アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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STAR WARS DARTH MAUL(2000)

EP1〜EP3の間に登場した4人のシス卿。中でもダース・モールほど観客へ衝撃を与えたキャラクターは多くないでしょう。圧倒的な戦闘力に加え、日本の鬼を参考にしたという恐るべき形相。何よりもその人気っぷりは今作が象徴しています。今作STAR WARS DARTH MAUL(2000)は、なんとEP1ファントム・メナスが公開されてからわずか1年後に発売されたミニシリーズです。内容も映画と繋がる構成となっており、ダース・モールというキャラクターを知る上でピッタリの1冊。カノンのコミックと併せて読むと、より魅力的に見えるかもしれません。
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〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

かつての戦争以来、1000年もの間姿を隠していたシスの暗黒卿がついに動きだした。夜よりも暗い外套に身を包んだシディアス卿は、ナブーを陥れる恐るべき計画を始動する。

シディアス卿の試練を突破した弟子のダース・モールは、ジェダイ滅亡へのカウントダウンまで虎視眈々と鍛え続けていた。まるで狩りを楽しむ猛獣のように。

1000年に渡り膨れ上がった憎悪はやがて帝国創設という野望の礎となる。銀河の歴史が大きく揺れ動こうとしていた……

 

〈黒よりも黒く〉

物語は大量のドロイドとダース・モールが激しい戦闘を始めるシーンからスタートします。ブラスターをものともせず、柄の長いライトセイバーで次々と斬り伏せます。ダース・シディアスはこの様子を満足気に眺めていました。ドロイドが全滅してもなお息すら切らしていないモールへ、シディアスは早速任務を下します。シスが闇に潜んでから1000年。シディアスはシス悲願の帝国樹立のため様々な計画を練っていました。その第一段階を始動しようとしていたのです。ナブー封鎖は帝国創設への第1歩として、願わくば計画通りに事が進んで欲しいとシディアスは考えていました。しかしそれには大きな障害が。巨大マフィアのブラックサンです。ブラックサンは、広大なアウターリムを縄張りとしており、時に海賊として略奪を、時に有益な商談があれば割り込んででも利益を得ようとする有名なマフィアでした。恐らくナブー封鎖という大事件にも金の匂いにつられて介入してくるでしょう。シディアスは、モールへブラックサンの全滅を命じたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20221201091624j:imageモールへ任務を命じるシディアス。暗黒に身を包まれたこの人物に、モールは絶対的な忠誠を誓っていた。

 

ブラックサンは、ヴィゴスと呼ばれる9人の大幹部とリーダーのレックスで構成されています。ヴィゴスはそれぞれ独立した宇宙ステーションを持ち、ナワバリの中で海賊行為を行っていました。集会がなければブラックサンのメンバーが集まることも無いため、平時はヴィゴス1つ1つが事実上別組織として行動しているといっても過言ではありません。なるほどアウターリムのギャング団とはいえ、共和国が今まで捕えられなかった理由も分かります。影のように隠れるブラックサンと戦うにはどうすべきか? モールの作戦は最もシンプルでかつ効果的だったでしょう。ヴィゴスの一角を、1人だけ生き残らせて壊滅させたのです。唯一の生き残りはブラックサンへのメッセンジャーになるはず。またヴィゴスを尋問の後に殺し、別のヴィゴスの居所も掴みました。こうしてモールは、たった1人の生き残りを除いて2つのヴィゴスを全滅させたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20221202110408j:image一切の慈悲もなくヴィゴスを殺したダース・モール。師の命ならば地獄の果てまで獲物を追う。

 

ヴィゴスが2つ、同じ手口で倒された。危機感を募らせたブラックサンは緊急集会を開催、残り7つのヴィゴスを招集します。しかしヴィゴスは、リーダーのレックスに忠誠を誓う者、ブラックサンの名で略奪を楽しむ者など様々。件の「暗殺者」すら対処方法で大喧嘩になるほどです。レックスは唯一の生き残った人物から話を聞き、謎の暗殺者の正体に迫りつつありました。一言モールとだけ名乗った暗殺者は、悪魔のような形相であっという間にヴィゴスを全滅させた。武器はライトセイバーだったからジェダイに違いないが、ジェダイにしてはあまりに苛烈すぎるし、そもそも赤いライトセイバーなんて初めてだ。レックスも首を傾げる特徴ですがボディガードのミゲラには心当たりがありました。恐らく敵はダークサイドの信奉者。ダソミア出身のナイトシスター、ミゲラだからこそ分かったことでした。
f:id:ELEKINGPIT:20221203233258j:imageレックスと忠実なるボディーガードのミゲラ。優れた統率力と洞察力でブラックサンを育てて来た。

 

緊急集会を行っているその時です。大怪我をした部下からレックスへ驚くべき報告が成されました。真紅のライトセイバーを操る暗殺者がここに現れたというではありませんか。超小型カメラをそなえたドロイドでブラックサンの居城を突き止めていたダース・モールは、緊急集会が行われるタイミングをずっと待っていたのです。ブラックサン直属の兵隊でも特に優秀な兵士を警備に配置していたはずですが、まるで歯が立たないままなぎ倒されていきます。ヴィゴス全員が武装しても足止めにすらなりません。それでもレックスは、ブラックサン存続のためにも逃げ続けます。最後の盾は最も信頼するボディーガードにしてナイトシスターのミゲラです。惑星ダソミアは、過酷な環境からダークサイドの信奉者を多く排出していました。中でも魔女として銀河中で恐れられ、ダソミアを支配していたのがナイトシスターです。ダース・モールも同じくダソミア出身であり、2人が戦うのはまるで運命が定めた道のよう。それまでとは異なり大接戦が繰り広げられます。標的を目の前にして最大の障壁へとぶつかったモール。しかしその様子はどこか楽しげでした。
f:id:ELEKINGPIT:20221204003501j:imageミゲラと激闘を繰り広げるモール。このままではターゲットのレックスを捕り逃してしまうが……?

 

〈刃を紅く染めて〉

何よりも戦闘シーンが多く描かれた本作。爽快感すら覚えてしまうほどの一騎当千っぷりに、一切躊躇いのないダース・モールの攻撃でどこかスカッとした感覚すらありました。しかし疑問も残ります。何故これほど多くの戦闘シーンが描かれたのか? わずか4話で完結する今作ですが、短いページ数の中に戦闘シーンがふんだんに盛り込まれています。恐らく今作のプロットに求められていた以上に。ならば今作の戦闘シーンは単なる戦闘だけでなく、別の意味も隠されているはず。今回はダース・モールの戦う意味を考えたいと思います。

ダース・モールの戦闘シーンには1つ特徴がありました。それは作中で最も表情が豊かなことです。恐らくモールは戦闘を楽しんでいるのでしょう。苛烈な攻撃や躊躇のなさはそこから来ているのかもしれません。そして何より、命のやり取りという極限の状況下。最も感情が表へ出やすい場面と言えるでしょう。ダークサイドのフォースが最大限発揮されるトリガーです。ダークサイドのフォースは、ポジティブだろうとネガティブだろうと、優しかろうと攻撃的であろうと関係なく感情の力が大きく影響します。例えばダース・ベイダーは生来の強さと怒りの感情でジェダイをも超えるパワーを身につけていました。それはダース・モールも変わりません。相手を殺さなければ自分が死ぬ。相手を殺せば自分は生き残る。そんな状況下だからこそ自身の奥底で煮えたぎる感情が剣腕に乗り、引き出された力を楽しんでいたのでしょう。いわゆる戦闘狂ではなく、自身の強さを楽しんでいたとも解釈できます。モールにとって戦いとは自分の力を実感出来る瞬間であり、それを誇示できる機会なのかもしれません。