アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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RUNAWAYS vol2 TEENAGE WASTELAND

両親の秘密の会合を目撃し、ヴィランチーム「プライド」であることを知ったランナウェイズ。チームメンバーが最年長でも16歳と、年齢でもオリジンでも他とは異様なチームですが、その独自の物語は強い魅力を放っています。そんな前回に引き続き、今作では大きく物語が動き始めます。ただ親から逃げだした若者とも言えるチームは、今後どのような道を辿るのでしょうか?
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前回はこちらelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

両親が悪の秘密組織「プライド」と知ったアレックスらランナウェイズ。辛くも全員無事に家出を成功したが、ランナウェイズの住む街は既に警察も公権力にも全てプライドの手中にあった。

 

〈新たなる仲間?〉

前回の最後に発見した隠れ家で暮らすランナウェイズには、ある大きな問題がありました。食料の確保です。新聞にはランナウェイズが大犯罪者として報道され、警察にはプライドの手先が潜入し、外に出るだけで捕まる危険性があるのです。メンバーの誰1人も死なすわけにはいかないと決心したリーダーのアレックスは、下手なリスクを取らないためにも外出の一切を禁止していました。また外に出れるとしても金銭面の問題があります。とはいえグズグズしていたら全員が餓死してしまうでしょう。ガートルードとモーリーに留守番を任せ、他のメンバーは変装しながらコンビニまで買い出しに行くこととなりました。大事件のきっかけとは意外にも些細なもの。アレックス達が遭遇したコンビニ強盗がきっかけで、ランナウェイズ崩壊の危機に至るとは誰も考えていませんでした。
f:id:ELEKINGPIT:20220713011117j:image窓奥から覗かせる拳銃と犯罪の香り。これを見逃すランナウェイズでは無い。

 

チームのリスクと人命。天秤にかけるまでもありませんでした。アレックスの的確な指示の元素早く動くチームメンバーは、超怪力を持つ強盗に苦戦しながらも何とか撃退したランナウェイズは、強盗のうち1人を捕まえることに成功します。ところが捕まえた強盗はまだまだ歳の若い、それこそハイティーンのよう。強盗は自らをトファーと名乗り、親に脅されて仕方なく犯罪を犯したのだと言います。トファーもまた親が犯罪者だったのです。それを聞いたアレックスは迷うことなくトファーをチームへ勧誘します。似た境遇、似た状況だからこそ互いに助け合えると感じたのでしょう。しかし緊張状態から抜けきらないうちに新メンバーがやってきたとあれば、混乱してしまうのも無理はないでしょう。特にランナウェイズは仲の良い幼なじみのような関係。そこに、言ってしまえば他所の人間が入ってくるのは戸惑いを与えてしまったのかもしれません。やがてその戸惑い、混乱はカロリーナとニコの喧嘩にまで発展、ニコがチームを脱退しようとするほどの事態となってしまいました。こういう時は放っておけばいい。アレックスらはそう言いますが、トファーはそうも行きません。ニコの後を追いかけて優しげな声をかけます。そして狡猾な笑みも……
f:id:ELEKINGPIT:20220713013659j:imageニコに自らの正体を明かしたトファー。なんとトファーは100年前から生きる吸血鬼だった。

 

トファーの正体は吸血鬼でした。先程の強盗もトファーが首筋を噛んだことで生まれた新たなる吸血鬼にして下僕。ニコも同じように吸血鬼とするため近付いていたのです。吸血鬼になれば、永遠に若い容姿のまま死ぬことの無い人生を楽しめる。人間の限界を超えることだって出来る。人を超えた存在になれる。そんな勧誘をニコはあっさりと断っていました。ランナウェイズが目指す先は永遠の命と若さでは無いのです。とはいえ相手は吸血鬼。ニコの持つ魔法のステッキで胸を貫かれても、アレックスの松明で殴られても大したダメージは与えられません。ガートルードの恐竜やチェイスのメカすら一瞬で敗れ、ランナウェイズは絶体絶命の危機に陥ってしまいました。
f:id:ELEKINGPIT:20220713015412j:imageニコの魔法のステッキすらほとんど無傷で受け止めたトファー。このままランナウェイズは全滅してしまうのか?

 

一方ランナウェイズを何としても家に連れ帰りたいプライドは、町中をあらゆる手を使って探し回っていました。そんな中、プライドの部下である警察官はその立場を利用して、クロークとダガーにランナウェイズの捜索を依頼します。クロークとダガーはかつて麻薬農園を営む両親から逃げてきた過去があり、両親が悪人というランナウェイズと共通点があります。ヴィランチームがヒーローの力を借りるなどおかしな話はありませんが、上手く口車に乗せてしまえばこっちのもの。ランナウェイズに誘拐犯の汚名を着せ、クロークとダガーに行方を追わせることに成功しました。プロのヒーローである2人にティーンエイジャー数人の集まりを見つけるなど造作もないこと。あっという間にランナウェイズを見つけ出すと、圧倒的な経験差で戦いを挑みます。
f:id:ELEKINGPIT:20220713021254j:image警察にランナウェイズ捜索を依頼されるクローク&ダガー。似た境遇を持つヒーローだからこそランナウェイズを救おうと警察に協力する。

 

いくら親の装備品で強くなったとはいえランナウェイズの戦い方は素人に毛が生えたようなもの。いくつもの死線をくぐり抜けてきたクローク&ダガーには全く敵いません。とはいえクローク&ダガーもランナウェイズの様子に違和感を覚えます。とても噂に聞く誘拐犯とは思えないのです。更には誘拐されたと考えられていたモリーがランナウェイズの一員として立ち向かってくるではありませんか。自分たちが騙されていたのではないか? 2人の疑問はアレックスとの対話を通じ確信に変わります。ならばこの子達を守るのが2人の役目でしょう。クローク&ダガーアベンジャーズやブラック・ウィドウに連絡を取り、保護してもらうよう計らうと約束。ランナウェイズをニューヨークへ向かわせました。しかしプライドも甘くはありません。
f:id:ELEKINGPIT:20220713023707j:imageクローク&ダガーを拘束し、直近24時間の記憶を消すプライド。2人の優しき計らいは露と消えた。

 

〈なりたいもの〉

ティーンエイジャーとは、自分が何者かを確立させる時期だと言われています。いわゆるアイデンティティの形成です。他の人にはない確固たる自分だけの何かを獲得するのです。ランナウェイズが「家出」したのは正にそんな時期。しかしランナウェイズの「家出」は一般家庭のそれとは全く意味が違います。通常、家出とは子どもにとってちょっとした冒険を意味します。自立を試みる子どもにとって保護者の束縛はストレスが溜まるもの。しかし通常それが1日2日以上長くなることはありません。家出とはちょっとした旅立ちであり、帰ってくる家があるからこそ行えるのです。帰ったあとも自身を受け入れてくれることに子どもは大きな安心感を抱きます。ちょっど幼い子どもがしょっちゅう隠れんぼすることと似ているでしょう。あの場合、保護者が探してくれるという行為に安心感を覚えています。しかしランナウェイズには帰る家がないも同然。自分たちの居場所こそが新たな家であり、帰る場所は仲間がいる所です。それが心理的に、保護者と仲間では大きな違いがあることは明白でしょう。吸血鬼トファーが現れたのはまさにそんな時です。不安定な居場所に縋るしかない状態で「永遠の命と若さ」を与えられてもなんの意味もありません。ニコが潔く断ったのにはそのような背景が含まれていると考えられます。しかし「何者かになれる」という意味ではティーンエイジャーにとってこれほど魅力的な提案はありません。ちょっと首筋を噛まれるだけで人生に意味を与えられるのですから。一方、クローク&ダガーの登場もまたランナウェイズにとって革命的だったかも知れません。2人は似た境遇を持ちながら第一線で活躍する有名ヒーロー。正義の志が目覚めつつあるランナウェイズにとっては、ある意味アベンジャーズ以上に理想の姿と言えるでしょう。ランナウェイズにとって進むべき道が見えた瞬間なのかもしれません。しかしクローク&ダガーはランナウェイズを何者かにしようとはしません。導くこともヒントを出すこともしません。何者かになるというのはそれほど難しい事なのです。