アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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WAR CRIMES CIVIL WAR

ヒーロー同士の戦いを描いたシビルウォー。両勢力は戦いに勝利するため、戦場の舞台を何度も変え続けてきました。アメリカの影に潜む裏社会とて例外ではありません。今作はそんな裏社会と内戦を描いた作品と、Under worldと呼ばれるミニシリーズが収録されています。今回はシビルウォーに直接関係するCivil war:War crimesを紹介しますが、Under worldと併せて読むとより味わい深くなるため是非一緒に一読ください。
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日本語版関連作

シビル・ウォー (MARVEL)

シビル・ウォー (MARVEL)

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〈あらすじ〉

内戦勃発! あらゆる手段を用いて戦争に勝利しようとしていたアイアンマンは、獄中のキングピンさえ利用しようとしていた。一方キングピンもこれをチャンスと捉え、1つの戦争を終わらせようと暗躍する。

 

〈影の支配者〉

ヒーロー社会が分断する瞬間を、キングピンは獄中から静かに見守っていました。自分から直接手を下さず互いの力を利用することでのし上がってきたキングピンは、獄中でもその支配力は衰えていません。食堂にはキングピンだけの特別席が用意されており、食事の邪魔をしようものなら1分後から背後に気を付けねばなりません。監獄にさえ築かれるキングピン帝国ですが、同じくマフィアのハンマーヘッドはそれが気に入らない様子。もうすぐ出所だからとついに喧嘩を売ってしまいました。出所してはいくらキングピンでも手が出せないと踏んだのでしょう。しかしキングピンの不敵な笑みは消えません。そしてその日の夜、キングピンに会いたいと訪問客が現れます。トニー・スタークです。シビルウォーでは賛成派の代表格として戦い、政府とヒーロー間のバランサーにもなっているトニーが何故? キングピンには簡単な疑問でした。トニーはキングピンの影響力を用いて地下に潜ったキャプテン・アメリカの居場所を割り出そうと考えているのです。戦争の早期決着を模索しているトニーだからこそ、キングピンの手を借りるのも厭わないということでしょう。当然タダで情報提供をしろとは言いません。トニーはキングピン出所後、資金の一部を援助すると申し出ます。キングピンとしても願ったり叶ったりでした。こうして犯罪王とアイアンマンの裏取引が成立します。
f:id:ELEKINGPIT:20240129203244j:imageキングピンに面会するトニー。戦争を終わらせるためなら汚い手も厭わない。

 

キングピンの情報提供を元に、早速キャップ逮捕へと部隊を派遣するトニー。しかし翌日の新聞にはダガーら別のヒーローらが逮捕されたというニュースが流れます。キャップは捕まらなかったのです。この結果にトニーは苛立ちを隠せません。示された場所にキャップはいなかった。情報と違う。その場にいたヒーローは逮捕したものの、逃げ切った者もいる。情報提供の取引において最も重要なのは当然情報の精度です。キングピンからの情報を全面的に信用するわけではないにせよ、全く違う情報を渡されては取引をした意味から問わねばならないでしょう。トニーはキングピンへ最後の情報提供を要求します。もしここで情報の精度が疑わしい場合、取引を無かったことにすることだって可能なのです。それでもキングピンの不敵な笑みが消えることはありません。キングピンはトニーの望む通りに情報を提供しました。今度こそキャップの隠れ家かもしれない。トニーはSHIELDの特殊部隊を引き連れ、情報のあった建物へ向かいます。確かにそこには灯りがついていました。ひっそりとした建物なだけに、灯りがついているだけでも違和感さえ感じてしまいます。もしかしたら今度こそ本当に? トニーは機をうかがいます。そして次の瞬間、突入の合図を出しました。上空からアイアンマンとSHIELDの特殊部隊が一斉に襲い掛かります。天窓を割り、突入したその時。トニーは一瞬動きを止めていました。建物にいたのはキャップではなかったのです。いたのはハンマーヘッドとその部下のヴィランたちでした。当然キャプテン・アメリカとは何の関係もありません。驚いたのはハンマーヘッドも同じ。何故ここがバレたのか? 何故ここにアイアンマンとSHIELDの特殊部隊が? 全てはキングピンの手のひらの上でした。自身へ喧嘩を売ってきたハンマーヘッドへ、キングピンが「お礼」をしたのです。アイアンマンを利用して。
f:id:ELEKINGPIT:20240129211222j:imageアイアンマンと対峙するハンマーヘッド。全ては犯罪王の仕組んだ通りだった。

 

〈内戦の地下〉

キングピンに良いように使われてしまったトニー。その裏ではキャップも同様に利用されており、悪人にヒーローが利用されるという図はあまり気持ちのいいものではありません。これも内戦故の悲劇でしょうが、一方でそれだけで片付けていい話でもないでしょう。キングピンがトニーを利用したことによって、ヒーロー側の問題点が炙り出されたのですから。

そもそもトニーがキングピンの手を借りようとした理由は、内線の早期決着でしょう。賛成派としては戦争を長引かせる理由はありませんし、一刻も早く戦争を終わらせなければ治安悪化さえ懸念されます。そこで地下に潜ったキャプテン・アメリカの情報を裏社会に精通しているキングピンから得ようと考えたのでした。しかしキングピンが流した情報は偽情報ばかり。偽情報を元に動いたおかげで、キングピンに利用されて終わってしまいます。何故トニーはキングピンの情報を偽物と見抜けなかったのでしょうか? いくら裏社会に精通しているといっても、何故情報の精度を確かめもせず信用したのでしょうか? 見えてくるのはトニーの焦りです。内戦の長期化は賛成派として避けたいシチュエーションであるというのは先程の通りですが、トニーは早期決着に囚われすぎている感があります。戦争の決着を焦りすぎているのです。もう少し冷静に情報を受け止めていたら結末は変わったことでしょう。