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MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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【第5回】トニー・スタークはいつからヒーローとなったのか?

ヒーローには様々なオリジンが存在します。オリジンとは、明確にヒーローとしてキャラクターが目覚めた瞬間であり、物語のスタート地点でもあります。そしてアイアンマンのオリジンは、一般的にはアイアンマンが生まれたTales of suspense 第39話とされています。しかしそこには悲劇のみが描かれており、スパイダーマンキャプテン・アメリカのように「明確にヒーローとなった瞬間」が描かれていません。ではトニー・スタークがヒーローとなった瞬間はいつなのでしょうか? 今回もオタク語りをするための不定期更新のコラムとなっております。
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日本語版関連作

 

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前回のコラムはこちらelekingpit.hatenablog.com

 

〈トニー・スタークのオリジン〉

いつからトニーはヒーローとなったのでしょうか? それを考えるためには、まずヒーローの定義を考えねばなりません。当然ヒーローやスーパーヒーローの定義は個人の考え方によって様々で、明確に基準があるわけではありません。今回は私の考えるヒーローの定義を前提に話を進めさせていただくことをご容赦ください。ヒーローとは誰を指すのか? ざっくりとしていますが、私は「誰かを助けている人」がヒーローだと考えています。転んだ人へ声をかけたり、道に迷った人を案内したり、善意溢れる行動で人を助けたとき、その人は誰かにとってのヒーローなのです。これを職業に当てはめると、警察官や消防士になるでしょう。ロードトゥシビルウォーでは、顔と名前を明かしている警察官や消防士を例に上げ、ヒーローもそうなるだろうというセリフがありました。マーベルユニバースではこれらの人々をヒーローとして扱う傾向にあるのです。ところがトニーはそういった職業に従事していたわけではありませんでした。新兵器開発のためにアメリカ軍に手を貸す発明家であり、世界的企業スターク・インダストリーズの社長。誰もが憧れる絵に描いたような大富豪です。そんな大富豪のトニーが戦争中のベトナムを訪れる場面から物語は始まります。既に人助けを行っていたシーンは描かれておらず、物語開始時点ではヒーローでなかったことは明らかでしょう。ターニングポイントは、やはりTales of suspense第39話でおきた事件なのです。
f:id:ELEKINGPIT:20240308161049j:imageアメリカ中から羨望の眼差しを集めるトニー。ヒーローに目覚める前から憧れの的だった。

 

コミックでは後付け設定を除くと明確な線引がなされるいるわけではありません。アイアンマンのオリジンを描いたTalse of suspense第39話ではベトナム戦争にてトニーとインセンを囚えたゲリラ組織を壊滅させたところまでが描かれます。インセンはゲリラに殺され、アイアンマンとなったトニーが弔い合戦とばかりにゲリラの基地を焼き払うのです。そして続く第40話ではトニーは既にアメリカへ帰国しており、アイアンマンとしてヒーロー活動を行おうとしていました。大衆の前でヒーロー活動をするのは第40話が初めての様でしたが、そこに葛藤や疑問が挟まれる描写はありませんでした。後付け設定ではこれらが説明されますが、当時アイアンマンを創り出したスタン・リー氏とドン・ヘック氏の間にはそのような設定は存在しません。トニーがヒーロー活動を行うのは当然という認識なのです。あの有名なオリジンを通してトニーはヒーローになったというのがスタン・リー氏とドン・ヘック氏の認識なのです。トニーがヒーローになったのは、Talse of suspense第39話と第40話の間と考えるべきでしょう。第39話のラストでは、インセンを弔ったとにーは2度と外せないと思われた鎧をまとい、自らの今後の人生を嘆いて終わるのでした。アイアンマンが生まれた当時はシルバーエイジと呼ばれ、多くのスーパーヒーローが誕生していました。そんなスーパーヒーローの誕生譚には、誰かの死を背負うシーンが描かれていることがありました。スパイダーマンはベンおじさんの死、当時復活したキャプテン・アメリカはバッキーの死を抱えスーパーヒーローとして活動します。アイアンマンも同様に、インセンの死が引き金になったと考えることができるでしょう。
f:id:ELEKINGPIT:20240308191602j:imageインセンの死を悼み、自らの運命を嘆くアイアンマン。運命はアイアンマンをヒーローへ導いた。

 

大いなる力には大いなる責任が伴う。最早説明すら必要ないほど有名なセリフですが、これはスパイダーマンだけでなくマーベルのヒーローにおける命題ともなっているでしょう。トニーはインセンの死と引き換えに大いなる力を得るに至りました。ならばその責任はどのように取るべきか? 当時のトニーは地雷の破片が心臓の近くに刺さっており、胸についたチェストプレートにある電磁石で引き寄せ続けなくては1週間と持たない命でした。トニーは嫌でもアイアンマンとその力に向き合い続けなくてはならなかったのです。アメリカへ帰国するまで、そして帰国したあとも、それまでの人生で経験したことのなかったであろう凄絶な体験が文字通り胸に刻まれてしまったトニー。寝ても覚めてもあの光景が頭から離れることはなかったでしょう。その力の使い方を考えた結果が人助けなのだと考えられます。後の大型クロスオーバーイベントであるAXISでは、トニーはヒーローを続けるための覚悟を語っていました。「やるしかないんだ、その力を持ったものが」という言葉は正に力に向き合い続けたトニーだからこそのセリフではないでしょうか。インセンに助けてもらった命と自らが発明した力について考えなかったはずがありません。その結果が人助け、ヒーローという選択肢なのですから、トニー・スタークという人物の人柄がどれだけ優しい性格なのかを考えてしまいますね。
f:id:ELEKINGPIT:20240308193800j:image人を助けるため、初めてその姿を現したアイアンマン。ここからヒーローとしての物語が始まる。

〈まとめ〉

人助けをする人々のことをヒーローと定義するならば、トニーがヒーローとなったのは帰国後だと考えられます。実際に行動を起こしたのはTales of suspense第40話なのですから、ヒーローとなった瞬間はそこだと言ってよいでしょう。そしてその覚悟を決めたのは、インセンが亡くなって以来力の使い方と向き合い続けた結果です。自らの発明についてつねに向き合い続けたトニーだからこそ、この結論に至ったのかもしれません。コミック版では少しわかりにくい流れとなってしまいましたが、MCU版ではその流れがクリアになっています。インセンがトニーへ送った遺言に「その命、無駄に使うな」とあるのです。この言葉をどのように解釈したかがMCU版アイアンマンの物語であると言えるでしょう。常に進化し続けるアイアンマン。その原点は今でも変わらずにトニーの心のなかで生き続けているように思えます。力に向き合うことができたからこそヒーローになり、あの壮絶な経験があったからこそトニーは進化し続けることができるのです。全てのヒーローにはオリジンがあります。キャプテン・アメリカスパイダーマンも、それぞれにオリジンが存在します。原点があるからこそ過酷なヒーローであり続けるのです。そんな原点たるオリジンの意味を考えることで、今のヒーローの違った一面を発見できるかも知れません。