アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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AVENGERS ANNUAL 2000

マーベルには多くのヒーローが存在する、ということはもはや言うまでもないでしょう。そんなヒーローたちはそれぞれのキャリアを歩みながらヒーロー活動を行っています。例えばシーハルクは弁護士兼ヒーローだし、アイアンマンの表の顔は世界的大企業の社長です。さて、本作は中でも面白い経歴を持つヒーロー、ヘルキャットに焦点を当てた物語です。21世紀に向けてヘルキャットを再起させる、新たな第1話という意味合いも強い本作。アベンジャーズの活躍と共に戦う姿はヘルキャットの魅力を引き出すのに充分でした。
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〈あらすじ〉

ヒーローとして普通ではありえないような経験をいくつもしてきたヘルキャットは、自らの経験を広めるため自伝コミックを発売しようとしていた。しかしその背後に迫る蛇の牙。死をも経験したヒーローを再び正義に突き動かしたのは何なのか? 忍び寄る大いなる陰謀に、ヘルキャットアベンジャーズの助力を求めた!

 

〈蛇の牙〉

ヘルキャット、パッツィ・ウォーカーは若いながら既に多くの経験を積んだヒーローでした。格闘術の達人としてヒーローになったヘルキャットは、ムーンドラゴンに師事しながらアベンジャーズディフェンダーズといった名チームに加入、激しい戦いの中命を落としてしまいます。ところがただでは死なないのがヘルキャット。地獄でも凄まじい激闘を繰り広げ、つい最近現世へと戻ってきたのです。そんなファンタジーのような半生を振り返り、ヘルキャットは自伝コミックの出版を決意します。コミックの完成にはメディアも注目。発売が迫る中、トークショー番組ではその日に向け大いに盛り上がっていました。番組はそんなヘルキャットへサプライズを用意します。なんと蘇って以来1度も会えていなかった、親友ヘディを引き合わせてくれたのです。というのも、コミックの完成を誰よりも楽しみにしていたヘディはコミックに登場する町をモチーフにした観光都市「センターヴィル」を作っていたのです。当然多くの旧友が協力しており、センターヴィル完成はヘルキャットにとってこの上ないサプライズとなりました。番組終了後2人はさっそくセンターヴィルへ向います。どこか懐かしい雰囲気を漂わせながら、パステル調の色合いの町は正しくヘルキャットがコミックで描いた町そのものです。センターヴィルでは多くの旧友が待っていました。その姿にヘルキャットは大いに感動。友人らの勧めでヘルキャットはセンターヴィルでしばらくの間滞在することにします。センターヴィルでの生活を始めて数日、ヘルキャットは少しづつこの町の異変を感じ取っていました。幼い頃はいつも一緒にいた旧友に違和感を抱いていたのです。その振る舞い、その言動、一見するとおかしなところはありませんが、長年一緒にいた仲だからこそ分かる言語化出来ない違和感。その謎はすぐに解けます。旧友らの正体は、なんと悪魔らが変身した姿だったのです。この街に住む人々全てが悪魔の可能性さえあるでしょう。ヘルキャットは最悪の事態を想定し、ムーンドラゴンを経由しアベンジャーズへ助けを求めます。
f:id:ELEKINGPIT:20230927224851j:imageヘルキャットが見抜いた旧友らの正体。この街は既に悪魔が支配していた?

 

ヘルキャットの救援要請を聞いたアベンジャーズはすぐさま駆けつけようと動き出します。しかし今すぐ動けるのはキャップ、アイアンマン、スカーレット・ウィッチのみ。ムーンドラゴンを加えたとしても4人では少々心もとないでしょう。そこでキャップはサンダーボルツへ協力を要請。ホークアイ、ソングバードを一時的にメンバーへ加え6人体制でセンターヴィルへ乗り込みます。アベンジャーズの調査の結果、ヘルキャットの見立て通り住民の大半は悪魔が変身した姿でした。主要な人物で悪魔になっていないのは恐らく親友のヘディのみ。この街には何かある。それもヘディさえ知らない裏で。アベンジャーズらは調査を続行します。センターヴィルには町外れに場違いな雰囲気を出す背の高い塔のような建物がありました。あそこならば何か証拠が掴めるかも? アベンジャーズの予想はズバリ的中します。塔の内部では、サンズ・オブ・サーペントと呼ばれる悪の組織が悪魔を召喚する儀式を行っていたのです。センターヴィルを悪魔の巣食う町に変えたのもサンズ・オブ・サーペントに違いないでしょう。怒りに震えるアベンジャーズヘルキャット。全員が壁やガラスを突き破り敵へ向かって飛びかかっていました。悪魔さえ味方につける敵ですが、個々の戦闘力はアベンジャーズのそれに遠く及びません。このまま塔を制圧し尋問を行えば事件は解決するでしょう。確かに戦闘力では劣るサンズ・オブ・サーペント。しかし先を見越した動きはアベンジャーズより1枚上手でした。サンズ・オブ・サーペントは切り札として7人の強力な悪魔を召喚、あっという間に逆転してみせます。ヘルキャットを含めてもアベンジャーズは7人。悪魔の力はあまりに強大で、サンズ・オブ・サーペントを相手にする余力さえ残されていません。事態を好転させる程の1手はもうアベンジャーズにはないのです。
f:id:ELEKINGPIT:20230928080132j:image恐るべき悪魔たちと戦うアベンジャーズ。事態は一気にアベンジャーズが不利となった。

 

〈ヒーローの瞬間〉

現世へと戻ってきたヘルキャットの活躍が描かれた本作。単独で奮闘する姿やアベンジャーズと共闘する様子など、ヘルキャットというキャラクターの良さを引き出すに充分な物語だったと言えるでしょう。そんな本作では、「ヒーローはいつヒーローになるのか?」という問いに対する1つの回答が用意されていたように思います。ヒーローはいつヒーローになるのか? その問いを今作を通して紐解いてみましょう。

地獄から戻ってきたヘルキャットは、自伝コミックを執筆し生活していました。そして今作でようやく発売、以降はセンターヴィルでの生活を送ります。蘇ったヘルキャットはそれまでヒーロー活動は行っておらず、事実上引退状態にあったと言えるでしょう。しかし本作の事件をきっかけに当たり前のようにコスチュームをまとい、当たり前のように悪と戦っていました。ヒーローはいつヒーローになるのか? ヘルキャットの姿から分かることは、「その心が動いた瞬間」でしょう。もしあなたが倒れている人を見かけた時、どのように心は動くでしょうか? 助けなければ、と心の中で算段し、実際に動いたのならあなたはその瞬間ヒーローになったと考えることが出来ます。ヒーローの定義は人によって、作品によって様々です。しかしその根本は「人を助けること」にあるはず。ヘルキャットはセンターヴィルという町を、そして親友ヘディを守るために再びコスチュームを身にまといます。そこに大きな葛藤はなく、ごく自然にヒーローとなっていました。ヘルキャットは一切の躊躇無く人を助けることができるのです。

私個人の考えですが、ヒーローとは「状態」だと考えています。普段からヒーローとして生きている人は多くありませんが、「人を助ける」行動をした瞬間は助けられた人にとってヒーローであることは言うまでもないでしょう。この瞬間、人はヒーローになりまた人へと戻っていくのです。私達がヒーローと呼ぶ存在はそれを何度も繰り返している人々だと考えられます。ヒーローはいつヒーローになるのか? ヘルキャットの姿を見ると、それは躊躇無く人を助けることができる時なのでしょう。