アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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CIVIL WAR

超人はその身元を政府に登録し、適切な訓練を受けなければ、如何なる場合でもヒーロー活動を認めない。超人登録法を一言で表すならこのような形になるでしょうか。今作はそんな超人登録法の賛否を巡りヒーロー社会が分裂、やがて対立を始める「内戦」を描いた作品です。賛成すると政府に身分を明かさねばならず、反対すると犯罪者として扱われる超人登録法。賛否どちらも正義であり、決して悪ではないでしょう。さて、あなたはマーベルユニバースに生まれた、超能力を持つ者の1人です。ヒーロー活動を行う最中に施行された超人登録法に、あなたは賛否どちらかを迫られます。あなたはどちら側に着きますか?
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日本語版関連作

シビル・ウォー (MARVEL)

シビル・ウォー (MARVEL)

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〈あらすじ〉

悲劇が起きた。若きヒーローたちの失敗が原因で、800人以上もの人々が亡くなったのだ。警察官は顔と名を明かし、適切な訓練を受ける。ではより大きな力を持つヒーローは? 2度と悲劇を繰り返さないため、ヒーロー社会は分断された。

 

〈誰も傷つけないために〉

若きヒーローたちで構成されたチーム、ニューウォリアーズはテレビクルーを従えてヴィランの隠れ家の場所を突き止めていました。隠れ家にいるのは、初代キャプテンマーベルと戦った経験のあるナイトロを含め名だたる悪党ばかり。経験不足な若者の手に余るのは明らかでしょう。しかし自身のチームを追うリアリティー番組の視聴率低迷を恐れたスピードボールは、ヴィランたちを撃退することに。合図と共に突入するニューウォリアーズ。優秀な能力で経験不足を補い、順調にヴィランをノックアウトします。残るは強敵ナイトロのみ。ところが小学校の付近まで吹き飛ばされたナイトロは、自身の能力を使い大爆発を起こしました。これが後にスタンフォードの悲劇と呼ばれる事件の顛末です。焦げ臭いが残る爆心地は瓦礫で溢れ、多くが亡骸も残さず死んでしまったよう。アベンジャーズX-Menらが悲劇の現場を訪れ、生々しく傷跡の残す場で生存者の捜索と瓦礫の撤去を行っていました。この事件での死者は800人とも900人とも言われています。更に爆心地の付近には小学校があり、被害者の多くは子どもだったようです。悲劇の象徴としてメディアが注目したのは、ミリアム・シャープと呼ばれる人物でした。ミリアムはスタンフォードの悲劇で実子のダミアンを失っており、葬式に参列したトニー・スタークへ唾を吐きかけ怒りを顕にしたのです。ダミアンのために正義を。人々は超人登録法案に正義を求めていました。警察官は顔と名前を明かし、訓練を受けて職務を全うする。消防士も裁判官も、タクシードライバーでさえそうしている。にも関わらず、より強大な力を持つヒーローは? 顔も名も明かさず、訓練もなく超能力を行使するのか? ホワイトハウスの前には、プラカードを持った人々で溢れかえっていました。同じ頃、ヒーローたちはファンタスティック・フォーの拠点であるバグスタービルディングに集結。超人登録法案について会合を行っていました。ところがキャプテンアメリカだけは違いました。SHIELD長官マリア・ヒルの前に立ち、明確に超人登録法案に反対する意志を表明したのです。拒否すれば悪党と同じ扱いを受け、犯罪者となる法案。スタンフォードの悲劇から成立が確定視される法案に、キャップは真っ先に反対して見せたのでした。キャプテンアメリカが超人登録法案反対の旗を掲げ、賛成派も強力なリーダーを求められます。アイアンマンは自らこの役を志願。こうしてアイアンマンとキャプテンアメリカという名コンビの対決が決定的となるのでした。アメリカ中のヒーローが各々の立場を決める中、超人登録法が公布、施行されます。
f:id:ELEKINGPIT:20240120185839j:image日付変更とともに施行される超人登録法。この瞬間から賛成派だけがヒーローに、反対派は問答無用で犯罪者となった。

 

内戦が決定的となった今、賛成派も反対派もより多くの味方を引き込もうと行動を始めます。施行された瞬間に捕らえられたヤングアベンジャーズを救出し、反対派に引き込んだキャプテンアメリカ。一方アイアンマンは、より効果的な方法を用いて記者会見で呼びかけます。なんとスパイダーマンが記者会見で登場、カメラの前でマスクを脱ぎ、その正体を明かしたのです。スパイダーマンの正体の公表は、全米に大きな衝撃を与えました。当然地下に潜った反対派にもその衝撃は伝わっており、形勢は賛成派有利へと一気に傾きます。そこでアイアンマンは反対派を誘き出し、一気に内戦終結すべく動き出します。罠につられ現れた反対派。SHIELDの特殊部隊がテレポートの使い手を気絶させ、賛成派が現れます。こうして開戦以来初めて反対派と賛成派の代表が一同に会します。ここでトニーはキャップへ、話し合いを提案、再び団結しようと手を伸ばします。ところがキャップはこれを拒否。戦わなければ終結は望めない展開となります。アイアンマンとキャプテンアメリカの対決を皮切りに、賛成派と反対派による衝突が始まったのです。一進一退の攻防、刻一刻と移り変わる戦況。誰も望まない戦いは、誰にも先が読めないほど互角でした。ここでSHIELDは秘密兵器を投入し、決着をつけようとします。コードネーム:ライトニング、ソーの毛髪から生み出されたクローンです。戦場に雷鳴が轟き雷が降り注ぎました。絶望する反対派。その強大すぎるパワーはSHIELDの目論見通り賛成派有利へと傾きます。ところが、やがて内戦はもう1つの悲劇を生み出しました。加速するクローンソーのパワーは、反対派の1人であるゴライアスの胸を貫きます。反対派のヒーローが殺されたのです。誰も傷つけないために始まった戦いで死者が出てしまった。この戦い以来、賛成派だったヒーローが反対派へ転じるヒーローが続出します。この戦いの正義は何なのか、目の前でヒーローが殺され多くのヒーローが考え始めたのでしょう。スパイダーマンもその1人。賛成派として大きな影響を与えたスパイダーマンですが、反対派へ転ずる決意を固めます。賛成派有利だった内戦は反対派へと形勢逆転。内戦は泥沼に陥ろうとしていました。
f:id:ELEKINGPIT:20240120215528j:imageクローンソーに殺されるゴライアス。この内戦の正義はどこにあるのか?

 

スパイダーマンを加えパワーバランスでも優位に立った反対派は、ある噂を聞き付けます。超人登録法違反で逮捕されたヒーローは、ネガティブゾーンと呼ばれる別次元の監獄に収容されているというのです。仲間を取り戻すため反対派は再び戦おうと作戦を立てます。ブラックパンサーとストームをも仲間に加えた反対派は、ネガティブゾーンのゲート前まで侵入することに成功。ところが賛成派も当然これを見逃しません。再び賛成派と反対派が相対します。戦闘は1度目の衝突以上の激しさを見せます。やがて戦場はニューヨークへ。市民も大勢いることからアイアンマンは賛成派へ撤退するよう言いますが、反対派の猛攻が激しく撤退する隙もありません。戦場となったニューヨークは瓦礫が積み上がり、辺りから火が燃え、市民の目の前でヒーロー同士が殴り合う事態に。ここで反対派は一気に決着をつけようという勢いです。ネイモアやアトランティスの加勢もあり、このまま戦い続ければ反対派の勝利は確実というところまで追い詰めるほど。キャップ自身、対峙していたアイアンマンをあと1歩で倒せるまで圧倒します。それを止めたのは、なんとニューヨークの市民たちでした。ここでキャップは気付かされます。この戦いが何のためにあったのか、そして自分は間違っていたと。市民のために戦うはずが、勝利のために戦っていた。守るべきものを守ろうとしていなかった。ニューヨークは戦場となっていました。爆煙と瓦礫が散乱する街頭を見てキャップは涙を流します。そしてSHIELDへ両腕を差し出します。こうしてキャプテンアメリカは降伏したのでした。超人登録法を巡るヒーロー同士の内戦は、賛成派の勝利で決着がつきます。
f:id:ELEKINGPIT:20240120232510j:image反対派に撤退を命じ連行されるスティーブ。こうして内戦は終結する。

 

〈あなたはどちら側に着く?〉

超人登録法の賛否で争ったシビルウォー。今作を読んで多くの方が、法の賛否とどちら側に着くかを考えたことでしょう。超人登録法には市民の望むメリットがあり、一方でヒーローたちにとっては大きなデメリットが存在します。今回はそんな長短それぞれを検討し、改めてどちら側に着くかを考える機会にしていただけると嬉しいです。

さて、まずは超人登録法の長所から考えていきましょう。超人登録法の利点といえば、各ヒーローがそれぞれ適切な訓練を受けられることでしょう。力の使い方を知らずに試行錯誤を繰り返しながら長年の経験で戦うヒーローもいる中、訓練を受けることで実戦までに能力を扱う技術を取得できるのです。自らの実力を知っていれば敵の実力を見極めることもまた可能でしょう。冒頭のニューウォリアーズのような失敗はグッと減るでしょうし、市井への被害も少なくなるかもしれません。更にヒーローには給料が支給されます。それまで私生活を犠牲にしてボランティアのように行われていたヒーロー活動ですが、それ故に職が安定せず困窮するヒーローもいるほど。ヒーロー活動を本業とすることでその心配もいりません。またトニー・スタークは超人登録法成立にあたり、50ステートイニシアチブという計画を盛り込んでいました。各州にヒーローチームを配置し、治安維持に務めるのです。都市部に超人が多い一方、田舎には少ないのが現状。ヒーローチームを全州に配置するだけで犯罪の予防や逃亡犯の確保などが容易となり、これまで以上にスーパーヴィランによる犯罪も抑制できるでしょう。超人登録法はヒーローの質を保証し、治安向上も期待できるのです。

では次に短所を考えていきましょう。やはり最大の論争を読んだのが、ヒーローの正体を政府に登録しなくてはならないことです。市民に対して公にする必要はありませんが、顔も名前も年齢も政府が把握することに変わりはありません。SHIELDも政府もヒーローの身分に関するデータは強固なセキュリティで守ると宣言しています。しかし例えばドクタードゥームやウルトロンのようなヴィランであればセキュリティを破ることは難しくないでしょう。実際本作の劇中では、ブラックパンサーがネガティブゾーンの監獄システムを書き換えるシーンが描かれており、その道の第一人者であれば突破は不可能では無いのです。もしヴィランに正体がバレると? 自分だけでなく親しい周囲の人々さえ危険が及んでしまうのは目に見えています。そうならないためにマスクを被ってきたのですから、身元を明かすことに慎重になるのは当然でしょう。また、政府に登録したヒーローはSHIELDの任務をこなし報酬を受け取るようになります。事実上SHIELDのエージェントも同然の扱いを受けてしまうのです。このデメリットは後にトニー・スタークがSHIELD長官となることで解消されますが、内戦中は解消されるかどうかなんて分からないでしょう。ヒーローとして誰にも縛られず正義のために戦う、なんて理想は叶えられないのです。

ざっくりとではありますが、超人登録法の長所と短所はこんなところでしょうか。これらを照らし合わせて、もう1度超人登録法の賛否について考えると、今作がまた違って見えるようになります。何故このキャラクターは賛成又は反対したのか? なんてことを考えながら読むのもまた良いでしょう。