アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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MS.MARVEL vol2 GENERATION WHY

ニュージャージーの新ヒーローとしての決意を固めたカマラ。その活躍はこちらの世界でも大きく話題を呼びました。待望の第2巻となる本作は、前回以上にメッセージ性の強いものとなっております。このメッセージ性もまた、本シリーズを人気作に押し上げた理由の1つかもしれません。
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日本語版関連作

 

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〈あらすじ〉

親友の弟を助けて以来、町に巣食う悪党インベンターと敵対することになったカマラ。若者の悩みに漬け込んだ悪辣な作戦に、町の守護者となったニューヒーローの鉄拳が振り下ろされる。

 

〈新時代〉

インベンターと敵対するようになって以来、カマラは町のパトロールを行うようになりました。インベンターは執拗にカマラを追ってくるのです。そんなある日、カマラは下水管から唸り声を耳にします。インベンターがなにか企んでいるのでは? コスチュームを着て早速下水管をパトロール。唸り声の主はすぐに見つかりました。アリゲーターの群れです。それも全員がなにか機械を取り付けられています。驚くカマラの眼の前に現れたのは、文字通り鳥頭の人物が写ったホログラムです。鳥頭の人物は自らをトーマス・エジソンのクローンだと豪語します。遺伝子配列のミスが原因で顔がセキセイインコとなってしまいましたが、卓越した頭脳は本人譲り。鳥頭のエジソンニュージャージーを実験場にしているのだと言います。そのためにはミズ・マーベル、カマラが邪魔だと。これは宣戦布告です。インベンターの宣戦布告なのです。映像はそのタイミングで途絶えます。代わりに現れたのはウルヴァリンでした。ウルヴァリンは行方不明になったジーン・グレイ学園の生徒を探しているうちにここへ辿り着いたといいます。若者を使ってインベンターが何かを企んでいるのは明らかです。2人は協力して下水管につながるインベンターの実験場を探索します。巨大なアリゲーター、メガゲーターをも倒し2人が辿り着いたのは、驚くべき光景でした。ジェルに包まれ横たわった若者がいたのです。この若者は、ウルヴァリンが捜していたカマラはこれが実験場の動力、バッテリーになっていると推測します。若者がバッテリー扱いされている。それも故郷ニュージャージーで。カマラは改めてこの事件を自身の手で解決する覚悟を決めました。
f:id:ELEKINGPIT:20240220151838j:imageバッテリーとなった若者。人間以下の扱いを許すわけにはいかない。

 

引き続きニュージャージーで調査を続けるカマラに、心強い仲間が現れます。犬です。それも町の人々が逃げ惑うような大きな。首から下げられた文字からわかることは、犬の名前がロックジョーであること。そしてハグが大好きなこと。カマラはロックジョーをハグで迎え、家で飼うことに。ウルヴァリンの追っていた若者の足取りからインベンターの居場所を突き止めようとするカマラですが、ここでロックジョーがその能力を披露します。なんと家の外で飼っていたロックジョーが、カメラの部屋の中へ一瞬で移動したではありませんか。ロックジョーはテレポートできる大型犬なのです。カマラはこの能力を使ってインベンターを追うことにします。しかしそもそも誰がロックジョーをカマラの下へ送り込んだのでしょうか? ウルヴァリンは、カマラと別れたあとある人物とコンタクトを取っていました。メデューサです。インヒューマンの王であるメデューサは、能力が覚醒しインヒューマンと判明した人物の把握に努めていました。覚醒したきっかけは、ある日不思議な霧に包まれたこと。カマラはインヒューマンなのでした。ウルヴァリンがそれに気づき、メデューサと連絡を取っていたのです。ロックジョーの能力でインヒューマンの拠点アティランへテレポートしたカマラは、この事実をメデューサから伝えられるのでした。望めばアティランで保護、能力の訓練を受けることができる。メデューサの提案を、カマラは拒否します。自分がインヒューマンであろうとミュータントであろうと関係ないのです。やることは変わらず1つ。守ると決めたニュージャージーを守り続けること。その決意に、メデューサはロックジョーを通して見守ることにしました。ニュージャージーへと戻ったカマラは、インベンターと最初に対決した建物へ行き着きます。予想通りここには大勢の若者が囚われていました。解放し、逃げるよう忠告するカマラ。しかし若者たちは首を振って迷惑だと言うではありませんか。若者たちは望んで囚われたのです。
f:id:ELEKINGPIT:20240223155603j:imageカマラの伸ばした手を拒絶する若者たち。ここへ来たのは自らがそう望んだと言う。

 

環境破壊に人口増加、今や若者たちは地球の抱える大きな問題を生まれながらに直面しなくてはなりません。自分は世界にとっていらない存在かもしれない。多感な時期を送る若者がそんな極端な考えに行き着くのも無理はありません。インベンターはそんな若者へ目をつけたのでした。成長期にのみ発されるエネルギーを用いれば、環境破壊を気にせずに大画面でテレビを見続けることができるでしょう。環境破壊とエネルギー問題をクリーンに解決する手段です。少なくともインベンターはそう考えたようでした。言葉巧みに若者たちを惑わし、電池として使うことでガラクタを改造したメカを使っていたのです。カマラが若者らを解放したことに気づいたインベンターは、ロックジョーを拉致。強硬手段に訴えます。この様子を見た若者は、ようやくインベンターが悪であることを悟りました。カマラへインベンターの秘密基地の場所を教え、ともに戦う覚悟を決めたのです。従えたはずの若輩者の反乱を見てもインベンターは余裕たっぷりでした。なぜなら拉致した若者はもっと大勢いるのですから。その中にはカマラの親友ナキアの姿も。ガラクタを改造して作り上げた巨大メカとロックジョーを盾に、インベンターは鋭い牙を向けます。一刻も早く解決せねば、若者のエネルギーが悪に利用されるだけです。カマラは相棒ブルーノを通して警察へ連絡、自身は巨大メカの内部へ侵入し破壊しようと試みます。
f:id:ELEKINGPIT:20240223160958j:image大勢の若者を搾取し高笑いするインベンター。これ以上事態を悪化させないため、カマラは若者らと協力して戦う。

 

〈世代と未来〉

本作は若者のアイデンティティクライシスがテーマにありました。自己の存在意義を見いだせず、心理的な混乱状態にあることです。劇中ではインベンターがこれを利用して若者を惑わしていました。カマラは自身の言葉で説得をしていましたが、私も自身の言葉でインベンターへ反論をしてみましょう。

新しい時代を作るのは老人ではない、とは機動戦士Zガンダムに登場するクワトロ・バジーナのセリフです。ガンダムは環境破壊と人口増加が根底にあるります。そんな作品で登場したのが上記のセリフです。本作でインベンターが行ったことは、一言でまとめるならば搾取です。これから成長を始める若者のエネルギーを電力などに変換しているのですから、これは未来への搾取と捉えることができます。現実への比喩と言い換えても良いでしょう。例えば若者を理不尽に安い賃金で働かせて私腹を肥やす老人なんて構図はわかりやすく想像できますし、世の中に溢れている事柄のように思えます。しかし新しい時代を作るのは老人ではないのです。若者が私服を肥やすべきだというのではありません。若者のキャリアを潰して自分だけが私欲を満たしても、それは未来に繋がらないのです。では若者を甘やかせばよいのか? それは違います。何度もいうように、新しい時代を作るのは老人ではないのです。若者が作らねばならないのです。環境問題やエネルギー問題など、若者が生まれながらに直面しなくてはならない課題が多く山積しているのが現状です。これを解決できるのは同様に若者やもっと下の世代です。未来を諦めては諦めた通りの未来しかないでしょう。若者が電池として使われたり、安い労働力として買い叩かれたり、様々な「ディストピア」が簡単に描かれます。しかし諦めなければ如何様にもできることもまた事実。カマラとインベンターの戦いは苦難の連続でしたが、最後にカマラ達が勝利したことが何よりもそれを証明しているでしょう。

最後に、少し説教臭くはありますが本作の力強いメッセージを紐解いてみましょう。本作は、カマラが良い教師を見つけるよう言いつけられるシーンからスタートします。良い教師とは、本作ではウルヴァリンメデューサなどがそれに該当します。カマラを教え導き、見守るのです。新しい時代を作るのは老人ではありませんが、老人を蔑ろにすることは同様に未来を捨てることとなります。カマラはウルヴァリンに導かれたからこそ戦う覚悟を強く決めました。見守られたからこそ戦い続けられました。上の世代がいたからこそカマラは自分の力で戦い抜くことができたのです。若者は上の世代の言葉に耳を傾け、そして最後は自分で判断せねばなりません。言われた通りになるとインベンターに導かれた若者のようになってしまうかもしれないのですから。一方上の世代は、若者にとって良い教師でなくてはなりません。ウルヴァリンの本職は教師ではありませんが、カマラの支えとなる言葉を多く送りました。その言葉はウルヴァリンの経験からもたらされたものです。メデューサはカマラを放置することなく、ロックジョーを通して見守ることを選択します。自由にさせる代わりに責任をともに背負い込むことは、自ら学びを得る機会を増やすのです。少し説教臭い話になってしまいましたが、本作にはそれほど多くのメッセージがあらゆる世代へ向けられているのです。