アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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STARWARS:QUI-GON & OBI-WAN AURORIENT EXPRESS

スペースオペラの代名詞的作品ともいえるスターウォーズ。今日でも世界中で高い人気を誇っており、多くの媒体でスターウォーズと名の付く作品が作られ続けています。しかし決して全ての作品がスペースオペラとは言えません。中には新たなスターウォーズを想像しようと挑戦した作品も。今作はそんな「挑戦的」な作品の1つ。SFミステリーです。アガサ・クリスティの「オリエント急行殺人事件」を模したタイトルを与えられた本作は、EP1以前のクワイガンとオビワンが主役。スターウォーズが挑むミステリーはどのようなになるのでしょうか?

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〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

今は共和国の時代。銀河の大半を統治する共和国は、正義の使者ジェダイによって1000年もの平和を謳歌していた。しかし平穏な時はやがて共和国の根を腐らせるのに十分すぎる時間だった。

中央政府が利権絡みの賄賂や汚職に塗れているのはもはや誰もが知る事実だ。そしてそれを狙い近づく者が多いことも。

2人のジェダイに与えられたオーロリアン特急船救出任務。そこに張り巡らされたのは、大金を巡る様々な思惑と陰謀だった……

 

〈ミステリー宇宙船〉

ファントム・メナスより数年前。クワイ=ガン・ジンとそのパダワンのオビ=ワン・ケノービは、クルーズ船オーロリエント号の救出任務を遂行しようとしていました。高級クルーズ船として知られるオーロリエント号は、多くの富豪が乗る富の象徴のような宇宙船です。そんなオーロリエント号に届いたのは、船のコントロールを奪い沈没させるという恐るべき予告です。残された時間は約90分。それまでに犯人を見つけだし、阻止せねばならないのです。クルーズ船を守る違法ドロイドたちが、この予告が嘘やイタズラ目的のものでは無いと知らせているようでした。本来クルーズ船如きに違法なバトルドロイドの大群が常駐しているはずがないのです。ドロイド群を倒し、早速調査を開始した2人。まずは違法なバトルドロイドから犯人を探ることにします。メカニック担当から話を聞くと、警備ドロイドはウェイバートンと呼ばれる人物が管轄しているとのこと。そしてウェイバートンは、2人がバトルドロイドに遭遇した区画のドロイドを配備したのがポッドロングと呼ばれる人物と言います。今度はポッドロングへ話を聞こうとすると、なんとジェダイに恐れをなしたのか一目散に逃げだしたではありませんか。どうやらプレッシャー海賊団と呼ばれる海賊と手を組み、クルーズ船の財産を強奪するつもりのようです。逆にこちらが怖くなるような順調っぷり。あとはポッドロングを捕まえれば事件は解決なのですから。ところが追い詰められたポッドロングは、コア爆弾と呼ばれる爆弾の起爆装置をチラつかせます。コア爆弾が起爆すればこんな船なんて一瞬で沈んでしまうでしょう。慎重に対処しようとするクワイガン。ところが後からついてきたウェイバートンの手で、無慈悲にもポッドロングは射殺されてしまいます。
f:id:ELEKINGPIT:20221103013952j:image撃ち抜かれるポッドロング。これで事件は終わりかと思われたが……?

 

犯人の死で終わりを迎えるかと思われたこの事件ですが、まだ重大な問題が残されています。コア爆弾のありかです。ポッドロングが起爆装置をチラつかせたということは、既にコア爆弾は船内に設置されているということ。もしポッドロング以外に犯人がいてもいなくても危険極まりないのです。しかし船内を隈無く捜索している時間はありません。そこでクワイガンは、ポッドロング以外にも犯人がいると考え、関係者の極秘捜査を行うことに。怪しい人物はすぐに見つかりました。ウェイバートンです。オビワンがプレッシャー海賊団とウェイバートンの通信を盗み聞きしたのです。確かにポッドロングの上司に当たるウェイバートンなら爆弾の隠蔽など簡単なはず。しかしウェイバートンをどれだけ尋問しても爆弾の設置場所「知らない」の一点張り。このままでな埒があきません。そこでコア爆弾によく使われる材質の痕跡を追うことに。足跡のように小さく、しかし確実に残っていたコア爆弾の痕跡。それは環境保護活動家のバックと呼ばれる人物の部屋に続いていました。エコテロリストとして名を上げているバック。確かにオーロリエント号のスポンサーは鉱山開拓で資金を得た人物であり、それに対して何らかの主張をしようと悪事に手を染めたとするならば筋は通ります。クワイガンとオビワンがバックの部屋を改めると、予想外のものを発見します。空のブリーフケースです。
f:id:ELEKINGPIT:20221103022954j:image空になった、コア爆弾を隠していたはずのブリーフケース。この事件は幾重にも張り巡らされた陰謀で包まれていた。

 

〈崩壊の序章〉

財宝の強奪、エコテロリストによる強引な訴え……様々な陰謀が絡み合い引き金となった本作の事件。それぞれに命をかけるような事情があり、それらが絡まるように複雑化してしまいました。1つ1つの原因を取り除いたとしてもオーロリエント号は似た運命を辿ったことでしょう。正にライトセイバーでは解決できない問題なのです。本作はライトセイバーを使わずに挑むジェダイ、つまり外交官としてのジェダイの側面が見えました。

時に惑星間で問題が起こった時や共和国が領土を広げようとした時、その交渉役としてジェダイが派遣されることがありました。EP1で描かれたナブー危機も、本来はジェダイと通商連合、ナブーの3者による交渉で問題解決を目指していたはずです。しかし本作でも、ジェダイというだけで顔をしかめる人が登場していました。オーロリエント号の船長もジェダイが来たというだけで異常事態が発生したことを察知しています。要はジェダイ=疫病神的な認識が広まっていたのです。これはとても交渉役、使者としてはイメージが悪い。ジェダイは共和国の警察的な役割も担っているため良くない印象を持つ人も多いのでしょう。実際の警察のように、呼べばすぐ来るような存在でもないため信頼もないのです。問題はこの状態を共和国もジェダイ騎士団も放置していたことにあるでしょう。交渉役として派遣された人物が、銀河中でも厄介の種として扱われ、また信頼性も低い人物なら? 各惑星の自治政府に任せているとはいえ、今回の事件や外交上の問題が起きた場合に対処するのはそんなジェダイなのです。決して小さくない不満を汲み取れなかった共和国政府と、威圧的で閉鎖的なジェダイ騎士団が崩壊した一因にはそのような面もあったのかもしれません。