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MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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【第7回】MCU版とコミック版のアイアンマンの違い

今やマーベルヒーローの代表格にまで知名度を上げたアイアンマン。知らない人はほとんど存在しないまでになったのは、やはりMCUの大ヒットが大きく関係しているでしょう。そのためコミック版とMCU版のアイアンマンを同一視する向きがありますが、両者は似て非なるキャラクターとして創られています。今回はそんな両者の違いをオタク語りする、不定期更新のコラムになります。
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前回のコラムはこちらelekingpit.hatenablog.com

 

〈2つの違い〉

MCU版とコミック版には、細かな違いを含めると様々なものがあります。パワードスーツの性能の違いであったり、アークリアクターであったり……しかし今回はそんな設定の違いは除外しましょう。それでもなお、大きく違うものが2つあります。1つはオリジンです。もちろん、トニーがゲリラに捕まってから云々という話はコミック版とMCU版ではほとんど共通しています。しかしヒーローになった理由が違うのです。まずはそれを見ていきましょう。ゲリラに捕まったトニーは、インセンと協力してパワードスーツを開発します。MCU版ではここで小型のアークリアクターも作り上げていました。そして脱出の日、インセンはパワードスーツが起動するまでの時間稼ぎをするため、命を落としてしまいました。ここでMCU版とコミック版に違いが現れています。コミック版では命を落としたシーンで終わったインセンですが、MCU版ではトニーへ「その命、無駄に使うな」という遺言を託して亡くなっています。トニーはこの遺言をどのように解釈したのか? これがMCU版アイアンマンの始まりなのです。遺言の解釈は最終的にエンドゲームへと繋がり、インセンと同じように他者の命を救うために命を落としてしまいました。MCU版アイアンマンの物語は、インセンの遺言をどのように解釈したかの物語と言えるのです。ではコミック版はどうでしょうか? インセンから遺言を託されなかったトニーは、アイアンマンとトニー・スタークというアイデンティティの間で揺れることとなります。それが安定するまでかなりの時間を要してしまいました。インセンの遺言がなかったことで、ヒーローでいるためのメンタルが整っていなかったのです。
f:id:ELEKINGPIT:20240314233844j:imageゲリラを焼き払いインセンを弔うトニー。ここからすべてが始まった。

 

このメンタルの問題は、やがてもう1つの大きな違いを生むこととなります。飲酒です。MCU版トニーは飲酒します。アイアンマン2にて酒で問題を起こした経験がありながら、アベンジャーズでは飲酒している描写が目立ちます。ところがコミック版トニーは飲酒をしません。より正確に言うと、アルコール依存症となったため禁酒をしています。これが現代まで続くテーゼとなっているのです。MCU版では飲酒し、コミック版では禁酒をしているトニー。コミック版では、禁酒はトニーの第2のオリジンとさえ呼ばれるほど重要な設定ですが、何故MCU版はそれがないのでしょうか? MCU版の違いもう1つの特徴といえば、ペッパーとの関係性でしょう。MCU版では作品を重ねるごとに親しくなっていき、子どもまで授かっていました。一方コミック版では、ペッパーと親しくなったことはあるものの、結婚までには至っていません。特殊な状況やシリーズを除き、コミック版トニーは基本的に独身キャラとして設定されているのです。悩みを打ち明けられる相手の有無は、精神的に大きな違いが見られるでしょう。トニーが飲酒をする理由は、簡単にまとめると一時的に得られる高揚感や無敵感を目当てにしていると思われます。要は「誰にも頼れない状況で、酔うと一時的に得られる無敵感を目当てに、大量のお酒を飲んでしまう」のです。一方MCU版トニーは、ペッパーという人生で最も信頼できるパートナーがいます。ペッパーに頼るという選択肢があるからこそ、お酒を飲まないのだと思われます。逆に言えば、MCU版のトニーも誰にも頼れない状況に陥ると、同じ理由でお酒を飲んでしまうリスクはあります。アベンジャーズではそれが描かれていました。ロキとスタークタワーで対峙するシーン、トニーは話しながらお酒を飲んでいました。新型スーツの導入もありますが、敵の大ボスと1人で立ち向かうのですから、一時的な無敵感がなくてはやってられないというものです。
f:id:ELEKINGPIT:20240316071430j:image酒を飲み潰れるアイアンマン。禁酒問題はトニーを長きにわたって苦しめることとなる。

 

〈まとめ〉

MCU版とコミック版アイアンマンの違いは、インセンの遺言の有無と飲酒問題にあると考えられます。インセンの「その命、無駄に使うな」という遺言を託されたトニーは、その後ヒーローとして命をかけて人を助けるようになります。その結果が映画アベンジャーズにて核ミサイルを宇宙へ運び死にかけ、そのトラウマを乗り越えた後にエンドゲームで真に命をかけるのです。一方コミック版はそのような遺言が託されることはなく、ゲリラの基地を焼き払った理由も弔い合戦の意味合いが大きくなっています。そのためヒーローとしてのメンタルが形成されるまでに時間がかかってしまいました。そこで現れたのが、飲酒という問題です。誰にも頼れない状況で、酔うと一時的に得られる無敵感を目当てに、大量のお酒を飲んでしまうようになってしまいました。この問題は、MCU版アイアンマンでも直面することとなりますが、パートナーであるペッパーを精神的支柱にすることでアルコール依存症にならずにすみました。コミック版ではパートナーに裏切られたことでアルコール依存症を深刻化させており、ここにもMCU版との違いが現れていると言っていいでしょう。超人と常人の間で揺れるアイアンマンだからこそ、その不安を抱えきれなかっのでしょう。アイアンマンならではの悩みであると言えます。ヒーローとしてのメンタル形成が間に合わなかったから、あるいは不安定だったのです。インセンの遺言とトニーの精神的支柱の有無がコミック版とMCU版の違いと言えるでしょう。