダー卿がルークを引き入れようとした目的はEP5で語られている通り「皇帝を倒し2人で銀河を支配すること」です。ベイダー卿だけでは皇帝を倒せずとも、2人の力を合わせれば……EP5のベイダー卿はそれほどルークの実力に期待していました。しかし今作のルークは未だ発展途上。もちろん訓練を施せばいいだけですが、皇帝の目を掻い潜ってルークを鍛え、共に戦う日まで隠し通すのは現実的ではありません。ベイダー卿は帝国との戦いを経てルークが成長することを期待するしか出来ないのです。だからこそ現時点でのルークには強い執着を抱かず、「スカイウォーカー」という名前に注力したように思えました。この時のルークの勝利は、ベイダー卿の掌の上だったのかも知れません。