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MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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【第9回】受け継がれるアイアンマンの意志

人気がある限り、半永久的に続くマーベルヒーロー。アイアンマンのようにMARVELの顔とも言える存在の1人になると、私達は真の最終回を見ることはできないでしょう。しかし最終回が訪れたら? という「もしも」を想定したIRON MAN THE ENDという物語があります。今回はそんなIRON MAN THE ENDから、「アイアンマン」とは何なのかをオタク語りする不定期更新コラムです。
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※なお今回は紙の書籍から画像を引用させていただきます。見えにくい等ございましたらコメントにて教えて頂けると幸いです。

 

関連記事elekingpit.hatenablog.com

 

前回のコラムはこちらelekingpit.hatenablog.com

 

〈ヒーローの引退〉

トニー・スタークは、超天才の科学者でありスターク社のCEO兼技術顧問として劇中で描かれています。その正体はMARVELヒーローを代表するアイアンマンであり、ゴールデンアベンジャーとして数々の功績を残してきました。全知全能とまでは言いませんが、まるで私達の理想を詰め込んだような人物であることには間違いないでしょう。しかしそんなトニーも老いには勝てませんでした。老いたトニーの姿を描いたのが、IRON MAN THE ENDの物語なのです。当時のトニーが用いていたのは、液体金属を流用したスマートメタルアーマーと呼ばれるパワードスーツを着用していました。これは通常モードに加え、潜水モード、ステルスモード、ハルクバスターモード等に変形できるパワードスーツです。過去のスーツとは一線を画す性能をしていますが、それでも当時のパワードスーツの水準を満たしていなかったという描写もありました。またトニー自身が高性能パワードスーツを使いこなせない描写があり、その性能を充分に引き出せていなかったと考えられます。加えてトニーは長年の戦歴から体がぼろぼろになっていました。杖がなければ歩けない体となり、薬が手放せない状態だったのです。それでも戦士として戦おうとしていたトニーでしたが、物語の中盤でアイアンマンと技術顧問の座を引退する決意をするのでした。トニーは最早自身がアイアンマンとしての要件を満たしていないと判断したのです。
f:id:ELEKINGPIT:20240422162555j:image引退を決めた当時着用していたパワードスーツ、スマートメタルアーマー。様々な形態に変形できるが、当時のパワードスーツの水準を満たしていなかった。

 

トニーがアイアンマンと技術顧問の座を譲ったのは、ニック・トラヴィスという大学から卒業したばかりの若者でした。なぜトニーはこの若者へ自身の人生を費やした発明と地位を譲ったのでしょうか? ここに私はアイアンマンの本質があるように思えてなりません。トニーがアイアンマンを引退した理由は、体の限界だけではありませんでした。スマートメタルアーマーではパワードスーツの性能水準を満たせず、敵に負けてしまうためです。科学技術の性能で勝てなくとも、着用者の操縦次第で勝負はひっくり返るでしょう。しかしトニーの体は既にボロボロ。ロキソン社が開発したウルトラ・ダイナモに敗北し、トニーはそれを痛感していました。このシーンを逆説的に捉えると、トニーがアイアンマンに求めていたものが分かるでしょう。トニーは敵に負けないだけの性能と体が必要だと考えていたのです。アイアンマンの敵とはどのようなものでしょうか? IRON MAN THE ENDに登場したロキソン社とウルトラ・ダイナモは、科学技術を私利私欲のために使用し、その発展を妨げる者として登場しました。科学技術の発展を妨げる者に負けないためには、「未来を目指すテストパイロット」になるしかありません。トニーはアイアンマンという役割に、「未来を目指すテストパイロット」があると考えていました。簡単に言えば、未来の技術を発明し、そのメリットだけを人類に享受する約目です。未来主義者、フューチャリストとしてこの役割をパワードスーツの技術に投入することで全うし続けたトニー。しかし技術革新の先頭に立てないのであれば、「未来を目指すテストパイロット」という役割は果たせないでしょう。トニーが次なるアイアンマンとしてニック・トラヴィスを指名したのは、何よりも技術力があるからこそでした。アイアンマンは常に人類の未体験ゾーンにある技術を用いて、技術革命の先頭に立ち続けなくてはなりません。ニック・トラヴィスはこの重要要件を満たしているとトニーが判断したのでしょう。
f:id:ELEKINGPIT:20240422164633j:imageニックの開発した新型パワードスーツ。最先端の技術を導入したパワードスーツは、未来を目指すテストパイロットに相応しいだろう。

 

〈まとめ〉

老体になったトニーが最後に着用したパワードスーツ、スマートメタルアーマーでは当時の水準を満たすことができませんでした。その上体に無理を強い続けていたのが祟って、薬と杖が手放せない体となってしまいます。そこでトニーは技術顧問という地位とアイアンマンをニック・トラヴィスなる青年に譲ります。トニーはアイアンマンに、敵に負けないだけの技術と体を求めていたのです。若いニックならば体力面での問題はないでしょう。肝心なのは、敵に負けない技術です。アイアンマンの敵とは科学技術の発展を妨げる者と言っていいでしょう。劇中に登場したウルトラ・ダイナモはそのような役割でアイアンマンと戦いました。そんな敵に負けないためには、「未来を目指すテストパイロット」になるしかありません。「未来を目指すテストパイロット」とは、技術革新の最先端に立ち続け、科学技術のメリットだけを人類に享受する存在のことです。トニーは自らが開発した最先端技術をパワードスーツに施すことでその役割を全うしていました。この超重要条件をニック・トラヴィスならば達成していると考えたのです。そしてニックは期待通りウルトラ・ダイナモを倒すことに成功しました。ニックはこの「未来を目指すテストパイロット」という概念をいつかトニーと同じように理解する日が来るでしょう。やがてニックもまた年を老いて、次世代へアイアンマンを託す未来が見えます。劇中、宇宙エレベーターを完成させたトニーは最後にこのようなセリフを言います。「トニー・スタークは明日を楽しみに待つよ」と。未来を作る立場から降りたトニーのセリフとして胸がこみ上げてくる感慨深い言葉です。その明日とは、科学技術の発展だけでなく、受け継がれるアイアンマンの意志も意味しているのでしょう。