アメコミを読みたいらいとか

MARVELやSTAR WARSなどのアメコミを、ネタバレ有りで感想を書くブログです。更新頻度は気分次第。他にも読みたいものを気まぐれに

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IRON MAN #163〜#165

ヒーロー物なら誰もが期待する要素の1つに、「ヒーローの危機」が挙げられるでしょう。危機に真正面から立ち向かい乗り越える姿に惹き付けられる方も多いはず。しかし時として乗り越えるにはあまりに高すぎる壁が用意されることもあります。さて、今回紹介するIRON MAN #163〜#165はそんな巨大な壁にトニーが立ち向かう物語の序章です。アメリカンヒーローコミックはヒーローに厳しすぎると言われますが、トニーもついにその壁に立ち向かう時が来たのです。
f:id:ELEKINGPIT:20220218174233j:imageIRON MAN #164

 

〈あらすじ〉

ヴィランとの激闘を終えたアイアンマンは、戦闘に巻き込まれ怪我を負ったインドリーズ・ムージを救出した。この事件がきっかけで急速に接近するトニーとインドリーズだが、人生最大の危機が迫っていることを誰も予想できなかった……!

 

〈三騎士vsアイアンマン!〉

ヴィランとの激闘で大きな損害を受けたスターク社。トニーは瓦礫の撤去や取り残された人々の避難誘導に追われていました。そんな時に発見したのがインドリーズ・ムージです。瓦礫の下敷きになった車内で気を失っていたインドリーズを急ぎ病院まで連れて行ったトニー。治療のかいあってか命に別状はなかったようですが、2人はこれがきっかけで惹かれあっていったようです。新たな恋の実りに上機嫌なトニーは張り切って仕事に打ち込もうとします。
f:id:ELEKINGPIT:20220218221408j:imageインドリーズの病室へ大量の花束を送ったトニー。2人の仲は急速に深まっていく。

 

一方その頃、スターク社の動向を探る謎の集団が。トニーの命を狙う集団は、まず最大の障害であろうアイアンマンの排除を目論みます。恐らくリーダーであろう人物から司令を受けた「ナイト」は早速行動を開始しました。プライベートジェットでトニーが移動したことを知ったナイトは、翼へ爆弾を設置したのです。これでトニーの死を確信したナイトでしたが、なんとアイアンマンの素早い対処により爆弾が爆発した後に飛行を立て直すという神業で無事に目的地まで到着していた、と報せを受けます。更にアイアンマンは使用した爆弾を製造した人物を突き止めたようです。ナイトがアイアンマンの元へ到着した頃には、爆弾を製造した人物へ尋問が始まっていました。ナイトはすぐさまアイアンマンへ攻撃を開始、空中で凄まじい戦闘が行われることになります。
f:id:ELEKINGPIT:20220218232708j:imageアイアンマンの反射速度をも上回るナイトの超高速攻撃。アーマーすら傷つける強靭な槍と合わせて敵うものなしと自負していたが……

 

ナイトとの戦いの後、トニーはナイトの身元を調べさせていました。恐らくナイトの馬型の乗り物はスターク社に匹敵する反重力装置が使われており、執拗に狙う様は何かワケあり。何者かがバックにいる可能性が高いのです。調査の結果、北スコットランドのグレン・トラヴァイルという地名が捜査線上に浮上しました。しかし同時に刑務所に収容されていたナイトが何者かによって殺されたという報せも届きます。こうなればグレン・トラヴァイルへ向かわない理由はありません。なんとここでインドリーズも無理矢理同行、プライベートジェットのパイロットであるローディも含めて3人でグレン・トラヴァイルへ向かいます。3人を出迎えたのはレアード・ジェイミーという人物でした。レアードはこの地域に建つ古城の家主としてフレンドリーに接しますが、トニーは一瞬足りとも気を緩めません。1人になったタイミングを見計らってパワードスーツへ着替え、周囲のパトロールを開始しました。平和な風景が広がるこの地域。トニーも一瞬戦いを忘れそうなほど魅了されていましたが、その刹那で強い衝撃を感じます。新たな敵「ビショップ」の襲来です。
f:id:ELEKINGPIT:20220218234608j:imageアーマーの主要兵装を軒並み機能不全にさせたビショップ。トニーに死を覚悟させるほど追い詰める。

 

更に古城ではローディがレアードの罠にハマり、拘束された上で毒蜘蛛を放たれてしまいます。レアード曰くローディの寿命はもって1時間。それまでにアイアンマンはローディを発見してここから脱出せねばなりません。しかしそれに立ちはだかるように城将「ルーク」の卑劣なトラップが襲い掛かります。ルークは城将の他にペテン師の意味を持つ言葉。まるでそれを体現したかのように、多くのトラップが仕込まれていました。中でもルークの仕掛けた溶解ガスのせいでアーマーをボロボロにしながら、執念でローディを発見しトニー。急ぎ近くの病院へローディを預けた後、怒りを爆発させながらレアードを追い詰めます。どうやらルークは逃亡したようです。レアードを尋問しようとしていたところでインドリーズも現れ、全員の無事にトニーはホッと胸をなで下ろすのでした。その様子を見ながらほくそ笑む人物がいることも知らずに……
f:id:ELEKINGPIT:20220219000637j:imageチェス盤の前でレアード敗北の報せを受ける謎の人物。「キング」と「クイーン」はまだ現れていないが……?

 

〈科学技術とアイアンマン〉

今作に登場する敵は、全て高度な科学技術を用いていることが特徴でした。特にナイトは甲冑を身に纏うなどアイアンマンとも共通点の多いヴィラン。まるでアイアンマンへの皮肉のようです。しかしトニー自身はアイアンマンとして活動することを悩んでいる様子。何故黄金のアベンジャーとして尊敬を集めるトニーが、ヘルメットの前で項垂れているのでしょうか? 今作だけで考えるならば、ヒーロー活動によってプライベート生活がほとんど送れないということでしょう。しかし「時々本当の自分が自分の作った鋼鉄の肌か、それとももろい肉体か分からなくなるよ……」と嘆くセリフにはそれ以上の意味が含まれているかもしれません。

科学技術の発展で生活様式が一変した20世紀。1901年と2000年では全く違う時代という扱いをされることが多いほどです。様々な生活が変わり莫大なメリットをもたらした一方で、デメリットもありました。中でも、科学技術を自身の力と見誤ってしまう、科学技術によって得た力を拡大した自身と捉えてしまうことがあります。例えば現代では煽り運転がこれに当たるでしょう。さて、それはアイアンマンが常に抱える問題でもあります。特にパワードスーツはトニーが作ったものであり、この危険性はより大きいはず。

上記のセリフは、それが大きく現れたセリフでもあります。それと同時にトニー・スタークというアイデンティティがぐらついていることも伺えます。トニー・スタークとアイアンマン、全く違う2人を演じなければならないトニーには自分を見失うという危機が迫っているのです。ではそんなポッカリ空いた穴を埋めるには……? 自分という存在を確かめさせてくれる存在が必要でしょう。それが何なのか、トニーが気付くことを祈るばかりです。