アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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IRON MAN CIVIL WAR

超人登録法を巡る戦いに勝利し、SHIELDの長官となったトニー。時に手を汚してでも確実に勝利しようとする姿勢は、私達の思い浮かべるヒーロー像とは違うように見えた方もいるでしょう。しかしそもそも、何故トニーが超人登録法賛成派の筆頭に立ったのか、その真意が語られる作品は意外に多くありません。本作では、そんなトニーの真意が垣間見える3つの物語が収録されています。本編を読んだだけでは分からない、シビルウォー最後のピースが本作で描かれているのです。
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日本語版関連作

シビル・ウォー (MARVEL)

シビル・ウォー (MARVEL)

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〈あらすじ〉

内戦が始まった。既に後戻りできない状況まで追い込まれていたが、トニーは最後の望みをかけて旧アベンジャーズの秘密回線に通信を送る。キャプテン・アメリカとの話し合いで、この戦争を終わらせるために。

 

〈未来を見通す眼〉

アベンジャーズの拠点だった、アベンジャーズマンションでトニーは待っていました。約束の時間ちょうどにキャプテン・アメリカが現れます。トニーはこの時間に最後の望みをかけていました。この場に両勢力を率いるリーダー達がいることは誰も知りません。2人だけの時間を使って、本音で語り合うことで話し合いによる解決を目指したのです。この提案をキャップも受け入れ、最後の話し合いが始まりました。2人が語り合ったのは、今では過去の思い出となった数々の日々です。姿形を変えるヴィラン、カメレオンに騙され初対決した日のこと。ヤングアベンジャーズのこと。トニーが酒で失敗した日々も大きく触れられます。もちろん登録法の是非を交えて。お互いにとって、キャプテン・アメリカとアイアンマンは英雄でした。だからこそ分かりあえると信じていました。権謀術策を用いて内戦の勝利を目指すトニーは涙を流して訴えます。どうしたら良かったのか? キトニーは内部から変えていくべきだと言います。しかし涙の訴えでもキャップの信念は変わりません。やがて交渉は決裂、結局2人は殴り合いを始めてしまいます。話し合うのが遅すぎた、としか言いようがありません。
f:id:ELEKINGPIT:20240206192659j:image互いの和解案を蹴り飛ばし、殴り合うことしかできない2人。話し合うにはあまりに遅すぎた。

 

トニーは悩んでいました。着く側を間違えたのか?超人登録法賛成派の筆頭として市民への露出が大きく増えたトニーは、小金目当ての団体や権力欲に溺れた政治家ばかり。守るべきヒーローたちは反対派につき敵意を剥き出しにしている現状、トニーは本当に超人登録法が正しかったのか迷っていました。そんなトニーへある話が舞い込みます。国防長官のジャック・クーニンが、SHIELDの長官にならないかと提案してきたのです。トニーが超人登録法賛成派の筆頭に立ったことは大統領さえ歓迎するほどでした。その報酬がSHIELDの長官という地位なのです。しかしトニーはこれを即座に反対。権力や名誉のために戦っているのではないし、そもそも大幅な減給だとトニーは言いました。やはりトニーは悩んでしまいます。これが本当に正しい道だったのか? 打ちひしがれるトニーですが、ボディーガードのハッピーの言葉で少し活力を取り戻します。ハッピーの言う通り、トニーはヒーローでありながら優れた身体能力や戦闘技能を持たない常人でもあります。だからこそ、真にヒーローと市民両方に寄り添えるのはトニーしかいないと。襟を正して改めて内戦に取り組むトニー。しかし悲劇が起きたのはなんと同日でした。ハッピーがスパイマスターにより殺されてしまったのです。怒りと悲しみ。その複雑な感情を表す言葉を私は思いつきませんでした。トニーは古い回線を用いてキャップへ連絡します。ハッピーの身に起こった出来事はキャップ達の仕業なのか? 当然違うと答えるキャップ。しかしここで、反対派のヒーロー達がアイアンマンを襲撃してしまいます。罠だと思われたのでしょう、キャップは避難させられ、あっという間に戦闘が始まってしまいました。話し合うラストチャンスさえ潰えたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20240206234315j:image最後の話し合いに望む2人。しかしそのチャンスも消えてなくなってしまう。

 

時は内戦が終わった後、トニーは勝利者としてSHIELDの長官となりました。ヘリキャリアの一室、人払いをしたトニーはゆっくりと全てを語り始めます。すべての始まりは啓示だったと。それは、ドクター・ドゥームと共に円卓の騎士時代までタイムスリップした頃に遡ります。トニーは魔女モーガン・ル・フェイとの戦いを通して、ヒーロー社会に大いなる戦争が起きることを予感していました。啓示としか言いようがありません。悪と正義の戦争だと思っていた。しかし時代が進むに連れ、それが悪との戦いではないことを直感します。100年先の未来をも見通すトニーだからこそ分かったことでしょう。トニーは来たる大いなる戦争がヒーロー同士の内戦であることを予感していたのです。イルミナティというヒーローの相互監視機関を使い、戦争の前兆となるであろうサインを逃さないよう神経を使っていました。しかしそれは意外な形で現れます。ニック・フューリーの持ってきた、ある法律の草案です。超人登録法案。トニーは確信します。これこそが前兆に違いないと。誰が賛成し、誰が反対するか大方予想もできていました。キャップと戦わねばならないことも。内戦を起こさないため、トニーはあらゆる手段を使います。それでも戦争は起きてしまった。トニーは言います。権謀術策を用いて勝利にこだわったのは、キャップが相手だったからだと。キャップだからこそ信頼できた。信頼する相手だからこそ全力で賛成派筆頭に立ち続けることができた。そして戦争に勝利し、守るべきものを守ることができた。トニーは涙を流して語ります。この戦争で唯一良かったことといえば、最後まで酒を飲まなかったことしかない。横たわるキャプテン・アメリカの死体を見つめることもできずに、ポツリと呟きます。この勝利に、価値を感じることができないと。
f:id:ELEKINGPIT:20240207122553j:image血塗れの盾、冷たくなったスティーブ・ロジャース。初めてトニーはすべてを語った。

 

〈ハッピーの死〉

トニーの内戦の真実や真意は後に別記事で語ろうかと考えております。今回ここで語るのは、ハッピーの死です。最初期からいたキャラクターの死があまりにあっさりとしたもので驚かれた方も多いでしょうが、その死にはどのような意味があったのでしょうか? ハッピーの死後、内戦中この話題に触れられることはほとんどありませんでした。言うなればそれほど軽く扱われているようにも見えてしまいます。しかしトニー視点で進む本作だからこそ、ハッピーの死を通して内戦中のトニーが見えてくるのです。

ハッピーの死を描いた次の回では、透明化してトニーをトニーとの接触を図るインビジブルウーマン/スーザン・ストームの視点で物語が進められます。スーザンは冒頭、「5分でいいのに」とトニーの多忙さを表現しています。5分の時間さえ取れないほど、トニーのスケジュールは常にパンパンだったのです。トニーの心がどれほど余裕がなかったか、終わりの見えない多忙さというのは想像するだけでゾッとします。トニーの精神は文字通り忙殺されていたのです。ハッピーの死後軽くも触れられない内戦中の忙殺っぷりがあらわになったのでした。