アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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STAR WARS TARGET VADER

映画史に残る名悪役として今だ根強い人気を持つダース・ベイダー。その強さは映画本編を見るだけでも充分に伝わってくることでしょう。今作はそんなベイダー卿の命を狙う賞金稼ぎの物語です。恐怖政治の象徴となっていたベイダー卿に挑むのは勇猛か、それとも無謀か? ベイダー卿ファンにとってはたまらない娯楽作。ベイダー卿の命を狙う側の視点を存分に恐れ楽しみましょう。
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〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

賞金稼ぎハンターのヴァランスは、ある日銀河で最も危険な依頼を受ける。かの恐るべき暗黒卿ダース・ベイダーの暗殺依頼だ。

帝国は反乱軍に武器を密輸する闇組織を探していた。ヒドゥン・ハンド。帝国を脅かすならば知られざる魔の手をも粛清せねばならない。

暗殺チームと共に確実にダース・ベイダーを追い詰めるヴァランス。しかし恐怖の代名詞たる黒衣の怪物がその程度で止まるはずがなかった……

 

〈射程範囲〉

グラスを片手に、ヴァランスは静かに息を潜める敵をじっと待っていました。このバーにいる客のほとんどがヴァランスの敵でしょう。鉱山惑星チョリン出身のヴァランスは、帝国の兵士崩れで今や賞金稼ぎハンターと呼ばれるならず者になっていました。すっかり落ちぶれた。体中を覆う金属肌を見ればそう声をかける人も少なくないでしょう。賞金稼ぎの金を盗み生活するヴァランス。つい最近も名のある賞金稼ぎ数人から金を盗み出し、裏社会の住人ながら裏社会から嫌われるほどです。しかし高い戦闘力を持つのは確か。今や一斉に襲いかかる多数の敵を、ヴァランスはあっという間に片付けてしまいました。裏社会から嫌われている。しかし腕は確か。ヒドゥン・ハンドにとってこれほどうってつけな人物はいないでしょう。ヒドゥン・ハンドは早速ヴァランスへ交渉をもちかけます。背負っている借金は全てなくす。その上で高い報酬もつけよう。たった1人殺すだけで人生大逆転だ。標的は、帝国が誇る恐怖の代名詞、ダース・ベイダーダース・ベイダーを殺して欲しいのだ。ベイダー卿の暗殺依頼とはこれほど危険な仕事もないでしょう。しかしヴァランスはこの依頼を受けることにします。ヒドゥン・ハンドは反乱軍に武器を密輸出していると言われる闇組織。噂だけの存在かと思われましたが、もし噂が本当なら依頼内容も頷けます。恐らく報酬の話も嘘では無い。ヴァランスにとってはこの上ないチャンスなのです。
f:id:ELEKINGPIT:20230719080547j:imageヴァランスへベイダーの暗殺を依頼するヒドゥン・ハンド。銀河で最も危険な任務も、ヴァランスには一発逆転のチャンスだった。

 

とはいえダース・ベイダーを暗殺するにはヴァランスだけでは実力不足。ヴァランスはヒドゥン・ハンドが集めたならず者達と徒党を組み、暗殺チームとして虎視眈々と鬼の首を狙います。帝国へ従軍していた経験を持つヴァランスが事実上暗殺チームのリーダーに。ヴァランスの作戦はこうでした。まずは偵察中のTIEファイターを撃墜、わざと痕跡を残して近隣の惑星に降り立ちます。そこで補給を済ませ、ベイダー卿の乗るスターデストロイヤーが来たらハイパースペースで今度はヒドゥン・ハンドの前哨基地へ。敵が追いつく前に電磁パルスの地雷で周囲を敷き詰め、電子機器をジャミングする砲弾を用意し迎え撃ちます。ベイダー卿がヴァランスと同じサイボーグならば、機器不良を起こして動けなくさせれば良いのです。安全性から帝国が禁止したと言われるジャミング兵器をも持ち出し、ヴァランスの作戦は始まります。作戦はヴァランスの適格な読み通り順調に進みました。そしてベイダーを罠が敷きつめられた基地へ誘導することに成功。あとは動きを封じてじっくりと殺してしまえばいい。ベイダーが基地のある惑星に現れた瞬間は暗殺チームのほとんどが勝利を確信さえしていました。ところがダース・ベイダーはその程度で止まる敵ではありません。自らのシャトルが電磁パルスで不時着すると、ベイダーはフォースで砂埃を巻き上げ姿を隠します。ブラスターをライトセイバーで跳ね返し、電磁パルスも避けられてしまいました。こうなったら直接パルス装置を取り付けるまで。しかし近接戦闘こそベイダーの領域でした。巧みな剣さばき、圧倒的なフォース。次々と仲間が殺され、暗殺チームは事実上崩壊。ヴァランスも捕縛されてしまいました。
f:id:ELEKINGPIT:20230719085836j:image暗殺チームに立ちはだかるベイダー。かけ離れすぎた実力差で、暗殺チームは崩壊した。

目が覚めると、見えたのは無機質な壁ばかりでした。ヴァランスは帝国軍に捕まり、尋問室に入れられたようです。目覚めるのを待っていたかのように現れたのはベイダー卿でした。ベイダー卿の質問はたった1つ、ヒドゥン・ハンドについてです。とはいえヴァランスも知ってることは皆無に近く、ベイダー卿の方が或いは情報を掴んでいる可能性さえあるでしょう。ベイダー卿もそれを悟ったのか、尋問を切り上げとっとと去って行きました。ヴァランスはこれを好機と捉えます。拘束を解くと帝国のヒドゥン・ハンドに関するデータを解析、驚くべき事実を発見しました。ヴァランスは炭鉱業の家系に生まれ、自身も幼少期まで炭鉱業に従事していました。そんな生活を激変させたのが帝国です。帝国は鉱石の採掘をほとんど機械化させ、また鉱石確保のため惑星の保護さえ行ったのです。惑星の住民皆がこの大変革を歓迎しました。ツルハシと一生を過ごす以外選択肢のなかった生活に、突如自由がもたらされたのです。晴れて自由の身となったヴァランスは早速帝国軍の士官学校へ入学、志願兵として従軍します。最後まで生きることを諦めず仲間から信頼を集めたヴァランス。しかし戦争の最中、仲間を逃すため致命傷を負ってしまいます。体のほとんどを機械化してどうにか生き延びますが、これ以上戦うことは難しいと判断した上官により名誉除隊となりました。故郷へ帰るヴァランス。しかしそこはもう見知った景色ではありませんでした。かつて鉱山のあった場所は焦土と化し、まるで大地が枯れたよう。以来ヴァランスは故郷を壊した犯人を探す旅に出ました。そして現在、ヴァランスはその犯人を見つけ出します。ヒドゥン・ハンドです。ヒドゥン・ハンドが故郷を襲ったのです。理由はおそらく鉱石が目的でしょう。ヴァランスは早速ヒドゥン・ハンドのアジトへ向かうことにします。一方ヒドゥン・ハンドの悪行に帝国も激怒していました。帝国と鉱石基地を堕とすとは、粛清に値するでしょう。1人ヒドゥン・ハンドのアジトへ向かうヴァランスでしたが、なんとベイダー卿とその部隊が同行することとなりました。
f:id:ELEKINGPIT:20230719190029j:imageヴァランスを引き止めるベイダー卿。これほど心強い味方はいない。

 

〈帝国の自由〉

主人公の敵、圧政で人々を苦しめる悪役。それが銀河帝国です。デス・スターベイダー卿が代表するように、帝国の政治は政治というより支配、力を押し付けるのみでしょう。しかし本作の主人公、ヴァランスは帝国により自由がもたらされました。だから決して帝国は悪とは言いきれない……という結論は少々急ぎすぎかもしれません。帝国が与えた自由とは何なのかを考えたいと思います。ヴァランスにとって帝国がもたらした自由とはなんだったのでしょうか? ヴァランスは自由の身になった後、帝国の士官学校へ入学。その後従軍し、サイボーグとなって生き延びました。体を機械化することはスターウォーズにおいて失敗の象徴として描かれることは多数あります。ダース・ベイダーやルークの肩腕はその代表例と言えるでしょう。ヴァランスにとっての失敗は、戦争に参加したことや帝国軍に参加したことかもしれません。帝国の戦争は、結果がどうであれ悲劇ばかりを生み出しました。反乱軍の戦争に大義名分はあっても、帝国の戦争は悲劇と圧政の代名詞。ヴァランスは自由の身となり、帝国軍として誰かの自由を奪ったも同然なのです。そもそも採掘の機械化は帝国でなくても可能だったはず。帝国がヴァランスへ自由をもたらしたのは偶然の産物に過ぎません。ヴァランスは帝国の本質を見誤り、自由を奪う存在となってしまったのです。もし機械化したのが旧共和国なら? ヴァランスに自由をもたらした帝国は、誰かの自由を奪う存在でした。これが自由なのでしょうか? 帝国がもたらした自由は誰かにとっての不自由、悲劇だったと言えるでしょう。