アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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STAR WARS vol3 REBEL JAIL

ベイダーダウンを終えた本シリーズ。ルークを巡り多くの人物が入り乱れる様は映画本編同様に迫力のある展開でした。さて、ここまで映画含め本シリーズでは帝国軍と反乱同盟軍の戦いに終始していました。それは悪vs正義のような構図となっており、反乱軍が手放しに絶対的正義としてもてはやされる傾向を作ってしまいました。実際ルーカス氏もこの構図を意図して作ったように思えますが、スターウォーズが描いているのは銀河内戦と呼ばれる戦争です。単なる勧善懲悪では無いのです。今作はそんな反乱軍の暗部を照らす内容となっています。綺麗事だけで戦は進まず、後の勝利は決してルークだけの活躍ではないのです。
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邦訳版コミック

villagebooks.net

 

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〈あらすじ〉

遠い昔、はるかかなたの銀河系で……

反乱軍に希望が見え始めた。デス・スターを破壊し、サイムーン1にも大きな打撃を与えた反乱軍が新たな戦果を上げたのだ。

ベイダーとの戦いから1週間、レイア姫達はベイダーの秘密の部下であるドクターアフラを捕らえていた。密輸業者のサラと手を結び、姫は捕虜を反乱軍最大の監獄へ収容することを決める。

しかし2人は知らなかった。この任務が反乱軍の暗黒面を目の当たりにするきっかけになることに……

 

〈憎悪の怪物〉

サンスポット監獄。ある恒星のすぐそばに作られたこの牢獄は、反乱軍が所有する中でも最も安全かつ巨大なものです。目の前に恒星があること、そしてイオンバリアによってレーダーに検知されにくいことで、反乱軍の重要な監獄として選ばれたのです。サンスポット監獄の司令官はこれを誇りに思っているようで、帝国には絶対見つけられるはずがないと確信している様子。レイア姫はそんな銀河の辺境へ向かっていました。ダース・ベイダーとの戦いから1週間、捕らえたドクターアフラをサンスポット監獄へ収容しようとしていたのです。念のためにハン・ソロの元パートナーを名乗るサナを味方に引き入れ、監獄を目指します。全員を出迎えた司令官曰く、サンスポット監獄は既に凶悪な殺人犯や2人のモフ(帝国軍の司令官)を捕らえているとのこと。そんなサンスポット監獄が簡単に見つかり、果ては襲撃されるなどあってはならないのです。
f:id:ELEKINGPIT:20230405004003j:image反乱軍が誇る堅牢な牢獄こそがサンスポット監獄。多くの政治犯や凶悪な犯罪者を収容し、銀河の辺境にひっそりと隠れる。

 

ドクターアフラを収容し、ひとまず安心した一行。ところがその直後、監獄全体に響き渡る振動が。なんとこのサンスポット監獄が襲撃を受けたのです。恒星の影に隠れ、ただでさえレーダーで補足されにくい上イオンバリアでカモフラージュまで行っているこの監獄が、何故襲撃を? もし襲撃犯が帝国軍ならば狙いは収容された囚人でしょう。まさかあのダース・ベイダーが? ドクターアフラを収容した時の言葉がレイア姫の脳裏に浮かびます。しかしどうやら襲撃犯の狙いは、囚人を殺すことにあったようです。次々と恒星へ投げ入れられる囚人を見て、レイア姫はすぐさま動き出します。監獄の一区画をサナと共に制圧、通信回路を取り戻しました。しかし司令官と繋いだはずの通信は、敵の首魁と繋がったではありませんか。既に監獄の司令部は制圧されているようで、今レイア姫たちがいるエリア以外は事実上襲撃犯が牛耳っているも同然のよう。いくら凶悪な殺人犯でも、即刻死刑にすべきではなく適切な罰を与えなくてはならない。これ以上囚人を無闇に殺されるわけにはいかない。しかしレイア姫とサナだけでは襲撃犯を倒すのは難しいでしょう。ここでレイア姫はやむなくドクターアフラを一時的に解放、協力を要請します。
f:id:ELEKINGPIT:20230405201021j:imageドクターアフラを解放し味方を増やすレイア姫。武勇と実力に長けた3人が、襲撃犯へ牙を向ける。

 

時にいがみ合いながら、時に皮肉を言い合いながら、3人はついに敵の首魁の元へ辿り着くことに成功します。しかしここでレイア姫はある違和感に気付きました。そもそも、もし帝国軍が襲撃したならば囚人を執拗に殺す必要があったのでしょうか? また隠密性に長けたこの監獄を見つけた方法も判明しないまま。スパイが潜んでいた可能性は否めませんが、それならばモフをはじめ重要な囚人だけでももっと早く解放させていたでしょう。ならばこの襲撃犯の正体は? 首魁は自らヘルメットを捨て、その正体を明かします。エネブ・レイ。敵の名前に聞き覚えのあるレイア姫は、その変わり果てた素顔に驚愕します。いや、そもそもエネブ・レイは死んだはずでは……? エネブ・レイは、かつてコルサントに潜入していた反乱軍のスパイでした。帝国軍の役人「タリウス」として潜んでいましたが、コルサントに捕えられた元老院議員を解放する任務で失敗。救出目標であった議員は全員死亡し、レイ自身も戦死したと思われていました。しかし密かに生きていたレイは、帝国への激しい憎悪を胸に今回の事件を起こしたのでした。レイにとって、理想論ばかりならべ、敵にさえ情けをかけるレイア姫のやり方は生温いことこの上ないもの。監獄を襲撃し、いかに敵が無慈悲かつ理不尽か、そして冷酷な指導者へと変えようとしたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20230405234321j:image変わり果てたエネブ・レイ。その信念は憎悪に歪み、味方であるはずのレイア姫にさえ銃口を突きつけていた。

 

〈反乱軍の影〉

監獄、スパイ。映画本編では中々描かれない反乱軍の要素が今作の中心となっていました。決して綺麗事だけではない反乱軍の様子が判明しましたが、これらを反乱軍の暗部と読み解くのは少々乱暴な気がします。というのも、監獄は組織や政体内で決められたルールを違反した者が収容される施設です。裏を返せば監獄は秩序の象徴と言えるでしょう。またスパイも情報が時に戦局を左右しかねない戦争では必要不可欠。まして発足当時から大半が不利な状況にある反乱軍が、スパイを使わない手はないでしょう。ならば本作のテーマである、反乱軍の影とは? 答えはエネブ・レイが握っています。スパイとして帝国軍に潜り込んだレイは、作戦が失敗し他の仲間は全滅、1人だけ辛うじて逃げ延びたのです。反乱軍が戦っている相手は今や銀河を手中に収めた帝国。相手としてはあまりにも巨大過ぎます。そのためできる限り多くの戦力を集める必要があり、それでもな勝算の低い戦いを強いられます。エネブ・レイはそんな激流に飲まれた1人。帝国軍に激しすぎる憎悪を持つ人物へと変わり果ててしまいました。このような憎悪へと身を落とさないように反乱軍が出来ることは? 同じ旗の元に集まったのなら、それを率いる英雄が必要です。英雄の存在が士気と結束力を高めるのです。憎悪さえもまとめあげる英雄。これこそが反乱軍が今最も必要な存在ではないでしょうか。