アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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NOVA(2013) vol3 NOVA CORPSE

人というものは、大小に関わらず必ずミスをしてしまいます。それはヒーローも同じ。どれほど偉大なヒーローでも等身大に描かれるマーベルでは、時にキャプテン・アメリカやアイアンマンでさえ大きなミスを犯すことがありました。今作では、ヒーローとして徐々に慣れ始めたサムに「失態」という試練が降りかかります。ヒーローになって以来初めてのミスに、サムはどう立ち向かうのでしょうか?
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〈あらすじ〉

銀河を股に掛け、平和を守る日常を送るサム。宇宙中で起こる凶悪事件を忙しなく解決するサムには、学校さえ行く暇はなかった。しかしあまりにも多い欠席日数は、サムを留年の危機に陥れていた。進級か平和か、頭を悩ませるサムは気付かぬうちに銀河を震撼させる事態に直面していた……!

 

〈雷鳴と共に〉

今日も銀河の誰かを助けていたサム。母の心配もよそに、宇宙の果てまで人助けをする生活に楽しみさえ覚えているようでした。真っ暗な真空の海で、何光年も離れた星の光を眺めながら空を飛ぶ自由。おぞましい怪物やゾッとするような悪事に遭遇することもありますが、父から託された魔法のヘルメットさえあれば怖いことなどありません。そんなサムが出会ったのは、ノヴァのヘルメットを模した頭を持つ宇宙船でした。宇宙戦艦から攻撃を受けているようですが、逃げる素振りを見せず、それどころか微動にしません。ノヴァコープはこんな宇宙船を作ってどうするつもりなのか? そもそも、何故逃げようとしないのか? 疑問はつきませんが考えるより先に体が動き出していました。あっという間に宇宙戦艦を無力化し、ノヴァの宇宙船を助け出したサム。しかし船内にいたのはノヴァではありませんでした。サムを出迎えたスカーンと呼ばれる人物は、打ち捨てられ漂流していた宇宙船へ仲間と共に住み着いたと言います。しかし動力がバッテリー切れを起こしてしまい、動けなくなったところを攻撃されていたのです。スカーンはサムへ助けを求めます。ノヴァの力を使い、どうかこの宇宙船を再び動き出せるようにして欲しいと。ところがその動力は、サムさえ悪寒が走るものでした。ノヴァの死体だったのです。
f:id:ELEKINGPIT:20230401011336j:imageスカーンの船を動かしていたノヴァの死体。死体へ電気信号を送りヘルメットに主が生存していると誤認させ、エネルギーを引き出していたというが……

 

一方サムの母は校長先生の突然の訪問を出迎えていました。今日も欠席し、見過ごすこと出来ないほどの欠席日数に達したサム。このままではサマースクールへ出席するか留年してしまうと言うのです。しかし当の本人は今も銀河の果て。更に行方不明となった父も長い間欠勤が続いているという理由で解雇、給料の支払いは来月までと告げられます。ヒーローと学業の両立はサムにとってかなりの難題のようです。銀河から帰ってきたサムは、何とか出席日数を稼ぐため学校へ通いますが、ノヴァの活動に比べればこの日々は時が止まっているかのよう。いじめっ子とのトラブルでペナルティを課せられ、兄弟の世話に勤しむ生活。多くのティーンエイジャーが送る日常にサムは宇宙まで飛び出してしまうことも。しかしこれを打ち破ったのは、やはり宇宙からやってきた人物でした。いきなりサムを攻撃したこの人物は、特徴的なハンマーに見覚えのあるコスチューム、何より1度見たら忘れられない馬のような顔をしています。ソーの義兄弟にしてオーディンから雷槌ストームブレイカーを託された、ベータレイビルです。怒りに充ちた表情でサムを「悪のノヴァ」と呼ぶビル。何故あのような悪事を働いた。何故あの悪人に手を貸した。稲光が煌めき、雷鳴が轟き、ビルの攻撃はなおも激しさを増します。何故キャプテン・スカーンを助けたのか。あの憎き宇宙海賊を。サムは戦慄します。数日前、ノヴァの宇宙船に乗っていた人物は宇宙にその名を響かせる宇宙海賊だったのです。
f:id:ELEKINGPIT:20230401013519j:image地球に現れた雷神の兄弟分。戦士の信念を秘めたハンマーは例えサムであっても微動だにしない。

 

自分のミスに気づいたサムは、ビルに協力を求めます。失態をなかったことにすることは出来ない。ならば取り返すしかない。ビルはこの姿勢を気に入ったのか、戦友として共に戦うことを約束します。キャプテン・スカーンは奴隷を多く使役する凶悪な人物です。最近では強力な武器を集め、銀河により大きな影響力を持とうと力をつけていました。躊躇い無く人を殺せる銀河の指名手配犯はいつ誰を襲ってもおかしくありません。新たな被害が出る前に一刻も早く倒さねばならないでしょう。現在キャプテン・スカールは、死んだセレスティアルズの頭部を改造したノウヒアにいるとビルは言います。そこで顔を知られていないビルが潜入、サムは外から、ビルは中から奇襲を仕掛ける作戦に出ます。しかしキャプテン・スカールも一切警戒を解かず、遂にはビルの潜入に勘づかれてしまいました。またサムも敵の襲撃を受けやむを得ずノウヒアの中へ。そこで発見したのは、超能力が使える宇宙犬コスモでした。コスモはキャプテン・スカールに捕まり毒に苦しんでいたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20230401015236j:imageキャプテン・スカールに捕えられていた宇宙犬コスモ。テレパシーでサムを自分の元へ導く。

 

どうにかコスモへ治療を施し、キャプテン・スカールの部下を倒したサム。しかしキャプテン・スカールを倒すにはやはりビルと合流する必要があるでしょう。コスモの超能力でビルを探しながら、スカールの行方を追うノヴァ。しかしビルと合流できた頃には時すでに遅し。キャプテン・スカールはビルさえ恐れる強力な武器を携え、2人に立ち向かってきました。更に2対1は不利と判断したのか、近くの奴隷船を攻撃、船内の人々を助けるため再び2人は分断されてしまいます。ビルが奴隷船を助ける間、キャプテン・スカールとサムは1対1で戦うことに。ギャラクタスのヘラルドが扱う武器を使いサムに挑むスカール。しかし加速度的に成長し続けるティーンエイジャーに勝てる力は誰ももちあわせていないのです。戦いは徐々に、しかしあっという間に、サムの優勢となります。
f:id:ELEKINGPIT:20230401020955j:image渾身の一撃を決めるサム。例え宇宙海賊でも、失敗を乗りこえたサムを倒すことは出来ない。

 

〈ヒーローと失敗〉

今作は「失敗」と「失敗を取り返す」ことを軸に話が展開されました。助けた人物が極悪人で、新たな被害を出す前に倒す。自身の失敗を素直に認め助けを求めたことはサムにとって大きな成長となったことでしょう。高名なヒーローでさえ周囲に助けを求めるのは難しいのですから。一方で今作ではまだ取り返していない失敗が残っていました。家族と実生活です。愛すべき存在として、サノスの尖兵に襲われた時以来より守るべきものとして大切にしてきた家族。そしてくだらない理由で突っかかってくるいじめっ子や会う度に少し胸がざわつくあの子、口うるさい先生達。これらは全てノヴァ以外の「サム・アレキサンダー」という人格を支えてきた人物です。しかしヒーロー活動を始めて以来、実生活の優先度は段々と低くなってしまいました。事実、サムは宇宙へ飛び出して何日も帰ってこない生活を繰り返しているうちに家計が大ピンチに陥っていることやそれに悩む母の姿さえ知りませんでした。自分の生活を犠牲にしてでも人々を助けていた、と言えば聞こえはいいでしょう。しかし自己犠牲は決して自分だけの犠牲では成り立ちません。ヒーローとして大きく成長し続けるサム。では実生活を送るサム・アレキサンダーは? 今のサムは、親に心配をかけ実生活の面倒ごとは全て親に解決してもらっているようなもの。悪く言えば親に甘えているに過ぎない状況です。実生活を大切にすることもまた、現代を生きるヒーローの務めのはず。サムが偉大なヒーローとなるにはもう少し成長が必要なようです。