アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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RUNAWAYS vol3 THE GOOD DIE YOUNG

両親がヴィランだったという衝撃的なストーリーから始まったランナウェイズも、いよいよ今作が第1シリーズ最終回となりました。以降は第2シリーズが連載されますが、物語としてはこれにて一区切り。家出した若者たちはどこへ向かっていくのでしょうか?
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〈あらすじ〉

両親が悪の秘密結社プライドであると知ったランナウェイズ。しかし公権力をも味方につけたプライドから逃れる術はなかった。このまま逃げ続けるには限界がある。そう感じたランナウェイズは遂にプライドと戦う覚悟を決める。裏切り者がいるとも知らずに……

 

〈逃亡から家出へ〉

隠れ家での生活もすっかり慣れたランナウェイズ。突然アレックスの声が響き渡ります。なんとアレックスは、プライドから盗み出したある本の解読に成功したというのです。本は暗号化されており、今まで解読に時間がかかっていました。現在も完全には読めませんが、大まかな内容がわかったのです。その本に記されていたのは、プライドの結成秘話でした。時はアレックス達が産まれる数年前に遡ります。各々の人生を歩んでいた両親らは、ある日突然謎の水中施設へテレポートさせられます。待っていたのはギボリムを名乗る巨大な生物。卓越した人間達を選び、ある計画のために呼び寄せたというのです。その計画とは、全人類を滅ぼし地球をより良い楽園へ作り替えるというものでした。しかし全人類を滅ぼすにはエネルギーが足りない。そこでエネルギーを補給するために協力しろというのです。協力した暁には新たなる楽園で永遠の命を保証する。誇りに思うがいい、これはこの仕事に選ばれたことを。ギボリムはプライドというチーム名を与えます。信じられないような話ですが、ギボリムの言葉には不思議と説得力があります。人類を滅ぼすというのも嘘偽りはないのでしょう。半信半疑だったプライドですが、ギボリムの言う通りに仕事をこなすようになります。そして数年後。プライドのメンバーの1人が子どもを授かりました。予定外の出来事ですが、メンバーは全員ある考えを思いつきます。ギボリムの仕事を子どもたちに受け継がせ、新楽園での暮らしと永遠の命を子どもたちに与えさせる。プライドの結束は固まります。私欲のために行っていた仕事が、子どもたちへの愛へと変わったのです。アレックス達が最初に目撃した悪事も、全ては子どもたちのためを思ってのことでした。
f:id:ELEKINGPIT:20221112232426j:image神の擬人化を名乗るギボリム。その言葉には不思議な真実味が含まれていた。

 

ここまで読み進めた時、隠れ家の入り口から騒がしい物音が。なんと隠れ家が警察に見つかったのです。既に警察はプライドに買収されており、手先も同然。ここで捕まれば今まで逃げ続けた意味が無くなってしまいます。ランナウェイズは隠れ家を倒壊させることでどうにか難を逃れました。しかしそれは帰る場所を失ったということ。このまま逃げ続けるわけにはいきません。この旅に終止符を打つため、ランナウェイズはプライドとの決戦を決めます。いくら自分たちのためとはいえ、その行いは倫理から大きく外れたもの。たとえ両親でも許される道理などないのです。ランナウェイズは解読した本からプライドの次なる行動を予測、そこを不意打ちで襲うことにします。本によれば、毎年2つの儀式を行うことでギボリムから与えられた仕事を果たしていたようです。1つ目が血の儀式。アレックス達が目撃した若者殺しがそれに当たります。そしてもう1つが、例年通りなら今日行われるはずの雷の儀式です。雷の儀式は殺した人間の魂をギボリムに捧げるための儀式。1日でも遅れた場合、ギボリムは裏切りと捉え厳しい制裁を与えるようです。ならば今日そこにプライドが現れるのは間違いないとみていいでしょう。早速本に記された場所へ向かうと、そこに居たのはギボリムの1人でした。
f:id:ELEKINGPIT:20221112233558j:imageランナウェイズを待ち構えていたかのように襲いかかるギボリム。圧倒的な強さを前に手も足も出ない。

 

メンバーのチェイスが重傷を負いながら辛くもギボリムの1体を止めることに成功したランナウェイズ。残るはこの奥にいるプライドです。突然、それも最悪のタイミングで現れた我が子達に驚きを隠せないプライド。動揺と「一刻も早く倒さねば」という焦りが付け入る隙を与えたようでした。既に死闘をも経験したランナウェイズ相手に優勢を保ちますが、それでも僅かな差で逆転されかねないほど追い詰められてしまいます。そんな「僅かな差」は意外な展開で訪れます。何者かの不意打ちでカロリーナがノックアウトされたのです。その場に居た敵味方の誰もが凍りつきました。カロリーナを倒したのは、ランナウェイズの実質的たリーダーだったアレックスなのですから。チェイスの装備品を託されていたアレックスですが、その力を味方であるはずのランナウェイズに向け始めます。そしてプライドへも。両親とパートナーのニコ以外をあっという間に倒してしまったアレックス。残されたニコへはあの時と変わらない笑みで全ての真相を語り始めました。
f:id:ELEKINGPIT:20221117100512j:imageニコの叫びに表情1つ変えないアレックス。誰よりもランナウェイズを支え続けた、事実上のリーダーが何故?

 

今から1年ほど前。アレックスは偶然「血の儀式」を目撃していました。他の友人らに言うことも出来ず、アレックスは両親が人を殺した理由を探ることに。数日後には家の隠し本棚を見つけ、両親が寝ている隙に秘密の文書を読み漁っていました。しかしその場にアレックスの両親以外のプライドが集まり始めていました。咄嗟に机の下に隠れたアレックスですが、そこで驚くべき会話を耳にします。プライドの中で唯一何のパワーを持たないアレックスの両親。そんな2人がプライドを実質率いていることに不満を持つメンバーは少なからずいたようでした。そんな一部のメンバーは、プライドの目的が達成される直前にクーデターを計画。リーダーの座を乗っ取ろうと画策していたのです。プライドの目的を知っていたアレックスは静かに激怒していました。自らを犠牲にしてでも子どもたちを楽園へ導こうとする両親こそが真のヒーローであるというのに。アレックスはクーデターを阻止するために1人計画をねっていました。その結果こそが現在であり、そうなるために様々な嘘と作戦を立てていたのです。ランナウェイズもそんな嘘と作戦の一部でした。信じられないと絶句するニコ。それでもアレックスの話が本当だというのは、誰よりも信頼していたはずのパートナーだからこそ分かってしまいます。信頼も、絆も、友情も、恋心も、たとえそのうち1つでも偽物だとしたら……やるべき事は決まっています。
f:id:ELEKINGPIT:20221118021943j:image言葉にならない声で、魔法ではなく拳でアレックスの言葉に応えるニコ。仇で返された信頼に応えるにはこれしかない。

 

〈子どもからの逃避行〉

ランナウェイズの実質的なリーダーとしてチームを率いていたアレックス。的確な指示と土壇場での度胸で多くの信頼を寄せていましたが、本作で実は最初から利用するためにランナウェイズを操っていたというストーリーはかなりの衝撃でした。しかし他のランナウェイズのキャラクターと比較すると、アレックスだけが「自律」出来ていないことが分かります。ランナウェイズとアレックスの違いとはなんなのでしょうか?

最も大きな差が現れているのが、ランナウェイズを操っていた理由でしょう。血の儀式を目撃したことがきっかけで両親の行動を英雄的だと尊敬していたアレックス。その後の行動は全て両親をサポートするためのもので、ニコをパートナーに選んだ理由も、プライドのメンバーの中でニコの両親はクーデターに否定的だったからということが含まれている程でした。あくまでアレックスは両親が敷いたレールの上を走るために行動していたことがわかります。一方両親の真の目的を知ったランナウェイズは違いました。両親の敷いたレールを走ろうとしなかったのです。血の儀式というレールの敷き方に問題があったのは当然ですが、そうでなくともこの時のランナウェイズならば両親の申し出を断っていたことでしょう。チーム発足時にはギクシャクとした場面も見られましたが、既に自分の道を何度でも見直せるほどアイデンティティを確立しているのです。それぞれが考えそれぞれが行動していることは今作の節々から多く読み取ることが出来るでしょう。恐らくバラバラになっても1人で立ち上がることが出来る力強さを感じました。「親に導いてもらうため」に行動していたアレックスとの最大の違いです。ランナウェイズとアレックスの違いとは? 一言でいうならば、大人か子どもかということでしょう。