アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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IRON MAN #243〜#244

元パートナーの凶弾に倒れるという衝撃的な終わりを迎えた前回。アイアンマンとしてマンダリンに勝利しながら、ピンチを迎えたのはトニー・スタークという皮肉にも思えるような内容でした。元パートナーに撃たれるというショッキングな出来事からトニーはどのように立ち直ったのでしょうか? 今作ではトニーの精神面での成長を大きく感じられるでしょう。
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前回はこちらelekingpit.hatenablog.com

 

〈あらすじ〉

元パートナーの凶弾に倒れたトニー。全米がその行く末に注目する中、医師が伝えたのは衝撃的な一言だった。2度とトニーは歩けない。世界を何度も救ってきたゴールデンアベンジャーは再起不能なのか? アイアンマンは失われてしまうのか?

 

〈鋼鉄の強さ〉

トニーが撃たれた。致命になりうる重傷らしい。このニュースは全米を駆け巡りました。新聞は一面で報じ、テレビをつければどの局もトップニュース扱い。中には既にトニーを死者として扱うような報道もあり、錯綜状態と言えるでしょう。ローディが病院から1歩外に出れば報道陣があっという間に囲む始末。トニーと交流のあった社員たちは皆いても立ってもいられないほど余裕を失っていましたが、それでも手術を担当する医師をみつけ手術を終えるまで出来ることはありません。スターク社は世界的にも有名な外科医を雇い、トニーの手術を担当させることに。手術の予定日まで報道されますが、成功率は決して高くないようです。落ち着かない気分で待つしかないローディ。その間も隠しカメラでトニーを盗撮しようとする輩が現れるのですから気が気でありません。どれほどの時がたったでしょう。手術を終え現れた外科医は、記者会見でトニーの現在を語ります。まずは朗報から。手術は成功しました。トニーは恐るべき凶弾から生き延びたのです。記者団も歓喜の声を上げました。しかし重要なのはここから。歓喜の声を遮るように医師は告げます。トニーはもう2度と歩くことができないと。
f:id:ELEKINGPIT:20230721074520j:image外科医から告げられた一言を直視するローディ。周囲が何も見えないほど凍りついていた。

それでも助かっただけ幸いだったと考える人が多いでしょう。ローディも自分にそう言い聞かせ、トニーの退院の日を待っていました。そして迎えた退院当日。なんとトニーはそのままスーツに着替え会社へ向かいます。電動車椅子を難なく使いこなし、会議に出席するトニー。しかしどこかピリピリしている様子が終始伝わってきました。それもそのはず。トニーから見た世界は車椅子生活で一変してしまったのです。人々は同情的な眼差しを向け、社員にもなるとほんの些細なことでも心配して駆け寄ってくるほど。足が動かなくとも出来ることはそう変わらないはず。にもかかわらず、トニーがなにかしようとすると誰かが助けようと現れるのです。そうでなければトニーとの関わりを避け、あるいはどこか見下したような目で見る人もいるほど。車椅子に座るようになっただけで本来変わらなかったはずの生活が大きく変わってしまいました。以前できていたことの多くは今も変わらず出来る。しかしアイアンマンだけはトニーの頭を悩ませました。今のままではアーマーを着用することも難しいでしょう。アーマーにトラウマを持つローディには頼めませんし、アイアンマンを続けるには誰かに託すしかありません。トニーはかつて更生した元ヴィランのフォースへアーマーを託すことにします。今を好機と捉えたヴィランがいつ襲撃するか分かりません。ローディは旧型のアーマーをフォースへ託します。その時でした。読み通りヴィランが登場。フォースは早速アーマーを纏いアイアンマンとして戦います。ところが旧型でもアイアンマンは超高性能。フォースがかつて着用していたバトルスーツとは比べ物になりません。また経験不足も目立ち、アーマーの性能を充分に引き出せないまま敵を捕り逃してしまいました。
f:id:ELEKINGPIT:20230721081519j:imageローディと共に挑む「アイアンマン」。しかしフォースでさえアイアンマンを使いこなすのは用意ではなかった。

 

トニーは自分の無力さを噛み締めていました。アイアンマンを託してから数日後。スターク社を再びヴィランが襲撃したのです。今度は多くの部下と兵器を引き連れ、その上白昼堂々と。完全に勝利を確信した行動でしょう。警備員が倒され、ローディもアイアンマンも命懸けで戦っている。にもかかわらず、自分は見守ることしか出来ないのか。安全なビルの上階でじっと勝利の知らせを待つことしか出来ないのか。いいえ、違います。アイアンマン誕生の経緯は、瀕死の重傷からガラクタを使って自身を救うためでした。心臓近くに突き刺さった地雷片を少しでも動かさないため、電磁石入のチェストプレートは片時も脱ぐことができません。誰も経験したことの無い苦しみを1人で乗り切ったのです。車椅子生活を始める前後で出来ることはほとんど変わらなかったトニー。ならばアイアンマンだって不可能ではないはず。少なくとも今の難局を解決する出来るのはトニーしかいません。トニーは車椅子を走らせラボへ向かいます。再びアイアンマンとして立ち上がる覚悟を決めたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20230721184153j:imageアイアンマンを改造するトニー。覚悟を決めたトニーに敵はいない。

 

〈鋼の意思〉

一生を車椅子と共に生活することとなったトニー。結果周囲の視線が大きく変わり、交流を避ける人まで現れてしまいました。Demon in a bottleやArmor Warsで描かれたように、トニーは非常に繊細な心の持ち主です。あるいは周囲の態度が本来の気力を削いでいるのかもしれません。トニーがアイアンマンを諦めていたことへの違和感が少なかったのはそのためでしょう。しかし何度折れても何度でも立ち上がるのがアイアンマンであり、トニー・スタークです。またトニーの性格は「優しい」では片付けられないほど他人を思いやることが出来ます。例えば第2次アルコール中毒期にトニーが禁酒を決意したきっかけは1人の赤ん坊でした。自暴自棄になり自殺さえ考えていたトニーが命に触れることで立ち上がったのです。今作もまた同じような経緯に思えました。自分の無力さを痛感し立ち上がるトニー。そのきっかけは、傷つく社員たちの姿でした。命の尊さを知っているからこそ再起できたのでしょう。トニーは繊細な心の持ち主です。しかしそれまで乗り越えてきた多くの苦難が現在の礎を築き上げました。トニーに鋼の意志を与えたのです。